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10章

539.おもてなし

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「それよりも彼らはもう帰りたいそうですよ」

アルフノーヴァが他のエルフ達に声をかけると

「えっ!もうかい!?私もあの子と話してみたかったが…」

アンドロメダは残念そうに顔を曇らせる。

「そうですよ!エルフの国に来て父と話さないで帰るなど…回復するまでもう少しいてもらえばいいのでは?」

するとそれがいいとエルフ達が騒ぎ出す。

「大丈夫ですか?何か企んだりはしてませんよね?」

ジロっと兄達を見つめる…

「大丈夫、大丈夫。せっかくだから我らの料理を振る舞おう」

アルフノーヴァは若干納得行かない様子だったがセバス達に聞いてみますと離れていった。

アンドロメダもアルフノーヴァのあとを追うとエルフの王子達は…

「目一杯彼らをもてなそう!ここにずっと居たくなるように…あの人間達も一緒なら問題ないのではないでしょうか?」

「そうですね、それがいい。では準備をするように声をかけてきます」

エルフ達はひと足早く城へと戻っていった…

アルフノーヴァはセバス達に少し休んでいかないかと聞くと

「しかし…皆さん心配してるでしょうから早目に戻った方が…」

すると神木様がふらっとミヅキの元に来ると…

【私のそばなら回復も早いはずよ、一日くらいなら伸びても大丈夫じゃないかしら】

神木様がサラッとミヅキの髪に触ると…

「神木様がここで休んで行けば回復も早いと…」

「そうですか…まぁミヅキさんに無理はさせられませんね。では一晩だけお邪魔させて頂けますか?」

「飯はどうする?ミヅキにだってなんか食わしてやらないと」

「今回は我々が頑張りましょう、迷惑をかけたのは私達なのですから」

「我々…っていうかセバスだろ?しかも元を辿ればエルフ達の勘違いだし…」

アランが文句を言うと

「よかったら今夜は我らにおもてなしをさせて欲しい。子供達を助けてもらったご恩を返させてくれ」

アンドロメダが話しかけてきた。

「いえ、けっこ…」

「いいのか!?」

セバスが断ろうとするとアランが凄い勢いでくらいつく!

「エルフの料理とか楽しみだな!何が出るんだ~」

「エルフの料理は美味しいですよ、野菜や花果実や木の実をふんだんに使った料理です」

オリーブが説明してくれると

「野菜…花?肉は?」

「肉?我らはあまり肉は食べません、それよりも蜂蜜たっぷりのパンなどはどうですか?」

オリーブが笑いかけると

「蜂蜜…パン…それはそれで美味そうだが、俺はやっぱり肉がいいなぁ~」

アランがガックリしていると

「郷に入っては郷に従えですよ、ここではエルフさん達の食事に合わせなくては」

セバスはアランの肩をトントンと叩くと

「パンで腹膨れるかな…」

仕方なさそうに笑うセバスとコジローだったが…あと二人ショックを受けているのがいるのには気がついてなかった…

「まじか…肉なしかよ」

【ミヅキ…ミヅキの飯が食いたい…】

ベイカーとシルバはボソッと呟いた…

ベイカーはミヅキを抱き上げるとエルフ達の案内で城へと戻ることになった。

「神木から離れても問題ないのか?」

アランが聞くと

「城も神木の木を使わせて頂いてますので問題無いそうです」

なら大丈夫か…

スヤスヤと穏やかに眠るミヅキを見ながらベイカーはエルフの城へと戻ってきた。

城へと足を踏み入れると…

「お疲れ様でございました。お帰りなさいませ!」

エルフ達が勢揃いでベイカー達を迎えいえれた。

「な、なんだ…」

エルフ達の様子にベイカーは足を止める、セバス達を見ると同じように怪訝な顔をして立ち止まっていた。

「なんでしょう…この変わりよう」

「絶対にろくな事考えてないよな…」

アランがセバスに耳打ちすると

「ご飯をご馳走すると言った時点で何か裏がありそうだと思いましたが…あなたが食い気味に了承してしまたのでしょう?全くすぐに食べ物に釣られるのですから…」

セバスがため息をつくと

「いや腹減りすぎて…すまん。まさか肉なしだとは思わなかったそうと分かれば断ったんだがなぁ~」

「まぁ何を考えているのか大方見当は着きます。あなたはご飯だけ食べていればいいですから余計な事は言わないように!」

「わ、わかってるよ」

「はぁ…早くミヅキさん起きていただけないでしょうか彼女がいればきっとすぐにでも帰れるでしょうに」

セバスはベイカーに抱っこされる可愛いミヅキの頭を撫でて癒してもらった。

城に着くと最初に入れられた牢屋とは正反対の最上階へと案内される…

「ここはこの城で一番いい部屋です。ゆっくりとおやすみ下さい!食事の用意が出来ましたらまた呼びに参りますので…」

「あ、ありがとう…」

広い部屋に通されるとエルフ達が笑顔でゆっくりと扉を閉めた。

「なんだありゃ…気持ち悪い」

ベイカーの腕に鳥肌が立つ。

「とりあえずミヅキさんをベッドに寝かせましょう。シンクさんがずっとついてましたしそろそろ魔力も戻っているのでは」

セバスが確認する為にミヅキの頭に手を当てると

「う、うん…」

ミヅキが身じろぎだした。

「あっ起きそうだな」

みんなでヒナが孵る様な気持ちで取り囲み見ていると、モゾモゾ動き出し伸びをするとミヅキの瞳が開き出した。

「うー」

眠い目を擦りながらやっと大きな瞳が全部開くと…

「わっ!…なんで見てるの~」

ミヅキは寝起きの姿をじっと見られていて恥ずかしがりながら近くにあった布を被った!

「すまん、すまん」

ベイカーが笑って布をめくると

「体の調子はどうだ?」

ミヅキは少しご機嫌斜めになりながらも

「うん…大丈夫」

コクンと頷く。

「ミヅキさん魔力も戻りましたか?」

セバスが聞くと…

「うん…それもシンクのおかげで…ってセバスさん!あれ?そうだベイカーさんとアランさん!みんな大丈夫だったの!」

ついいつもの風景にエルフの国に来ていたことを忘れる。

「ええ、大丈夫ですよ。向こうの勘違いだとわかっていただけました」

「よかった~あっ!そうだあの魔物も…」

「そちらも神木様から伺っていますよ、エルフの方々が大変感謝しているようでした」

「そっか…で?ここの部屋は?」

イシスさんの家で泊まったような木の造りの部屋を見ていると…

【お城の客間よ】

神木様が現れた!

「神木様も来てたんですか!?」

【私は自分の体から伝って来たのよ城の木は私の体の一部だからね】

「ん?客間?私達お客様になってるの?」

「どうもそのようです。私達をもてなしたいと仰っていて…」

「エルフの人達が?」

驚いて聞き返すと、セバスさん達はゆっくりと頷く。

「まぁ仲良くしてくれるなら争わなくてもいいもんね!あれ?そういえばアルフノーヴァさんとエヴァさんは?」

「あの人達はエルフ達に呼ばれて違う部屋に行ってしまいました」

「エヴァさんに会いたかったなぁ…最後に凄い心配させちゃったから…」

しょんぼりとしているとアランさんがドサッと隣に座る。

「そんな顔するな!お前が無事でみんなほっとしてたんだぞ。そんな顔をしてたらもっと心配されちまうぞ?それよりせっかくのエルフの飯だ楽しもうぜ」

アランがニヤッと笑いかける。

「ふふ…そうだね!ご飯の時にはエヴァさんには会えるよね!楽しみだなぁ~エルフの料理!」

「だろ!?」

ミヅキとアランが料理の事で盛り上がっていると…

「なーんか嫌な予感がしないか?セバスさん」

ベイカーが楽しそうに話している二人を見ながらセバスに聞くと

「俺もそう思います。どうもあの人達のミヅキを見る目は行き過ぎている気がする」

コジローも同意するように頷くと

「お前が言うか…」

ベイカーが苦笑する。

「お二人の心配もわかりますが…ミヅキさんなら大丈夫でしょう。きっとエルフ達の思い通りになんてなるはずありませんから…」

セバスはクスクスとご機嫌なミヅキをみて微笑んだ。


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