上 下
421 / 687
10章

533.囮

しおりを挟む
オリビアの部屋の騒ぎに他のエルフ達が集まってきた…

「オリビア!何を騒いでいるんだ!魔力を意味無く放出させるんじゃない!」

アッシュは数人のエルフを引き連れてオリビアの部屋に来ると…

「ア、アルフノーヴァ兄さん!」

アルフノーヴァが居ることに気がつくと顔を綻ばせる!

「何故ここに?いつ帰って来たのですか?」

オリビアそっちのけでアルフノーヴァに駆け寄ると

「久しいね、アッシュ。大きくなったなぁ」

懐かしそうにアッシュの頭を撫でると

「もう子供じゃありませんよ!成人の儀式も終えたんです」

アッシュが頬を膨らませる、そんな姿はまだ幼さの残る子供の様に見えた。

「アッシュ!帰ってよ!アルフノーヴァ兄様は私が呼んだんだから!」

オリビアはアルフノーヴァとアッシュを引き離すとアッシュを部屋から追い出そうとする。

「おい、何するんだよ!それになんでここに人がいるんだ?お前が連れてきたのか?」

アッシュがオリビアをジロっと見ると

「そ、それは…」

オリビアが不味いと顔を曇らせると

「彼らは私の友人だよ」

アルフノーヴァはセバス達のそばに寄ると肩を組んで笑顔になる。

「やはりアルフノーヴァ兄さんも人の国で生きていくんですか?」

アッシュは少し寂しそうに聞くと

「そうだね…ちょうど帰ってきたしアンドロメダ国王に挨拶して帰ろうかな」

「父も喜びます…が人は入れないかと…」

「そうなの?エルフの国も年月が経って少しは緩和になったのかと思ったけどやっぱりまだまだみたいだね」

「でも、人の国に行くエルフが増えています。そうすると誰も帰ってこない…」

「きっと騙されたり!売られたりしてるんだよ!やっぱり人間なんて最低だ!」

オリビアが叫ぶと

「私みたいに人と上手く付き合っているエルフも沢山いるよ。みんなきっと人と大事な絆ができたんだろう…酷い事をする人間もまだまだ確かにいるがそれと同じぐらい素敵な人もいるんだよ。オリビアももう少し大きくなったら見に来るといい」

「なんだ…俺達はエルフの家族の喧嘩に巻き込まれたのか?」

アランがベイカーとセバスを見ると

「そのようです…師匠は私にとって父の様な存在ですからしょうがないとして、ベイカーさんとアランは巻き込んですまなかった」

セバスが二人に謝ると

「じゃあコレで問題なく帰れるな!やっぱりミヅキが居ないとトラブルも小さく済むな」

ベイカーが笑っていると

「あっ…」

アルフノーヴァがしまったと口を開ける…

「まさか…師匠、ミヅキさんが来ているのですか?」

「いや…だって来るって言って仕方なかったから。それに誘拐された人達に言われたくないって言ってたよ」

アルフノーヴァが誤魔化すように笑う。

「それにこんなにあっさりと解決すると思わなかったからね、まさかオリビアだけの行動だとは」

笑っていると…

「トラブル…アルフノーヴァ兄さんは何か知ってるの?」

オリビアが今エルフの国で起きてる事を思い出すと

「えっ…まさか何か起きてるのかい?」

アルフノーヴァが驚きアッシュとオリビアを見ると…コクっと頷く。

「ああ…やっぱり…」

エルフ達の反応にベイカーはガックリと肩を落とした。

「それで?ミヅキさんは今どこに?」

「エヴァさんとコジローさん達と一緒にいるよ、なんか変だと思ってたから村で情報を集めて欲しいってお願いしておいたよ。まぁエヴァさんがいるから大丈夫じゃないかい?」

「師匠!ミヅキさんの事を舐めてはいけません!今頃絶対に何かトラブルに巻き込まれてるはず…」

セバスが言うと、まさかとアルフノーヴァが笑うがセバスは真剣な顔で首を振る。

「そ、それは不味いね…すぐに迎えに行こう!」

「まだ人がいるのですか?」

アッシュとオリビアが顔を顰めると

「その子も大事な子なんだよ…お願いだすぐに迎えに行ってもいいかい?」

アルフノーヴァが眉を下げて頼むと

「に、兄さんの頼みでも…一度兄と父にも報告させて下さい。それから許可がおりればすぐに動きますから…」

「なら俺達だけでも行かせてくれ!」

ベイカーが声を出すと

「今は兄さんと話している…人間が口を出すな。それにエルフの森に人間を放つわけないだろ。それこそエルフ達が攫われかねない…」

アッシュは、アルフノーヴァに向けていた眼差しとは正反対の冷たい目をベイカー達に向ける。

「アッシュ…」

アルフノーヴァが悲しそうな声を出すと

「兄さんの客だからこの程度ですんでいるのです…これが不法侵入ならすぐにでも処刑されてもおかしくないんですよ」

アッシュが言うと

「すまないね、みんな少し我慢して貰えるかな?」

アルフノーヴァがセバス達を見ると

「ここはエルフの国です、ここのルールに従いましょう…それにミヅキさんならきっと大丈夫です。もう無理しないって約束しましたからね」

セバスさんが笑うと…

「ミヅキ…コレで約束破ったら…」

アランがセバスの笑顔にひきつる…

「自分の為にも無茶な事するなよ…」

ベイカーはミヅキが大人しくしていてくれることを願った。


そんなみんなの心配も知らずにミヅキは…

どうしよう…

早速トラブルに巻き込まれていた。

あれからイシスさん達と城を目指していたがことある事にあのキメラに襲われていた…

【また来たぞ!】

シルバが私を背に乗せて走り出す!

「なんでこんなに襲われるんだ…」

イシスもわけがわからずにミヅキ達を追って走り出す。

「わ、わかんない…」

ミヅキはサッと顔を逸らすと

「ミヅキ!お前のせいじゃないからな」

エヴァさんが言葉をおくる。

【そうだ!何もかもこいつが悪い!いっそ…切り刻むか?】

【でも…イシスさんの前で、しかもダフネさんかもしれないんでしょ。エルフの王様なら何かわかるかもって言ってたし…】

【でもこいつ必要にミヅキを狙ってくるよ!いくら温厚な僕らでも主人を傷つけられたら許さないよ】

シンクがイラつくと…

【シンク!げんえいとけちゃう!まりょくおさえて~】

コハクから注意される。

【ごめん、ごめん】

シンクが落ち着くとシンクの周りに揺らめいていた炎が消える。

「ワン!ワン!」

コジローさんが何か言うとシルバが頷く。

【やはりアルフノーヴァと合流しよう。ここで下手な事をすれば困るのはアルフノーヴァだから…だと】

面倒くさそうに訳す。

私は頷くと

「エヴァさん!やっぱりこのまま埒が明かない。なんでか私を狙うから私があの子引きつける!その間にエヴァさんアルフノーヴァさん呼んできて!エヴァさんなら行けるよね!?」

「「駄目だ!」」

エヴァさんとイシスさんから却下される。

「えっ…?」

「ミヅキを置いてくなんて出来ない」

「そうだ、幼い子を置いていくなんて…俺がこの子と残る!エヴァさんは城に報告に言ってくれ」

「はぁ?なんで君とミヅキを残さなきゃならない!行くなら君が行け!」

エヴァは譲らんとイシスを睨むと

「女、子供を残せるか!それに…君そんなに魔力がないよな…」

ギクッ…

エヴァの顔が固くなると

「何故が知らないが君からは生命力溢れる魔力が感じられない、何か事情が有りそうだから聞かないでいたが今の状況ではそれは無視できない!」

走りながら喧嘩をするエヴァさんとイシスさんに…

「もう!喧嘩しないで!私なら大丈夫!シルバ達がいるからそれに…一人の方が色々できるし…」

後半ボソッとつぶやくと

「エヴァさん!イシスさん!仲直りしてアルフノーヴァさん呼んできてね!」

ミヅキはシルバに合図を送ると、シルバはひらっと身を翻して走っていた方向から直角に曲がる!

「えっ!」

「ミヅキ!」

急に進路を変えられエヴァ達が戸惑っていると…

「ギャウ!」

その後をキメラが追いかけて行った!

「クソ!またあの子は!」

エヴァさんは近くの木に手を当てると…

「お願い…あの子を守って…」

森にお願いすると…

「イシスさん!行くよ!」

ミヅキを追おうとするイシスに声をかける。

「でもあの子が!」

「我々ではもう追いつかん!それならすぐにアルフノーヴァさんに伝えに行った方がいい!」

エヴァはそう言うと構わず走り出した!



しおりを挟む
感想 6,823

あなたにおすすめの小説

収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです 無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す! 無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! ★恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 日間総合ランキング2位に入りました!

転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました

ひより のどか
ファンタジー
ただいま女神様に『行ってらっしゃ~い』と、突き落とされ空を落下中の幼女(2歳)です。お腹には可愛いピンクと水色の双子の赤ちゃんドラゴン抱えてます。どうしようと思っていたら妖精さんたちに助けてあげるから契約しようと誘われました。転生初日に一気に妖精さんと赤ちゃんドラゴンと家族になりました。これからまだまだ仲間を増やしてスローライフするぞー!もふもふとも仲良くなるぞー! 初めて小説書いてます。完全な見切り発進です。基本ほのぼのを目指してます。生暖かい目で見て貰えらると嬉しいです。 ※主人公、赤ちゃん言葉強めです。通訳役が少ない初めの数話ですが、少しルビを振りました。 ※なろう様と、ツギクル様でも投稿始めました。よろしくお願い致します。 ※カクヨム様と、ノベルアップ様とでも、投稿始めました。よろしくお願いしますm(_ _)m

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。