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10章

508.恐怖

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遠ざかるミヅキ達を見送ると

【あんまり遠くに行くなよ】

【はーい】

シルバが声をかける。

ミヅキ達の気配がある程度遠くなるのを確認して…

【よし行くか!】

シルバがピョンッ!と崖を飛び降りると

「あっ!シルバが行ったぞ!」

ベイカー達も続く!

「よし!一匹も残すなよ!特に王蟲は卵を産むから絶対に殺せ!」

【おい!これって食えるのか!?】

シルバが次々に蟲の体を引き裂きながら聞くと

【蟲って結構美味しいよね!死骸ならミヅキでも平気かな?】

【あれだけ嫌がっていたからなぁ…血の出てないのを少し取っておくか?】

【コハク!ベイカー達に聞いてみてくれ!】

コハクが人型になってベイカー達に聞くと

「おー!蟲を食う奴らもいるぞ!結構美味いって聞いたけどな」

「俺は食ったことあるぞ!脚のところなんていい味だった!」

アランが美味いと言うと

【ならミヅキに料理してもらうか!】

シルバ達は脚の部分なら大丈夫だろうとそこを中心に集めることにした…

そんな恐ろしい事をしているは想像もしていないミヅキはレムと草むらで食べられそうな野草を探していた。

【あー!これ大葉だ!これ大好き!レムいっぱい採っていこう!】

【承知しました!これは雄一郎も好きでした!】

【あっ!やっぱり~そうだよね。わかるよ!】

【ミヅキならこれも好き?】

レムが何かを見つけると…

【あっ!ミョウガだ!ここは薬味のパラダイスか!】

私は興奮して大葉とミョウガを採っていく、籠いっぱいに拾うと満足して収納にしまった。

【沢山取れたね!今回はなんにも持って帰れ無いと思ってけどよかった~】

【あの魔物は食べないのですか?】

レムが聞くと

【絶対無理!】

さっきまでご機嫌だった気持ちが一気に憂鬱になる。

【雄一郎はあれに似たのを食べていた記憶がある】

【ひぃ!ゆ、雄一郎さんは虫が平気な人だったんだ…確かに虫を食べる人達もいるけど…私は苦手なんだよ…】

想像して寒くもないのにブルっと震える。

【小さい頃にさぁ…虫で嫌な思い出があってそれから苦手なんだよね…】

【小さい頃?ミヅキは今も小さいが?】

【あー…もっと前って言うかね】

あははと笑って誤魔化すと

【みんなも倒し終えたかな?そろそろ戻ろうか?】

レムに笑いかけると

【そうですね…向こうの生体反応がほぼ無くなっています。討伐は終えたように思います】

【あっ本当に!?よかった~】

私はほっとしてシルバ達の元に向かった!

みんなと別れた高台に戻ってくるとシルバ達が集まっているのが見える。

「みんなー」

私は声をかけてみんなに近づこうとしてピタリと止まる…

【ミヅキ!】

私にシルバが近づこうとすると…

「いやぁー!」

私は回れ右をして来た道を走って戻る!

【ミ、ミヅキ!どうしたんだ!?】

シルバ達が私の様子に追いかけてくる!

「来ないでー!いやぁ~」

私は涙目になりながら追うなと頼むと…

【なんで逃げるんだ…】

【ミヅキ!待ってよ!】

【ど、どうしたんだ?】

【ミヅキ~!】

シルバ達の慌てる声にチラッと後ろを振り返ると…

「ぎゃあああー!やっぱり無理ー!」

シルバ達の体に付いた緑色のドロッとした液体に全身の毛が逆立つ思いだった!

「ミヅキ待て!」

ベイカーとアランもパニックになってる私の前に回り込むと…

「触らないで!」

全身蟲の体液で汚れた二人に拒否反応を示す!

「えっ…」

「ひでぇなぁ…」

ベイカーさんはショックで言葉を無くし、アランさんは苦笑しながらも少し寂しそうにしている。

しかしそんな様子に気がつく余裕もなく私は遠くへと逃げて行った!

ミヅキに拒否をされた一行は…

ドサッ!

シルバがあまりのショックに倒れこむ…

【ミヅキに嫌われた…生きていけない…】

【どうしよう…どうしよう…どうしよう…】

【今まであんな顔された事ないぞ…】

【ミヅキ…】

プルプル……


「アランさん…どうしたらいいんだ!なんで嫌われた?触られたくないほど嫌いになったのか?」

「知らねえよ…俺だって同じだ…ミヅキはどんな時でも受け止めてくれる奴だと思ってたが…」

珍しくアランさんも凹んでいると…

【あー多分皆さんのその体がいけないと思います…】

レムが声をかけると…

【【【【【どう言う事!だ!】】】】】

シルバ達が一斉にレムに詰め寄る!

【ミヅキは蟲が本当に嫌いだと言ってました…特にその緑色の液体が…そんなのを全身に付けていたら嫌われるのは当たり前だと…】

【な、なんだと…】

【この汚れが?いつも赤い血がついててもなんにも言わないのに?】

【ならこれを落とせばいいのか!?】

【すぐにきれいにする!】

プルプル!

シルバ達は慌てて全身を水魔法で綺麗にしていると、それを見ていたベイカー達が自分の体を見つめる。

「おい、シルバ達が慌てて体を綺麗にしてるぞ…もしかしてこの汚れがいけなかったのか?」

「それしか考えられねぇ!おいベイカーとりあえず綺麗にするぞ!」

二人はお互いに水圧をかけて服の汚れを落としていると…

「きゃあー!」

再びミヅキの叫び声が聞こえる!

【ミヅキ!】

シルバ達は綺麗になった体でミヅキの元に再び駆け出した!


その頃ミヅキは…

無理無理無理無理無理無理無理無理無理!!!

防御魔法を何重にも重ねて下を向き蹲り耳を塞いでブツブツと呟いていた…

ミヅキの周りにはイモ蟲の魔物がウヨウヨと蠢き…ミヅキの結界を破ろうと群がっている…

チラッと目を開けると自分の体の倍以上あるイモ蟲がうねっているのが目に入る。

その瞬間全身に鳥肌が立ちギュッと目を瞑る!
土魔法で防壁を張り視覚も遮断する。

寄りによって一番嫌いなイモ蟲に…

しかも目のような模様が体の横に付き目が合ったような感覚にさらに恐怖を覚える。

「やだぁ…助けてぇ…シルバ…みんなぁ…ベイカーさん…」

ミヅキは泣きながら結界を張り続けていると

【ミヅキ!】

シルバ達がミヅキに襲いかかっているイモ蟲を見つける!

【このクソ蟲共が!ミヅキに何してやがる!】

シルバが風魔法で吹き飛ばすと

【消えな!】

シンクが体液も残らずに燃やし尽くし、ムーが跡形もなく綺麗に周りに残っていた残骸を溶かしていく。

【【【【【ミヅキ!】】】】】

「「ミヅキ!」」

近づこうとするが結界が邪魔をして近づけない!

さらにミヅキを呼んでいるが全て拒絶していて声も届かないでいた…

【ミヅキ!もう大丈夫だぞ!】

「ミヅキ!こっちをむけ!」

ドンドンと結界を叩くがビクともしない…

「ミヅキの防御魔法すげぇな…これは破るのは大変だぞ…」

「みんなで一箇所に集中して攻撃をすれば何とかなりそうだが…中のミヅキにまで攻撃が届くかもれないしな…」

アランも頭を抱えていると…

ムーがトップンと影に入った!

そしてそのままミヅキの影から出てくると…つんつん…ミヅキを優しく触る。

「きゃぁ!」

急に何かに触られて悲鳴をあげて飛び上がると!

ドンッ!

防壁にぶつかるが痛くない…そっと目を開けるとムーが私を包み込んで守っていた。

【ムー…】

いつもの綺麗なムラサキ色のムーに私はほっとするとギュッと抱きつく。

するとムーが嬉しそうに震えていた…

【ムー…外に蟲がいるんだよ…私はあれが一番嫌いなんだ…】

ブルっと震えると…

【ミヅキ!】

シルバの声が聞こえる!

【シルバ!】

【あー…よかった!ミヅキ大丈夫か?外に出てこれるか?蟲なら全部倒したぞ!】

【ほ、本当に?】

私は防御を一つ一つ解いていくと…解いていくと…あれ?解いていくと…解いても解いても解けない防壁に驚く…ようやくシルバ達の姿が見えてきた!

どんだけ防御を張っていたのか…

外ではなんだが綺麗になってるみんなが心配そうな顔で待っている。

私はみんなの姿にほっとすると…

「シルバァ…みんなぁ…ベイカーしゃーん」

泣きながらみんなに駆け寄った!

私が寄ってきた事にみんなはほっとして手を広げて受け止める。

「もうやだぁー!ここには来ない!二度と来ない!」

泣きながら抱きつく私に…

【ああ…俺達ももう蟲はごめんだ…】

【そうだね…】

「帰ろうぜ…もうこの手の依頼は受けるのやめるから」

なんだかどっと疲れた面々は早々に町に帰ることにした。

「そういや…あの脚…どうする?」

泣き疲れたミヅキをおんぶしながら帰ろうとするベイカーにアランがそっと耳打ちする。

「あれはそのままにしておこう…絶対見せない方がいいよ」

【だな…】

せっかく集めた蟲の脚だったがさすがのアランも持って帰る気はサラサラおきなかった。
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