ほっといて下さい 従魔とチートライフ楽しみたい!

三園 七詩

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12章

504.幸せ…

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幸せな家族を一歩下がってミヅキは見つめる…

大切な人達が嬉しそうでとても嬉しい反面…なんだか胸にモヤがかかったような気もする。

そっと胸をさすっていると

「どうした?」

ベイカーさんが私の様子に気がついて心配そうに見下ろしていた。

「オイトもムツカも幸せそうで…嬉しい…二人に本当の家族が出来たんだね…」

胸の上に手をおき握りしめながら笑うと

「なんでそんな寂しそうな顔してんだよ」

みんなに見られないようにベイカーはミヅキを抱き上げて顔を隠す。

「じゃあリリアンさん達も疲れただろうから俺達は帰るな、二人とも本当におめでとう」

「バイバイ」

ベイカーさんも私も笑っておばばの家を出ると

「ちょっとミヅキと散歩してから帰るからデボット達は先に帰っててくれ」

ベイカーが二人に声をかけると

「しかし…」

「大丈夫か?」

二人もミヅキの様子に気がついて心配そうにしている。

「ちょっと話をしてくるから」

ベイカーさんの言葉に素直に従うと

「わかりました…じゃあ俺達はファルさんのところによってこれからの酒を卸す件について話をつけてきます…その後は真っ直ぐにベイカーさんの家に行くから…」

デボットが複雑そうな顔をしているミヅキの頬をつねると

「一緒に飯を食うんだぞ…待ってるからな」

「うん…」

私はこくんと頷いた。

ベイカーに抱っこされ従魔達に囲まれながら町を出るミヅキ達を見えなくなるまで見つめていた。

「どうしたのでしょうか…あんなにさっきまで嬉しそうにしていたのに」

レアルが心配そうにデボットを見ると

「わからん…まぁベイカーさんに頼むとしよう…あの人は何かわかってるみたいだったからな…」

「ミヅキの事になると鋭いですからね」

二人は次に顔を見る時はいつもの笑顔を見せてくれると信じてファルの店の黒猫亭へと向かった。


ベイカーは落ち込んだ様子のミヅキを連れて町の外に出ると人気がいないことを確認してミヅキを座らせる。

シルバ達もミヅキの様子を心配してそばに寄りそっていると…

「で?どうしたんだ」

ベイカーが声をかけると

「わかんない…なんかここが痛いんだよね…」

さっきからギューッと締め付けられるように胸が痛む…自分の感情とは違う何かが痛がっているような感覚だった…

「ただ…少し思ったのは…」

ミヅキが小さい声で話し出すと

「ああやってみんな頑張って産まれてくるでしょ?リリアンさんもルンバさんも凄く嬉しそうにオイトが産まれた事を喜んでた…」

「そうだな…」

「二人の姿を見て…親ってああいうもんだよなぁ…って思ったの」

ベイカーはミヅキの次の言葉を待っていると

「私は…ベイカーさん達と会う前の記憶がないけどさぁ…森に一人でいたんだよね…それってやっぱり…捨てられたのかな?」

ずっと思っていたけどなかなか口に出来なかった事を言ってベイカーさんを見つめる。

するとベイカーさんは悲しそうな寂しそうな顔をして

「それは…俺にもわからん…」

だよね…だって私もわかんない…なんで私がミヅキとして転生したのか…この子は私が転生する前はどうだったのだろう…

ふとそんな事を胸の痛みと共に思った…

この痛みは私の痛みではなく…この子の痛みなのかと…

しかし記憶のない私には何もわからなかった。

するとベイカーさんは下を向く私の顔をあげさせると

「だがな、今のミヅキには俺がいる!セバスさんやデボット、レアルだってじじいやアランさんだってみんなお前を自分の子供の様に大切に思ってる」

うん…

私は頷く…それはいつも感じる。

だから私は毎日楽しく過ごせている。
この世界で生きていけてる。

「お前の…本当の親ってのがどういう思いでお前と離れる事になったのかはわからんが…今のお前の親は目の前にいるだろ?俺はお前を捨てたりなんて絶対にしない!それだけは確実だ!」

ベイカーさんが自信満々に答えてくれる。

「わかんない事を嘆いても仕方ないだろ?もしかしたらやむを得ない事情でお前をあそこに置いたのかもしれないぞ?」

「そうだね…うん!そうかも、どうせならいい方に考えておこう!」

そうだ!だから大丈夫
今は幸せだよ…

心の中でつぶやくと胸の痛みも収まってきた…

笑顔が見えいつものミヅキに戻ってきてベイカーがほっとすると

【俺達だってミヅキとずっと一緒だぞ!ベイカーなんかよりいつも近くにいるんだからな】

シルバがグイグイと擦り寄ると

【そうだよ!僕らとなんて心でも通じてるんだから!】

シンクもギューッと私に身体を押し付ける。

【それともミヅキは従魔の俺達では嫌か?】

プルシアが聞くとコハクが寂しそうに見つめている…

【ミヅキ…ぼくたちずっといっしょだよね?】

【も、もちろん!そうだね…私なんであんなに落ち込んだんだろ…こんなにも家族がいるのに…】

もうすっかりいつもの様子に戻ってミヅキにレムが嬉しそうに近づこうとすると…ムーがみんなから少し離れて見守っているのに気がついた…

【ムー?どうしました、ミヅキのところに行かないのですか?】

レムがムーに話しかけると…ムーはピクンと身体を波打たせ…ズルズル…と影に沈んでいく。

【ムー…】

ムーのおかしな様子にレムが戸惑っていると…

【ムーも私と同じだね】

ミヅキが沈みかけていたムーを掴むと影から引っ張りあげる。

【私もムーと同じだから気持ちがわかるよ、でも見てみんなが仲間だって家族だって言ってくれる…ムーも同じだよね】

【まぁ…ここまで一緒にいたんだ、ムーが居なくなるのも考えられないしな】

シルバが仕方なさそうに頷くと

【僕の方がお兄ちゃんだからね】

シンクがモフッと胸を張る。

【お前がいないとミヅキが悲しむからな】

【ムーもいっしょ!】

コハクがガバッと抱きつくと

【私の兄…ですよね?】

レムがムーの事を心配そうにぷにぷにと触る。

【ほらね、やっぱり一緒…ムー新しい家族がいれば寂しくないね】

笑いかけるとムーは震える。

ムーもいつもの様に見えた…

「さて!ミヅキもムーもなんか元気が戻ったみたいだな!」

ベイカーが立ち上がるとミヅキを抱き上げてシルバに乗せる!

「デボット達も心配してたからな早く帰ってやろう!」

ベイカーの言葉にミヅキは心配そうに

「ベイカーさん…さっきの話二人にするの?その…私が心配してたって…」

「そりゃ聞かれるだろうなぁ~そんでもって同じ事言われるんじゃないか?」

うー…それはそれで恥ずかしいなぁ…嬉しくもあるけど…

むず痒い気分でシルバの上で悶えると

「心配させたんだからちゃんと向き合ってこい」

ベイカーさんにポンと頭を撫でられて、私はうん…と頷いた。

そんな様子にシンクやコハク達も楽しそうに後から付いてくる。

プルシアやレムもいつも通りの風景にほっとしながらあとを追うとムーもそれに続く。

しかしムーの心にご主人様の言葉がよみがえる…

僕が呼んだらすぐに帰ってこいよ…

ビクッ!

ムーはその日が来ないで欲しいと願ってしまった…

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