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9章

479.司祭

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「じゃあイチカちゃんの衣装と装飾はコレで決まりね!後は会場と料理かしら」

エミリーさんがイチカのドレスを脱がしてやると

「会場はデボットさんとレアルさんに任せてあるんだ!」

牛乳御殿の前の広場を会場として貸してもらい二人には村の人達と会場作りをしてもらっていた。

「だから後は料理が出来れば完成だね!」

「なんか…ありがとうございます。私とポルクスさんの為に」

イチカがお礼を言うと

「いいんだよ!みんなあんた達をネタに自分達も楽しんでるんだからね!」

エミリーさんの言葉にそうそうとリリアンさんと私が頷く。

「やっぱり身内のお祝いは嬉しいし楽しいよね!」

「本当にしかも可愛がってた二人の結婚だもの!」

リリアンさんも嬉しそうにしている。

「リリアンさんはあんまり興奮しすぎるんじゃないよ!お腹の子がびっくりして早くで出てきちゃうよ」

エミリーさんが冗談で笑うと

「た、大変!」

ムツカが急いでリリアンさんのお腹を擦る!

「大丈夫だよーまだゆっくりしててね!」

ムツカが優しく話しかける。

「ああ!こんなしっかりとしたお姉ちゃんがいるなら赤ちゃんも安心して出てこれるね」

エミリーさんが小さいお姉ちゃんの頭を撫でた。

私は会場の様子を見に行くと…

「デボットさん、レアルさん調子はどうかな?」

二人に声をかけると

「ああ、テーブルと椅子は用意出来たぞ。あとお前が言った台ってのはこんな感じでいいのか?」

デボットさんが新郎新婦が上がる壇上を見せる。

「うん!いい感じ!これで神父様が誓いの言葉を言えば完璧!」

私が手を叩くと…

「神父…」

デボットさんとレアルさんが顔を見合わせる。

「あっ司祭様?」

「いや…わかるけど村には司祭は居ないぞ」

「えっ!そうなの?」

「大きな町や王都でもないといないんじゃないか?」

「えー!なら結婚の誓いは誰がするの!?」

「そんなの自分達でするだけだろ?」

デボットがレアルを見ると

「そうですね、王家や貴族なら結婚式など大々的にやりますが庶民はそんな事はしませんから、本人達が何処かで勝手に誓うだけでしょう」

レアルさんの言葉にショックをうける。

そっかみんなは結婚式しないんだ…ブーケトスもライスシャワーもバージンロードも歩かないんだ…

ガッカリしていると

「まぁでもイチカとポルクスの結婚式はお前の好きな様にやればいいだろ?準備も全て自分達でやるんだ誰にも迷惑かけてないからな」

デボットさんが落ち込む私の頭を撫でる。

「そ、そうだよね…うん!そうする!やってみたかったこと全部やる!」

私が勢いよく答えると

「あっ…まぁ程々で頼むぞ」

デボットさんとレアルさんが苦笑する。

「司祭役は誰にしようかなぁ~村で一番偉い人がいいのかな?」

誰だと村の人たちを眺めると

「そりゃ村長だろ?」

デボットさんが当たり前のように言う。

「えっエミリーさん…は新郎のお母さんだからさすがに頼めないなぁ…」

ちらっとデボットさんとレアルさんを見ると

「「嫌だからな!」」

何も言ってないのに断られる。

「まだ何にも言ってないじゃん…」

口をとんがらせると

「じゃあなんて言おうとしてたんだよ!」

「司祭やって?」

お願いと手を合わせると

「無理だ!」

デボットさんがぷいっと横を向く。

「なんでー!デボットさん私が主人でしょ!言うこと聞いてよー」

お願いと足を掴むと

「お前が嫌な事は嫌って言えって言ったんだろ!」

デボットさんがなかなかうんと言ってくれないので相手を変える…レアルさんと目を合わせると

「ミヅキがやればいいじゃないですか?」

「そりゃいいな!」

お前がやれと言われてしまった…

「私?」

「聖女なんて言われてたしピッタリだろ!シルバ達聖獣も揃えば完璧じゃないのか?」

シルバ達を隣に置いて…うん、悪くないかも

「わかった!私が司祭やる!」

「よし!」

デボットさんがほっとすると

「その代わり式の司会進行は二人がやるんだからね」

「「えっ…」」

「当たり前でしょ!私は司祭で忙しいからね~今から全部教えるから覚えてね!」

私は顔を引き攣らせる二人ににっこりと笑いかけた。

デボットさんとレアルさんに結婚式の内容を叩き込むと式で着る服を渡す。

「明日はこれ着て式に出てね」

王都で作っておいた服を渡すと

「な、なんか高そうな服だな…」

「値段はよくわかんない、マルコさんに頼んでこの日の為に作ってもらっておいたから」

「そ、そうか…」

イヤに触り心地のいい生地の服を受け取ると

「あと、マルコさんからの伝言でデボットさんとレアルさん今度王都に帰ってきた時はその服を来た時の事を事細かに教えて下さいね!だって!」

「まじか…」

「まじだよ!まぁそんな大したことやらないし大丈夫でしょ。王都の結婚式と一緒だよ」

私は笑って二人によろしくと言うと料理の進行具合を見に行った。

「何が一緒だ…聖女と聖獣に祝われる結婚式なんてどこの王様でも出来ないぞ…」

「しかも父親とバージンロードなるものを歩くとか…父親役誰にしますか?」

レアルがため息をつく。

「この最後のブーケトスってのも女が好きそうだな…後は…ウェルカムボード?どんなの作りゃいいんだよ…しかもこれをマルコさんに報告だろ?あの人結婚式も流行らすつもりか?」

「でしょうね…」

二人は愚痴を言っていても仕方ないと急いで準備を始めた。

「ポルクスさん、ルンバさん料理はどうですか?」

私が様子を見に行くと…テーブルには美味しそうな料理が並んでいた!

「うわぁ!豪華!」

「う、美味そうだ…ちょっと味見を…」

アランさんが堪らずに手を伸ばすと

「駄目だよ!これは明日までのお楽しみ!」

私はアランさん達に食べられる前に全て収納に急いでしまった。

「あー…料理が消えていく…」

【一口でも食っとけばよかった…】

後ろではシルバも悔しそうに肩を落としていた…

【明日たくさん食べれるから今は我慢してね】

私は苦笑してシルバの頭を撫でた。

「明日は倒れるまで食ってやるからな!」

アランさんとベイカーさんが気合いを入れる。

「ポルクスさんは明日の為に衣装の用意に行っていいよ。ここからは私達でやっておくから」

私が声をかけるとポルクスさんはよろしくとエミリーさんの元に向かった。


「アランさん、スポンジは出来たの?」

アランさんに任せておいた生地がどうなったか聞くと

「おう、シンクが焼いたのを言われた通り熱を取って置いてあるぞ」

スポンジの山を見せてくれる。

「いい感じ!ベイカーさん生クリームは?」

「ああ、収納に入れておいた。これだろ?泡立てるのに苦労したよ」

「ありがとうね~じゃあこれでウエディングケーキを作るよ!」

「ウエディングケーキ…?なんだそりゃ?」

「結婚した二人がやる初めての作業のケーキカットだよ!これしないと結婚式じゃないでしょ!」

「いや、知らねーし…」

「おお、初めて聞いたな」

唯一の既婚者のルンバさんをみんなが見ると知らんと慌てて首を振る。

戸惑う男達を無視して私はウエディングケーキを仕上げる事にした。

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