上 下
267 / 687
8章

379.弟子

しおりを挟む
「ただいま戻りました!」

商人達の誘導をしていた里の人が戻ってくると…

「ご苦労じゃったな!みんな誘導して注意はしてきたか?」

長老が確認をすると

「はい、出歩いたりしたら今後の取引をしないよう言っておきました!しかし…弟子になりたいっと言っていた若者達がいなくなっていたんですよね~」

里の人の言葉に

「えっ?エリクお兄ちゃん達いなかったの?」

ミヅキが話を聞いていて声をかけてきた…

「ミヅキちゃん!うん、そうなんだ。商人達に飯をたかっていたらしいから腹でも減って狩りにでも出たんじゃないのかな?」

里の人が軽く話すと

「危なくない?普通の人が狩りなんて…」

ミヅキが心配そうに言うと

「大丈夫、大丈夫!ここら辺の魔物はそんなに強くないから!俺たちでも軽く捕れるからね」

「みんなは…忍者だものそりゃ捕れるでしょ…」

「えっ?みんな村人ならこんなもんなもんだろ?」

里の人達が驚いてコジロー達を見ると

「あー…多分他の一般人よりは…強いかな?」

コジローが苦笑して答えると

「俺たちの里はみんなある程度戦えるからね…」

「そ、そうなのか?」

「ちょっと…心配だなぁ~ベイカーさんどうしよう?」

「えー!いいよ!ほっとけよ!あいつらだってここらで敵わないってわかる事で成長できるよ!」

ベイカーさんがステーキにかじりつきながら答えるとミヅキが肉に夢中なベイカーに呆れる。

「ベイカーさん!行くよ!」

ミヅキはベイカーさんの耳を掴むとシルバ達とエリク達の捜索に向かった!


「はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!…」

「ど、どうする…どうすればいいんだよ…」

「助けてくれ…誰か…」

エリク達はバラバラに散らばりながら夜の森を全速力で走っていた…

最初は魔ウサギやビッグラットなど小物の魔物を狩っていた…

それが上手く行き過ぎて調子に乗ってしまった、そこでやめておけば良かったものの…人数的に量が足りないこともあり、もっと森の奥へ奥へと進んでしまっていた…。

すると、奥の方から嫌な気配がしてきた…空気がピリつき今にも逃げ出したい衝動にかられる。

周りのみんなを見ると同じように顔を強ばらせていた…

ドッサ!

木々が倒れる音に皆がビクッと体を強ばらせる…するとエリクが叫んだ!

「か、隠れろ!」

エリクの言葉にハッと我に返ると一斉に隠れ、身を潜める…しばらくすると音が近づいてきた。

そこには苛立ち周りの木々をなぎ倒しているギガタウロスがいた…。

「あれは…なんだ?」

初めて見るミノタウロスの上位種に若者達は腰を抜かす者もいた…

(大丈夫…こっちには気がついてない…このまま息を潜めてやり過ごせば…)

皆冷や汗をかきながら祈るように息を潜めて目をつむっていると…

ガサッ…

若者の一人が思わず後ずさりってしまい枯れ葉を踏んでしまう。

ギロッ!

ギガタウロスは血走った目を音のなる方に向けると…

「グゥモォー!!」

草の陰に隠れていた若者達に威嚇して雄叫びをあげた!

「ぎゃー!」

若者の一人が耐えきれずに叫びだし、一目散に逃げ出すと…

「お、おい!待ってくれ!」

皆が後を追うように走り出した!

ギガタウロスの脚は遅いが繰り出される一歩が大きく撒くことが出来ない!

しかも腹が減っていて体力も限界に来ていた…

もう駄目だ…

皆が諦めそうになった時…

「てめぇの相手はこの俺だ!」

何かが通り過ぎたと思ったら…後ろで凄まじい破壊音が鳴り響いた…

しかし、恐ろしくて振り返ることが出来ない…最後のチャンスかもしれないと思い必死に足を前へ前へと出していると限界を迎えた足が絡み合い盛大に転んでしまう。

「ここで終わりか…」

ドロドロになった顔を地面に付けたまま…起き上がることも出来ない…

エリクが諦め目を閉じると…

「お兄ちゃーん!大丈夫!?」

子供の心配する声が聞こえてきた…

(ここはもう死の世界か?俺は何も感じないまま死んだのかな…)

【大変!シルバ!エリクお兄ちゃんが起きないよ!】

【安心しろ、気を失ってるだけだ】

首元を何かに噛まれたと思ったらポーンとどこかに投げ出された!

【シルバー!】

「大丈夫だミヅキ、ちゃんと運んでおくから」

コジローが見事にエリクをキャッチすると…

「うっ…」

エリクが微かに体を動かした…

「ほらちゃんと生きてるよ」

「よかった…ベイカーさんはどうかな?」

ミヅキがベイカーが突っ走って行った先を見ていると…

「おおーい!見てみろ!ギガタウロス狩ったぞー!」

ギガタウロスの頭を剣に突き刺し高々と空に掲げていた。

身体部分を引きずりながら運んで来ると…

「ベイカーさん…私が収納に入れておくよ」

ミヅキがベイカーからギガタウロスを受け取ると…

「それよりも他の人達も見つけないと!みんなどこかで怯えてるよ」

「そこら辺は里の人達の方が詳しいだろ…」

ベイカーが周りを確認すると…

「おっ、あそこに誰かいるな」

ガサッと草をかき分けると

「ひぃ!」

若者はベイカーを見るなり気を失った…

「なんて失礼なやつだ!」

ベイカーが若者の首根っこを掴んで運んで来て、怒っていると…

「そりゃ…ベイカーさんのその姿見ればみんな怖がるよ…」

ミヅキがベイカーを上から下までじっくりと見る…その姿はギガタウロスの返り血で赤く染まっていた…

「いやぁ~あいつなんか興奮してたみたいで凄い勢いで血しぶきが出たぞ、なんであんなに怒ってたのかな?」

【シルバさん…あれって…】

コジローがコソッとシルバに話しかけると

【俺が逃がしてやったやつだろうな…おおかたプライドでも傷つけられたんだろ、ここいらじゃ敵無しっぽかったからな】

ふんっと鼻で笑っていると

【ミヅキには黙っていろよ!】

シルバがジロっとコジローを睨みつけた。

【は、はい…】

コジローが顔を強ばらせていると…

「だけどこんな強い魔物がなんでこんな所で暴れてたんだろうね?」

ミヅキがベイカーに聞くと

「シルバのせいだろ、あいつがテラタウロスを狩りに行った時にギガタウロスもいたって言ってたからな!」

【シルバ?】

ミヅキがジロっとシルバを見ると…

【あの野郎!】

シルバはベイカーを睨みつけるがミヅキに捕まってしまう。

【もう!駄目だよ他の人に迷惑かけちゃ!】

【す、すまない…】

シルバが尻尾を垂らしていると…

「ぷぷぷ…」

ベイカーがニヤニヤとシルバをみて笑っていた…。

見習い希望の若者達を全員無事に保護するとミヅキ達は里に戻ってきた。

森に入って若者達を寝かせると…

「きっとお腹空いてるよね…何かつくといてあげるか…」

ミヅキはうどんを作って茹でて、ゴボウを使ってごぼう天を揚げていると…エリク達が匂いに釣られて意識を取り戻してきた。

「ここは…」

エリク達が周りを見ると…

「お兄ちゃん達大丈夫?」

ミヅキが心配そうに顔を覗き込んだ…

「君は…ムサシさんの…」

「ミヅキだよ、お兄ちゃん達ギガタウロスに襲われてたんだよ…覚えてる?」

ギガタウロスと聞いてみんながギクッと体を強ばらせると

「大丈夫…ベイカーさんが討伐してくれたからね」

ミヅキが安心させるように微笑むとエリク達も少し落ち着きを取り戻した。

「なんであんな危ない事したの?」

ミヅキが聞くと

「いや…俺たち腹が減って、食べる物も無かったからそれなら魔物か動物を狩って食べようかと…」

「冒険者でもないのに?」

「人数で叩けば大丈夫かと…」

エリク達の声が小さくなると…

「馬鹿かお前ら…ろくに講習も受けずに一般人が討伐なんて無謀にも程があるだろ、しかもここはBランク級の魔物が出る場所だぞ」

「はい…」

ベイカーに説教されて項垂れていると

「しかもお前らが遭遇したあのギガタウロスはAランクの魔物だ…殺されなかったのは幸運としかいえないな」

よく助かったな…と軽く肩を叩くと

「Aランク…」

若者達はそれを聞いて愕然と言葉を失った…





しおりを挟む
感想 6,823

あなたにおすすめの小説

収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです 無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す! 無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! ★恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 日間総合ランキング2位に入りました!

転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました

ひより のどか
ファンタジー
ただいま女神様に『行ってらっしゃ~い』と、突き落とされ空を落下中の幼女(2歳)です。お腹には可愛いピンクと水色の双子の赤ちゃんドラゴン抱えてます。どうしようと思っていたら妖精さんたちに助けてあげるから契約しようと誘われました。転生初日に一気に妖精さんと赤ちゃんドラゴンと家族になりました。これからまだまだ仲間を増やしてスローライフするぞー!もふもふとも仲良くなるぞー! 初めて小説書いてます。完全な見切り発進です。基本ほのぼのを目指してます。生暖かい目で見て貰えらると嬉しいです。 ※主人公、赤ちゃん言葉強めです。通訳役が少ない初めの数話ですが、少しルビを振りました。 ※なろう様と、ツギクル様でも投稿始めました。よろしくお願い致します。 ※カクヨム様と、ノベルアップ様とでも、投稿始めました。よろしくお願いしますm(_ _)m

追放ですか?それは残念です。最後までワインを作りたかったのですが。 ~新たな地でやり直します~

アールグレイ
ファンタジー
ワイン作りの統括責任者として、城内で勤めていたイラリアだったが、突然のクビ宣告を受けた。この恵まれた大地があれば、誰にでも出来る簡単な仕事だと酷評を受けてしまう。城を追われることになった彼女は、寂寞の思いを胸に新たな旅立ちを決意した。そんな彼女の後任は、まさかのクーラ。美貌だけでこの地位まで上り詰めた、ワイン作りの素人だ。 誰にでも出来る簡単な作業だと高を括っていたが、実のところ、イラリアは自らの研究成果を駆使して、とんでもない作業を行っていたのだ。 彼女が居なくなったことで、国は多大なる損害を被ることになりそうだ。 これは、お酒の神様に愛された女性と、彼女を取り巻く人物の群像劇。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。