上 下
255 / 687
7章

367.検証

しおりを挟む
ギルバート達がセバス達とピースを連れて王宮に戻ると…兵士達が慌ただしく王宮を駆け回っていた。

「本当に何かあったみたいだな…」

ギルバートがいつもの緩んだ顔を引き締めると

「皆も注意するように…」

アラン隊長とミシェル隊長が兵に指示をだし警戒を強めていた。


「ギルバート様!ウエスト国の皆様!」

クラウス隊長が走ってギルバート達を迎えにきた…

「皆様こちらに、レミオロン陛下がお待ちです」

頭を下げて顔を上げるとピース王子がいることに気がついた!

「ピース様!」

クラウスがピース王子に思わず声をかけると

「ただいま…」

ピースがヒョイっと顔を覗かせ、クラウスに笑いかけた…その様子に

「ピース様…目が…」

「うん…皆さんに治して貰いました」

ピースがギルバート王達を見ると

「なんと感謝すればいいか…」

クラウス隊長は部下たちが見ている中、膝を付きギルバート王に向かって頭を地面に付けた。

「今はいい…それよりも何があったんだ、早く案内してくれ」

頭を下げているクラウスを止めるとギルバートは早くしろと促した…

「も、申し訳ございません…こちらに…ピース様は王妃様の元へ…」

クラウスがピース王子を王妃様の元に向かわせようと部下に指示を出すが

「いや…僕も行くよ、それにまだウエスト国の皆さんといます。彼らが無事に国を出るまでは僕は皆さんの人質となりますから」

ピースがクラウスの指示を撤回させた。

「まぁ…確かにピース王子を返したらそのまま裏切られるかもしれないしなぁ~」

ギルバートがニヤニヤ笑うと

「ピース王子はしばらくこちらで面倒を見ておこう」

意地悪げな顔で笑っていると

「ピース王子…」

クラウスが心配そうにピースを見つめていた。

「心配ないよ、それよりも早く行こうか?」

「はい…」

クラウスは早足でレミオロンの元へと向かった。


部屋にたどりつき扉を開くと…

「ギルバート様とウエスト国の皆様をお連れしました!」

クラウスが部屋の中に声をかけると部屋にはレミオロンが顔を顰めて待っていた…ギルバート達を見ると…ホッとしたように…

「ギルバート様…何か変わったことなどはありませんでしか?」

「変わったこと?いや…別に、何かあったか?」

ギルバートがみんなを見るが…

「いえ…特に…あっ…夜中に害虫が忍び込んでいたので追い払ったくらいですかねぇ?」

アランが答えると…

「が、害虫?」

「あっ…いえこちらの話ですのでお構いなく…それよりも王宮で何かあったのですか?」

「そ、それが…」

ちらっとギルバート達を見ると…ピースがいることに気がついた!

「ピース!お前…」

「ああ…そうだピース王子は無事に病気は治療したよ、だがこの国にいる間は人質として預からせて貰う、いいな?」

「わ、わかりました…しかし…これからする話を子供に聞かせたくはないのですが…そちらの少女も同様に…」

ギルバートがピースとミヅキを見ると

「僕は大丈夫、この国で起きた事王子として聞かなきゃいけないと思うから」

ピースが平気だよと頷くと

「ミヅキ…いえ、この子も大丈夫です、お構いなく…」

ギルバートがミヅキの頭をポンと触った…

「そうですか…では話の途中でも駄目だと思ったら止めて下さい…」

「わかった」

レミオロンが皆を椅子に座るように促すと自分も席につくと

「実はそちらの少女を誘拐した罪人の一人ですが…昨日死にました…」

「「「はぁ?」」」

ギルバート達が信じられないと顔を顰めると

「どういう事だ?死刑にして殺したのか?」

「いえ…詳しい事はまだ分かっていませんが…尋問の途中に逃げ出したようで…自分の家族を殺して自分も死んだようです…」

「尋問の途中で逃がしたぁ~!一体何をしていたんだ!お前らの目は節穴か!」

ギルバートが怒鳴ると…

「すみません…返す言葉もありませんが…未だにどうやって逃げ出したのかわかっておりません…」

「どういう事だ?」

「罪人は椅子に縛り付け…脚も動かないように足枷を付けていました…窓のない部屋には抜け穴もなく扉は一つです…そこには兵士が目を離すことなく付いておりました…あそこから抜け出すなど…普通は出来ない事…だと思うのです」

「しかし…そこを抜け出して家族の元に向かったんだな?」

「はい…男には妻と病気の娘がおりました…」

「二人を殺して自分も死んだんだと?」

「そ、それが…」

レミオロンとクラウスが浮かない顔をして表情をくもらせた…

「現場が凄まじい状況でして…どう殺したのか…よければ見ていただけないかと…」

申し訳なさそうに言った…

「話だけでは埒が明きませんので行ってみましょうか」

セバスがギルバートを見ると、仕方なさそうにギルバートが頷いた…それを合図に全員が立ち上がると

「あっ…さすがに子供達は残った方が…」

クラウスが止めると

「そうだな…ではミシェル隊長、子供達を頼む」

「はっ!」

ミシェルが敬礼をすると

「僕、行けるよ?」

ミヅキがつんつんとセバスの袖を掴むと

「大丈夫です、いい子に待っていてください」

セバスが優しく笑うと

「わかった!」

ミヅキが元気よく頷いた。

子供達を残して皆で現場に移動すると…

「臭いがしますので…気をつけて下さい」

王宮から少し離れた小屋に案内された…

「罪人の家族達を拘束して小屋に待機させていました…ここの事は本人にはもちろん知っている者も限られていたのですが…どうしてこの場所がわかったのか…」

クラウスが説明しながら扉を開くと中からはおどろおどろしい気配がしていた。

異様な臭いが鼻につき、中に入ると…赤黒い液体が壁中に巻き散らかされ部屋の真ん中には灰が溜まっていた…

「これは…」

何処にも遺体など無いが…赤黒い液体が何を意味するか皆感じ取っていた…

「こちらの液体が罪人の妻の体液だと思われます…そしてこちらのベッドの上が娘のものかと…」

落ちていた服からそう判断したようだった…

「では、本人は?」

クラウスは、灰を指さすと…

「この灰が罪人のジャンだと思われます…中からジャンの物と思われるタグが出てきました…しかしなぜ灰になったのか…妻と娘をどう殺したのか…」

「確かに…異様ですね…」

セバスが顔を顰めて部屋をグルっと見て回る…

「ここに…もう一人居たということはありませか?」

部屋の隅を見つめてクラウスに聞くと…

「この現場に人が?」

「ここを見てください…血…というか、体液が飛び散っているなかここだけ綺麗です…何かいたと考えられませんか?」

クラウス達が近づいてよく見ると…確かに防壁を張ったようなあとが付いていた…

「これは…誰かが殺したか、その現場を見ていたと…いうことか?」

レミオロンが顎に手を当てて考え込むと

「ジャンのそばには兵士が何人もいた…その目を盗んでジャンを連れ出し殺したと?ちょっと考えにくいが…」

「それよりも罪人が何も話さず死んでいったことも困りますね…まぁ…どうせ死罪でしたでしょうが…もう一人いましたよね?そちらはどうなりましたか?」

セバスが聞くと

「ジャンが死んだ事を聞いて狼狽えたのか今は素直に話している…あいつの方はジャンに言われて動いていただけようだが、罪は罪だ…そちらの少女の話を聞いてから正式に罪状を決めて罰を与えますので…」

「そうして下さい…まぁ…これ程酷い罰にはならないと思いますけどね…」

セバス達は床に巻き散らかされ体液と混ざった灰を見つめていた…

ギルバート達は王宮に戻るとミヅキが退屈そうに足をブラブラとさせて待っていた…

みんなの足音が聞こえて来るとピクンと反応してみんなを見る!

「おかえり!」

ミヅキがセバスの方に近づくと

「ではこれから少し話を聞かせて貰いますが…大丈夫ですか?」

クラウスがミヅキとギルバート達を見ると

「我々も一緒で構わないな?」

ギルバートがレミオロンを見ると…頷き返す。

「最初どう誘拐されたか覚えているかな?」

クラウスが視線を下げて優しく聞くと

「ねてたらおとこきた!ふたり!ぼくはへんなくすりかがされてねちゃった…」

しゅんと悔しそうにすると…

「変な薬…だと?」

セバスが聞いてないぞ…とクラウスを睨みつけると

「こ、こちらでは少女は寝ていたのでそのまま連れ去り…一緒にいた従魔が離れないので薬を嗅がせて眠らせて連れ去ったと…」

「あっ!そう!そうだ!」

ミヅキが頷く。

「まぁ…概ねあっていそうですね…」

クラウス達はミヅキを見つめると…

(こんな子だったか…?)

不思議そうに少女を見つめていた…。
しおりを挟む
感想 6,824

あなたにおすすめの小説

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです 無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す! 無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。

亜綺羅もも
ファンタジー
旧題:「デブは出て行け!」と追放されたので、チートスキル【マイホーム】で異世界生活を満喫します。今更戻って来いと言われても旦那が許してくれません! いきなり異世界に召喚された江藤里奈(18)。 突然のことに戸惑っていたが、彼女と一緒に召喚された結城姫奈の顔を見て愕然とする。 里奈は姫奈にイジメられて引きこもりをしていたのだ。 そんな二人と同じく召喚された下柳勝也。 三人はメロディア国王から魔族王を倒してほしいと相談される。 だがその話し合いの最中、里奈のことをとことんまでバカにする姫奈。 とうとう周囲の人間も里奈のことをバカにし始め、極めつけには彼女のスキルが【マイホーム】という名前だったことで完全に見下されるのであった。 いたたまれなくなった里奈はその場を飛び出し、目的もなく町の外を歩く。 町の住人が近寄ってはいけないという崖があり、里奈はそこに行きついた時、不意に落下してしまう。 落下した先には邪龍ヴォイドドラゴンがおり、彼は里奈のことを助けてくれる。 そこからどうするか迷っていた里奈は、スキルである【マイホーム】を使用してみることにした。 すると【マイホーム】にはとんでもない能力が秘められていることが判明し、彼女の人生が大きく変化していくのであった。 ヴォイドドラゴンは里奈からイドというあだ名をつけられ彼女と一緒に生活をし、そして里奈の旦那となる。 姫奈は冒険に出るも、自身の力を過信しすぎて大ピンチに陥っていた。 そんなある日、現在の里奈の話を聞いた姫奈は、彼女のもとに押しかけるのであった…… これは里奈がイドとのんびり幸せに暮らしていく、そんな物語。 ※ざまぁまで時間かかります。 ファンタジー部門ランキング一位 HOTランキング 一位 総合ランキング一位 ありがとうございます!

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました

ひより のどか
ファンタジー
ただいま女神様に『行ってらっしゃ~い』と、突き落とされ空を落下中の幼女(2歳)です。お腹には可愛いピンクと水色の双子の赤ちゃんドラゴン抱えてます。どうしようと思っていたら妖精さんたちに助けてあげるから契約しようと誘われました。転生初日に一気に妖精さんと赤ちゃんドラゴンと家族になりました。これからまだまだ仲間を増やしてスローライフするぞー!もふもふとも仲良くなるぞー! 初めて小説書いてます。完全な見切り発進です。基本ほのぼのを目指してます。生暖かい目で見て貰えらると嬉しいです。 ※主人公、赤ちゃん言葉強めです。通訳役が少ない初めの数話ですが、少しルビを振りました。 ※なろう様と、ツギクル様でも投稿始めました。よろしくお願い致します。 ※カクヨム様と、ノベルアップ様とでも、投稿始めました。よろしくお願いしますm(_ _)m

天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される

雪野ゆきの
ファンタジー
記憶を失った少女は森に倒れていたところをを拾われ、特殊部隊の隊長ブレイクの娘になった。 スペックは高いけどポンコツ気味の幼女と、娘を溺愛するチートパパの話。 ※誤字報告、感想などありがとうございます! 書籍はレジーナブックス様より2021年12月1日に発売されました! 電子書籍も出ました。 文庫版が2024年7月5日に発売されました!

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。