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7章

315.薬

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デボットもレアルもシルバ達もサウス国の対応に怒りを覚える。

「もういい、エヴァさんが戻ったら俺たちは町をでる、セバスさん達はそのうちに来るだろ…俺たちは先に隠れ里に行ってよう」

「そうしましょう、我々がサウス国にそこまでする義理などありませんからね」

デボットがクルッと向きを変えると

「すみませんが行かせるわけには行かない…」

「町に入った女性も拘束させて頂きます」

デボット達を兵士が取り囲む

「勝てると思ってんのか?」

デボットがクラウス隊長を睨むと

「無傷ではすまないだろうが…そちらの病人を庇って何処まで抵抗出来ますか?どうやら余程大事な人だと思われますが…こちらも譲れない事情がありますので」

クラウス隊長の目が変わる。

「グルゥゥ…」

「キシャー!」

シルバとコハクがミヅキを抱くデボットの前にでる。

「戦争でもする気ですか?」

デボットが感情なく聞くと

「それはそちらでしょう?ただ一人の病人の為にそこまで抵抗する意味がわりません、協力しあえばお互い利益が残るでしょうに」

「俺達には利益と感じない」

言葉を交わせば交わすほど両者の間にピリピリと火花がちると…

「だ…めだよ…」

ミヅキがボソッとつぶやく…

「「ミヅキ!」」

【【【ミヅキ!(キャン)】】】

デボットやシルバ達が一気に警戒を解いてミヅキに集まると

「シルバも…デボットさんも…怖い…よ…喧嘩…しないで…ぇ…なか…よくねぇ…」

ミヅキがデボットの顔に手を伸ばすと熱い手がデボットの頬を触る。

「泣かないで…デボットさん…私…は大丈夫だ…ょ」

デボットさんの辛そうな顔をそっと触ると

【シルバ達もみんなの言う事聞いてね…】

ミヅキが苦しそうな顔でシルバに精一杯笑いかける。

そこに…

「ミヅキ!」

エヴァさんが薬を手に持ちかけて来た!

「待て!」

兵士が止めようとすると

「うるさい!邪魔だよ」

エヴァさんが魔法で兵士の動きを止めると、そのままミヅキの元に来る。

「ミヅキ、これを飲んでみて」

エヴァさんがミヅキに緑色の液体を飲ませようとすると

「エヴァさん…その色…大丈夫ですか」

「大丈夫だ…と思う、久しぶり作ったし…急いだからちょっと自信はないが…」

飲ませやすそうにミヅキの上半身を起こすと…

「ミヅキ飲めるか?」

「うん…」

目を微かに開きながら力なく頷く。

ミヅキの口元に薬が入った容器を付けると、コクッ…と一口飲み込む。皆が様子を見つめていたがミヅキに変化はなかった…

「直ぐに効くわけじゃないのか?」

デボットがエヴァさんに聞くと

「いや…飲み続けないといけないが…熱は直ぐに下がってくるはずなのに…」

エヴァが薬を見つめると…

「何か足りない物があるのでは?我が国に帰れば施設も装備も思い通りに用意致します、だからそのまま皆さんで来てくださいませんか?」

クラウスが事の成り行きをみていてもう一度お願いしていると…

「エヴァ…貸して…」

ミヅキがエヴァさんに手を伸ばす…しかし様子がいつも違っていた

「ミヅキ?」

エヴァは懐かしい気持ちになり思わず薬をミヅキに渡たそうとすると…

「エヴァは慌てるとそそっかしいよね…そんな所が可愛いけど…」

ミヅキ?が呟くと…薬を掴んでいるエヴァの手を上から包み込む…すると薬が淡く光った。

「なんだ…今のは…」

クラウス隊長が驚きエヴァとミヅキを見つめている。

「ユ、ユウイチロウ?」

エヴァがミヅキを見つめると…ニコッと笑ったかと思うとガクッと力が抜けた

「ミヅキ!?」

デボットがしっかりと受け止めると

「なんだ?今のは…」

「もう一度薬を飲ませて!」

エヴァがミヅキに再度薬を飲ませると…

ミヅキの顔色が良くなってきた、おでこに手を当てると

「熱が下がってきてます!まだ少し熱いですが先程より楽そうだ」

デボットがホッとすると…シルバかミヅキを覗き込み顔を舐める。

【よかった…苦しく無さそうだ…】

「完全に治るまでしばらく薬を飲ませないと…」

エヴァさんが薬を見つめると…

「その薬…もう一度作ってくださいませんか?」

クラウス隊長が真剣な顔でエヴァを見つめる

「さっきから…なんなんだお前らは」

エヴァがサウス国の兵士達を睨みつけると

「こいつらその薬が必要なんだそうですよ、俺たちを拘束して国に連れ帰るつもりなんですよ」

「はぁ?」

エヴァが呆れると

「いえ…作り方を教えて頂けるなら…」

「教えるのは構わないが、お前さん達に作れるとは思えないけどねぇ」

エヴァがもう1つの薬をクラウスに投げると

「それをやる、自分達で解析なりして薬を完成させればいい」

エヴァが背を見せると

「これは…一度目に飲ませた薬ですよね?あの子供が何かしたのはどういう事ですか?」

クラウスが薬を握りしめると

(やっぱり見ていたか…)

デボットとレアル、エヴァがサッと目を合わすと

「なんの事だい?作ったのは私だよ」

エヴァがしょうがないとクラウスに向き合うと

「いえ…しっかりと見させていただきました。一度効かなかった薬にその子供が何かしたのを…」

じっと眠っているミヅキを見つめる。

「その子がいないと薬は完成しないんじゃないんですか?」

「いや、そんな事は無いよ…はぁ…しょうがない私がお前らの国に行こう、そこで薬を作ってやるよ。その代わりこの子達はもう帰してやってくれ。病人に無理をさせないで欲しい」

クラウスはじっとエヴァを見つめ黙っていると…

「薬は作れるんですよね?」

「ああ…今回は時間がなかったからな…ちゃんと時間を貰えれば作れる!」

「時間…」

クラウス隊長が悩んでいると

「いいんじゃないか?彼女が来てくれるなら」

先生が口を挟むと…

「しかし…先程の事を見てもその子供には、何か秘密がありそうですよ!」

兵士の一人が騒ぎ出すと…

「うちの子も病気なんだ…その薬は直ぐに出来ないんだろ?」

エヴァに視線をおくると…

「直ぐに出来るかなんて言えない、しかし彼らを帰さないなら私は薬を作る気は無い!」

エヴァがハッキリと言うと

「わかりました…ではエヴァさんと言いましたね?このままサウス国までご同行お願い致します…あなたを客人としてお迎えします…どうか薬を作ってください」

クラウスと先生が一緒に頭を下げると…

「わかった…すまないねデボットさん達私はここでお別れとするよ」

エヴァがデボット達に笑いかけると

「ミヅキが寂しがりますよ…」

「アイツらの様子を見ると…只事じゃない事が起きたんだろ…このままいればミヅキまで連れ去られかねない、そんな事になったら戦争になるぞ」

エヴァさんが困った様に笑うと

「これを、一応この薬が無くなるまでミヅキに飲ませてくれ。いいか!熱が下がっても全部飲ませんるだぞ」

残りの薬を全部デボットに渡すと

「はい…」

「薬を仕上げるにはミヅキの力が必要だ…多分錬金術を使ったんだろう…ミヅキに意識があったとは思えないからデボットさんが教えてやってくれ」

エヴァがデボットだけに聞こえる様に囁くと

「じゃあね…」

エヴァが愛しそうにミヅキの頭を撫でると

「う、ううん…」

ミヅキがモゾモゾと動くとエヴァさんの服を掴んで丸まってしまった。

「ミヅキ…」

エヴァが寂しそうに笑うと、そっと自分の服を脱ぎ出す。

「エ、エヴァさん?」

エヴァが下着姿になると…脱いだ服をミヅキに渡す。

「起こしたら可哀想だからね…じゃあね…」

エヴァはそっとミヅキの頬を触るとおでこにキスをするとデボット達に背をみせクラウス達の元へと向かった…。

先生が白衣を脱ぐとエヴァさんに羽織らせる。

「ありがとう…」

「ではこちらへ…用意出来次第、王都に向かいます…」

クラウス隊長がエヴァさんに頭を下げると

「わかった」

「君達も色々とすまなかった…その子が早く治ることを願ってます。では我々はこれで失礼する」

クラウスはデボット達に頭を下げると町へと帰って行った…。

「エヴァさん…」

「ミヅキが起きたら…なんて言うか…」

レアルがため息をつく。

「ミヅキが悲しむな…」

スースーと規則正しく寝息を立てているミヅキがしばらくは寝ていてくれることを二人は願った。
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