上 下
4 / 11

4.優しい義兄

しおりを挟む
シルビアは明日には学園に戻る事になっている。

最後と言うことでシスレー様とお母様、アルバート様と私の新しい家族で親睦を深めようと食事を取っていた。

「シルビア、美味しいかい?」

シスレー様に声をかけられて私は頷いた。

「はい、食べた事もない料理で本当に美味しいです」

目の前には食べきれない程の色とりどりの料理が並んでいた。

「沢山食べてくれ。体調も戻ったようでよかった」

「はい、ご心配お掛けしました。明日からはまた学園に戻りますね」

そう聞いてシスレー様とお母様が寂しそうに顔を見合わせた。

「シルビアが居なくなるとなんか寂しくなるね」

「本当ね」

二人がそっとテーブルの上で手を合わせた。

「お父様、お義母様その事でお話があります」

するとアルバート様が急に真剣な顔で立ち上がった。

「そんな怖い顔をしてどうした?」

「僕はシルビアの学園に転入しようと思っています」

「「「えっ!?」」」

私達が驚いているとアルバート様が話を続けた。

「シルビアに会ってから考えていたことです。学園に入れば連絡もなかなか取れないし会うのも月に一回程度…そんなの耐えられません。僕が学園に入ればシルビアの面倒を見てやれますから」

「ま、待ってください。アルバート様は学園に通わなくてもいいのでは…」

聞けばアルバート様は私よりも二つ上の学年で成績が優秀すぎて学園での授業内容はもう既に取得しているらしく家庭で教師を雇っているらしい。

そんな成績優秀なのに私の為に学園に通わせて時間を無駄にさせたくない。

断ろうとするがシスレー様もお母様もいい考えだと大賛成する。

「それはいい!それなら月に一度は二人で屋敷に戻ってきてくれ」

「もちろん」

「アルバート様が一緒にいてくれたら私も安心だわ」

「何があってもシルビアをお守りします」

アルバート様が頼もしく胸に手を当てる。
そんな姿に少しキュンとしてしまったが慌てて首をふる。

「アルバート様にそんな事頼めません!ちゃんと屋敷にも戻ってきますから…」

盛り上がる三人を止めようとすると左手をお母様に掴まれた。

「シルビアにまた何かあったらお母様耐えられないわ」

すると逆の手をシスレー様に掴まれる。

「君は私の娘でアルバートの妹なんだ。もっとわがままになっていいんだよ」

二人に見つめられては何も言えない…後ろではアルバート様がニヤリと笑っていた。



「よかった、お父様やお母様に賛成してもらえて」

部屋へと戻る廊下をアルバート様と歩いていた。

「アルバート様はなんでそんなに私に構うんですか…」

思わずずっと思っていた事をぼそっと聞いてしまった。

「どうして?妹を家族を守るのは兄として当然だよ」

振り返ってさわやかに笑う。

「でも本当の妹じゃないのに…」

するとアルバート様は足を止めて私の前に立ち塞がった。
顔をあげると悲しそうなアルバート様の顔が私を見下ろしている。

あっ…言いすぎた。
やってしまったと顔を逸らした。

「僕はね…君に初めて会った時から君を守らなきゃってずっと思っていたんだ」

「ずっとって…会ったのは三日前ですよ」

可愛くない答えを言ってしまう。
わかっていても止められなかった。

「ううん、もっとずっと前に会ってるんだ…」

そんな可愛くない私を愛おしそうに金色の瞳が見つめていた。

「ずっと前?」

「とにかく僕は君の兄になれて嬉しいんだ。そして君の為に何か出来ることに喜びを感じてる。これは今までこの生を受けてから初めての体感なんだ。この気持ちがなんなのか僕にもよく分からないんだけどね」

そう言って困った顔で笑う。

「ふふ…変なお兄様」

私はアルバート様をみて思わず笑ってしまった。

「シルビア…」

アルバート様は驚きアワアワとしている。
いつも完璧に何事もそつなくこなしているイメージだったので慌てた様子にさらにおかしくなる。

「あはは!アルバートお兄様慌てすぎです」

この屋敷にきて初めて心から笑えた。

「やっと笑ってくれた」

するとアルバートお兄様が慈しみにあふれた瞳で近づくとギュッと私を抱きしめた。

「アルバート様!?」

驚き離れようとするがアルバート様の力が強くでビクともしない。

「君の笑顔をまた見たいと思っていた…その笑顔の為なら僕はなんでも出来るんだよ」

そう言って体を話して見つめられる。

間近でアルバート様の瞳を覗き込んだ…恥ずかしさよりも懐かしさが押し寄せてくる。

アル…

「そんな可愛い顔で見つめないで欲しいな…離したくなくなるよ」

アルバート様がニコニコと微笑んだ。

「あっ!」

私は抱き合っていたことに気がついて慌てて腕から逃げ出した。

「もう、アルバート様からかわないでください!」

ぷいっと顔を逸らした。
赤くなった顔を見られたくなかったのもある。

後ろを向いて頬の熱を両手で押さえて冷ましていた。

アルバートはそんなシルビアの様子に気が付き幸せそうに見つめていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai
ファンタジー
人を助けた代わりにバイクに轢かれた男、工藤 英二 その魂は異世界へと送られ、第二の人生を送ることになった。 侯爵家の三男として生まれ、順風満帆な人生を過ごせる……とは限らない。 裕福な家庭に生まれたとしても、生きていいく中で面倒な壁とぶつかることはある。 そこで先天性スキル、糸を手に入れた。 だが、その糸はただの糸ではなく、英二が生きていく上で大いに役立つスキルとなる。 「おいおい、あんまり糸を嘗めるんじゃねぇぞ」 少々強気な性格を崩さず、英二は己が生きたい道を行く。

他の人を好きになったあなたを、私は愛することができません

天宮有
恋愛
 公爵令嬢の私シーラの婚約者レヴォク第二王子が、伯爵令嬢ソフィーを好きになった。    第三王子ゼロアから聞いていたけど、私はレヴォクを信じてしまった。  その結果レヴォクに協力した国王に冤罪をかけられて、私は婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。  追放された私は他国に行き、数日後ゼロアと再会する。  ゼロアは私を追放した国王を嫌い、国を捨てたようだ。  私はゼロアと新しい生活を送って――元婚約者レヴォクは、後悔することとなる。

【完結】全てを奪われた娘の復讐を手伝ってくれたのは魔族でした。

三園 七詩
恋愛
貴族の娘のナディアはずっと仕えていた従者の男に騙されて屋敷や地位など全てを失う。 どん底に陥ったナディアを救ったのは忌み嫌われる魔物と魔族だった。 ナディアの復讐を手伝ってくれると言う魔族の力を借りて復讐を果たす。

料理の腕が実力主義の世界に転生した(仮)

三園 七詩
ファンタジー
りこは気がつくと森の中にいた。 なぜ自分がそこにいたのか、ここが何処なのか何も覚えていなかった。 覚えているのは自分が「りこ」と言う名前だと言うこととと自分がいたのはこんな森では無いと言うことだけ。 他の記憶はぽっかりと抜けていた。 とりあえず誰か人がいるところに…と動こうとすると自分の体が小さいことに気がついた。 「あれ?自分ってこんなに小さかったっけ?」 思い出そうとするが頭が痛くなりそれ以上考えるなと言われているようだった。

継母の心得

トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 4巻発売中☆ コミカライズ連載中、2024/08/23よりコミックシーモアにて先行販売開始】 ※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロが苦手の方にもお読みいただけます。 山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。 治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。 不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!? 前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった! 突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。 オタクの知識を使って、子育て頑張ります!! 子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です! 番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。

間違いから始まる恋

三園 七詩
恋愛
現代恋愛物語。 間違いから始まった恋人関係、それはいつの間にか本当になっていった。

お化けが見えるだけなのに……

三園 七詩
恋愛
幽霊が見える主人公の結奈は心霊トラブルから仕事を辞めることになった。 そんな時目に入ってきた素敵なカフェに惹かれて中に入る。 カフェの店主はダンディーなイケメンだったが結婚しているようで子供もいる。 優しい店主に素敵な雰囲気の店で、しかも従業員を募集中のこと。 住み込み付きの仕事に飛びつくがどうも娘さんのバイトの面接が条件らしい。 結奈は見事それに合格してここで働くこととなった。 ここでは幽霊が見えるのを内緒にようとしていた矢先……店主さんの娘さんも幽霊が見える体質だと知る。 そのうちに娘の玲那ちゃんと仲良くなった。 そして玲那ちゃんに幽霊の事で相談を受けるようになってしまった。

妹のように思っているからといって、それは彼女のことを優先する理由にはなりませんよね?

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルリアは、婚約者の行動に辟易としていた。 彼は実の妹がいるにも関わらず、他家のある令嬢を心の妹として、その人物のことばかりを優先していたのだ。 その異常な行動に、アルリアは彼との婚約を破棄することを決めた。 いつでも心の妹を優先する彼と婚約しても、家の利益にならないと考えたのだ。 それを伝えると、婚約者は怒り始めた。あくまでも妹のように思っているだけで、男女の関係ではないというのだ。 「妹のように思っているからといって、それは彼女のことを優先する理由にはなりませんよね?」 アルリアはそう言って、婚約者と別れた。 そしてその後、婚約者はその歪な関係の報いを受けることになった。彼と心の妹との間には、様々な思惑が隠れていたのだ。 ※登場人物の名前を途中から間違えていました。メレティアではなく、レメティアが正しい名前です。混乱させてしまい、誠に申し訳ありません。(2024/08/10) ※登場人物の名前を途中から間違えていました。モルダン子爵ではなく、ボルダン子爵が正しい名前です。混乱させてしまい、誠に申し訳ありません。(2024/08/14)

処理中です...