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王子として
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王子が疾走して数日後…
「やはり王子の行方は分かりません…今日より王子の捜索は打ち切りたいと思います」
部屋で執務をこなしているとニルギルから声をかけられた…
顔をあげると申し訳なさそうな顔をしている。
もう既に諦めていた事だからと私は苦笑いした。
「いやもういいんだ。覚悟は決めた…私はグレイ王子として生きていく」
「おま…いや、王子…これからはあなた様にお仕えできること嬉しく思います…ずっと支え続ける事をお約束致します」
ニルギルは手を胸に当てて深く頭を下げた…庶民生まれのこの俺に…
この日からニルギルが普段からも俺の事を王子と呼ぶようになり、俺もそのまま過ごすことになった。
「そういえば…婚約者候補の話ですが…」
ニルギルが言いにくそうに話し出した。
「ああ、とうとう婚約破棄になったのか?」
気にしないように書類に目を通しながら聞き返すと…
「それが…もう一度だけ会いたいと…」
「ルフナ様が?」
思わず顔をあげてしまった!
「はい…もしかしたら最後に何か言われるかも知れません。すみませんルフナ様が苦手なのに…」
あんな別れ方をしてしまったのだ…ただでさえ嫌われているようなのに、あの可愛らしい顔が歪み、小さく愛らしい口からなんと罵倒されるのだろうか。
考えるだけで憂鬱になるが、仕方ない…最後の俺としての仕事だ。
「わかった…いつ頃になる?」
「それが…すぐにでも会いたいと言われていて、いまこちらに向かっているようです」
「今!?」
ガタッ!と音を立てて思わず立ち上がってしまった。
「わかった、すぐに用意を…」
「はい!」
俺とニルギルは急いでルフナ様を迎える準備をした。
せめて敵対し合わないように別れなければ…
「失礼致します。ルフナ様がお見えです」
扉からの従者の声に俺は背筋をピンと伸ばした…
「どうぞ…」
入室の許可を出すと扉が開いて久しぶりにルフナ様の顔を見た…一瞬目があったと思ったら、その顔は何かを我慢するように唇を噛み締めて下を向いている。
そこまで嫌われているのか…
「よく来てくれた、座ってくれ」
目の前のソファーを指し示すと…
「その前に…どうしても王子様と二人で話がしたいのですが…」
ルフナ様が俺とニルギルを見つめた。
「しかし…」
ニルギルが難色を示すと…
「私に身体検査をしても構いません!ただ…王子様ともう一度だけ…」
何かを訴えるような表情に私ももう一度話したいと思った。
「ニルギル、いいんだ。ルフナ嬢どうぞこちらに…皆は下がってくれ」
俺が声をかけるとルフナ様の手を引いて近づいた。
従者やメイド達は予めルフナ様に言われていたのだろう、素直に従い部屋を出ていった。
「王子…」
ニルギルが心配そうに見つめると…
「ルフナ嬢だから大丈夫だ」
彼女の手を軽く手を握り返すとビクッとルフナ様の肩が跳ねた。
この反応…やはり嫌われているのか…
「わかりました…すぐ隣の部屋におります。何かあればお呼びください」
「わかった」
俺はどうにか微笑むとニルギルは後ろ髪を引かれるような面持ちで部屋を出ていった。
こうして部屋に俺とルフナ様の二人っきりになった。
「ようやく会えましたね」
ルフナ様から思いもよらない笑顔を向けられた…
「えっ…君は、怒ってないのかい?」
てっきり何か恨み言か罵倒されるかと思っていたら…会えたとは…?
私はわけがわからずに首を傾げた。
「やはり王子の行方は分かりません…今日より王子の捜索は打ち切りたいと思います」
部屋で執務をこなしているとニルギルから声をかけられた…
顔をあげると申し訳なさそうな顔をしている。
もう既に諦めていた事だからと私は苦笑いした。
「いやもういいんだ。覚悟は決めた…私はグレイ王子として生きていく」
「おま…いや、王子…これからはあなた様にお仕えできること嬉しく思います…ずっと支え続ける事をお約束致します」
ニルギルは手を胸に当てて深く頭を下げた…庶民生まれのこの俺に…
この日からニルギルが普段からも俺の事を王子と呼ぶようになり、俺もそのまま過ごすことになった。
「そういえば…婚約者候補の話ですが…」
ニルギルが言いにくそうに話し出した。
「ああ、とうとう婚約破棄になったのか?」
気にしないように書類に目を通しながら聞き返すと…
「それが…もう一度だけ会いたいと…」
「ルフナ様が?」
思わず顔をあげてしまった!
「はい…もしかしたら最後に何か言われるかも知れません。すみませんルフナ様が苦手なのに…」
あんな別れ方をしてしまったのだ…ただでさえ嫌われているようなのに、あの可愛らしい顔が歪み、小さく愛らしい口からなんと罵倒されるのだろうか。
考えるだけで憂鬱になるが、仕方ない…最後の俺としての仕事だ。
「わかった…いつ頃になる?」
「それが…すぐにでも会いたいと言われていて、いまこちらに向かっているようです」
「今!?」
ガタッ!と音を立てて思わず立ち上がってしまった。
「わかった、すぐに用意を…」
「はい!」
俺とニルギルは急いでルフナ様を迎える準備をした。
せめて敵対し合わないように別れなければ…
「失礼致します。ルフナ様がお見えです」
扉からの従者の声に俺は背筋をピンと伸ばした…
「どうぞ…」
入室の許可を出すと扉が開いて久しぶりにルフナ様の顔を見た…一瞬目があったと思ったら、その顔は何かを我慢するように唇を噛み締めて下を向いている。
そこまで嫌われているのか…
「よく来てくれた、座ってくれ」
目の前のソファーを指し示すと…
「その前に…どうしても王子様と二人で話がしたいのですが…」
ルフナ様が俺とニルギルを見つめた。
「しかし…」
ニルギルが難色を示すと…
「私に身体検査をしても構いません!ただ…王子様ともう一度だけ…」
何かを訴えるような表情に私ももう一度話したいと思った。
「ニルギル、いいんだ。ルフナ嬢どうぞこちらに…皆は下がってくれ」
俺が声をかけるとルフナ様の手を引いて近づいた。
従者やメイド達は予めルフナ様に言われていたのだろう、素直に従い部屋を出ていった。
「王子…」
ニルギルが心配そうに見つめると…
「ルフナ嬢だから大丈夫だ」
彼女の手を軽く手を握り返すとビクッとルフナ様の肩が跳ねた。
この反応…やはり嫌われているのか…
「わかりました…すぐ隣の部屋におります。何かあればお呼びください」
「わかった」
俺はどうにか微笑むとニルギルは後ろ髪を引かれるような面持ちで部屋を出ていった。
こうして部屋に俺とルフナ様の二人っきりになった。
「ようやく会えましたね」
ルフナ様から思いもよらない笑顔を向けられた…
「えっ…君は、怒ってないのかい?」
てっきり何か恨み言か罵倒されるかと思っていたら…会えたとは…?
私はわけがわからずに首を傾げた。
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