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スリッパ

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おばさんから聞いた話です。


おばさんが子供の頃…
(多分小学生)

おばさんの友達は市営の集合住宅に住んでいる子が多くて自然と遊びは市営団地になる事が多かったそうです。

市営団地は知っての通り同じ建物が何棟も立っていて、かくれんぼや鬼ごっこなどしやすく子供達の格好の遊び場でした。

その日も市営団地でかくれんぼをしていました。

縛りは一つの棟からは出ない事。

おばさんは三階まである階の一番上の階段の裏に隠れたそうです。

下では鬼の子の数を数え終わる声に「行くよー!」と動き出す気配を感じました。

息を潜めてクスクスと笑い早く誰か捕まらないかとドキドキしていると…

トン…トン…

誰かが階段を登ってくる足音が聞こえてきました。

しまった…

鬼がこの階を登ってきたのかも…

そう思ってさらに身を小さくして影に隠れます。

丸見えなのに顔だけ隠して壁の方に頭を向けていました。

階段を登ってくる音はずっとしていて自分が1番に見つかってしまうとギュッと目を閉じていると…

「あれ?」

いつまでたっても鬼の声がしませんでした。

この階まで来なかったのかな?

そう思ってまた下の様子をうかがおうと階段の方に近づこうと動くと足元に何かぶつかりました。

見ればそれは壁に向かって揃えられたスリッパでした。

この階の人のかな?

そう思い、触らない様にそのままにしておきました。

「みーつけた!」

「わっ!」

するとすぐそばに鬼のがニヤニヤと笑って立っていました。

鬼の子は足音を忍ばせて階段を登っておばさんを見つけました。

「あーあ、私何番目?」

「一番目だよ、次鬼ね!」

「うそ!?」

悔しそうにして一緒に下に降ります。

「ここ二回見た?さっきも登ってきたでしょ」

あの時は足音を立ててたのに悔しそうに聞くとその子はそこには一回しか登って無いと言いました。

その時はあまり気にせずに鬼ごっこを続けて楽しく遊んだそうです。

全然怖い話じゃないじゃんと思って聞いていたら…

「でもね、自分が中学生になってその市営団地に行った時に気がついたのよ。あのスリッパがあった場所の壁にねはしごが付いてたの」

「はしご?」

「屋上に上がる為の物なんだけど子供が届かないようになのか結構上の方に付いてるのよね…あのスリッパその真下に揃えてあったの。子供の時の事だからうろ覚えだけどあの時最初にスリッパは無かったのよね」

うーんと思い出すように考えながら話していました。

しかもそのスリッパは家で使うような柄があるような物では無くて、病院とかで使うような薄いベージュのビニール性のスリッパだったそうです。

あの場には場違いで何となく印象に残ったそうでした。

あの時聞こえた足音にいきなり置いてあったスリッパ…屋上へと続くはしご…

今思えば何となく気持ちのいいものでは無かったと感じたそうです。

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