上 下
90 / 107

99.到着

しおりを挟む
「おっと、意外と早かったなぁ…まぁあれだけ可愛がってるみたいだったからな…当然か…」

王子が笑うと兵士に声をかけて、お兄様達を部屋の中へと招き入れた。

二人は私に顔を見るなり駆け寄ってきて力強く抱きしめる。

「マリー!大丈夫だったか…屋敷に居ないと知った時は本当に心配したんだぞ」

「す、すみません…」

お兄様の為とはいえ、確かに何も言わずに出てきたのは不味かったと素直に謝る。

「マリー勝手に家を出るのやめて…僕心配だよ」

シリルは瞳を濡らしながらウルウルと見つめてくる。

大きな瞳から涙がこぼれそうなほど心配されて私は慌てて二人に謝った。

「ごめんなさい!心配かけて…すぐに帰るつもりだったから…」

「それでも今度からはちゃんと行く時は行き先を伝えてくれ。必ず私かシリルが同行するから」

いやいや、お兄様はこれから学園だしそれは無理でしょ。

私がお兄様を見ると

「大丈夫、マリーの為なら授業を休んででも駆けつけるからね」

テオドールお兄様、笑顔が素敵ですがそれはよくない。

「駄目です!お勉強大事ですからお兄様はちゃんと授業受けて下さい!私が出かけるの我慢します!」

「マリーがそういうなら、仕方ない」

テオドールお兄様は渋々頷くと、王子とダン様に向き合った。

「この度は私の大事な大事な妹がお世話になりました…まだ小さい子を呼び出すなどという有るまじき行為…王子には大変失望しました。これからは私が側近になるべくご指導致しますのでのつもりで…」

にっこりと笑って王子を見つめる。

内容がなんか思ってたのと違うが、お兄様の黒い笑顔に王子が嬉しそうに笑っている!

これは!

二人はその後も楽しそうにニコニコ笑いながら何やら話しているが、声がこちらまでは聞こえない。

内容は分からないがグッと二人の距離が縮まった感じがした!

「ふふ、お兄様達楽しそうだね!」

私は隣にいたシリルにコソッと話しかけると

「そうかな?」

シリルは何やら兄を見て苦笑していた。


マリーがニコニコとテオドールとグレイ王子を見つめていると…

「王子!妹だけを呼び出すとはどういうつもりですか!?」

マリーに聞こえないようにテオドールは王子を睨みつけ。

「ん?いやお前が家に来るなと言うから呼んだまでだ、それに俺は来い!なんて命令はしてないぞ?よかったら来ないかとしたためただけで…」

王子が含み笑いをする。

「これ以上マリーにちょっかいはかけないで頂きたい!」

「それはどうだろう…俺はあの子が気に入ったんだ」

王子の言葉にテオドールは目を見開く!

恐れていた事態が……  マリーに興味を持たれてしまった。

マリーは人の心を掴むのが上手い…まさかとは思っていたが王子まで…

俺は頭を抱えていると

「あなたがマリー様の兄上か?私はダンと言う、聞けば同じ歳だとか…仲良くしてくれるか?」

何やら礼儀正しい男が声をかけてきた。

「テオドールお兄様!ダン様ですよ!わぁ~三人が仲良くしてる~凄い!」

マリーは俺達三人をみて目を輝かせる。

マリーのあんな顔を見てしまったら…兄として仲良くしない訳にはいかなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています

オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。 ◇◇◇◇◇◇◇ 「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。 14回恋愛大賞奨励賞受賞しました! これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。 ありがとうございました! ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。 この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)

【完結】眠り姫は夜を彷徨う

龍野ゆうき
青春
夜を支配する多数のグループが存在する治安の悪い街に、ふらりと現れる『掃除屋』の異名を持つ人物。悪行を阻止するその人物の正体は、実は『夢遊病』を患う少女だった?! 今夜も少女は己の知らぬところで夜な夜な街へと繰り出す。悪を殲滅する為に…

聖女候補の転生令嬢(18)は子持ちの未亡人になりました

富士山のぼり
恋愛
聖女候補で第二王子の婚約者であるリーチェは学園卒業間近のある日何者かに階段から突き落とされた。 奇跡的に怪我は無かったものの目覚めた時は事故がきっかけで神聖魔力を失っていた。 その結果もう一人の聖女候補に乗り換えた王子から卒業パーティで婚約破棄を宣告される。 更には父に金で釣った愛人付きのろくでなし貧乏男爵と婚姻させられてしまった。 「なんて悲惨だ事」「聖女と王子妃候補から落ちぶれた男爵夫人に見事に転落なされたわね」 妬んでいた者達から陰で嘲られたリーチェではあるが実は誰にも言えなかった事があった。 神聖魔力と引き換えに「前世の記憶」が蘇っていたのである。 著しくメンタル強化を遂げたリーチェは嫁ぎ先の義理の娘を溺愛しつつ貴族社会を生きていく。 注)主人公のお相手が出て来るまで少々時間が掛かります。ファンタジー要素強めです。終盤に一部暴力的表現が出て来るのでR-15表記を追加します。 ※小説家になろうの方にも掲載しています。あちらが修正版です。

あなたに愛や恋は求めません

灰銀猫
恋愛
婚約者と姉が自分に隠れて逢瀬を繰り返していると気付いたイルーゼ。 婚約者を諫めるも聞く耳を持たず、父に訴えても聞き流されるばかり。 このままでは不実な婚約者と結婚させられ、最悪姉に操を捧げると言い出しかねない。 婚約者を見限った彼女は、二人の逢瀬を両親に突きつける。 貴族なら愛や恋よりも義務を優先すべきと考える主人公が、自分の場所を求めて奮闘する話です。 R15は保険、タグは追加する可能性があります。 ふんわり設定のご都合主義の話なので、広いお心でお読みください。 24.3.1 女性向けHOTランキングで1位になりました。ありがとうございます。

ときめき恋々物語 ~平安美人/平成美人~

秋吉美寿
ファンタジー
その時、私、大多扶久子(おおたふくこ)は何が起こったのか全く分かってはいなかった。 だって、そうでしょう? まさか今いる此処が『平成』ではなく『平安』っぽい異世界だったなんて! そんなの漫画かドラマでしか思いつかないよ!しかもなんか微妙に?いや、けっこう歴史と違うっぽいし? *** 修学旅行で私と親友の亜里沙は十二単体験が出来て写真も撮れるという『泡沫夢幻堂』という古い写真館に来ていた。 その時、起きた大きな地震!建物は崩れ私達は離れ離れになりお互いを探し合った。 そして気が付くと私のまわりには沢山の平安装束の公達や女房たちが!え?こんなに撮影のお客さんっていたっけと首を傾げる。 どうも様子がおかしい。 なんと!その世界は平成の世ではなく平安っぽい異世界だったのである!まさかのタイムスリップと思いきや?パラレルワールド?そして何とぽっちゃり残念女子の私が『絶世の美女』でアイドル顔負けの真理亜が『不細工』って一体なんの冗談なのか? わらわらと寄ってくる下膨れのなまっちろい貴族男子に興味はございません!えっ?あれが美男子?堪忍してくれ! えっ?あの美しくて男らしい公達(素敵男子)が不細工なの?え?惚れてもいいですか? *** てな感じの、そんなこんなのドタバタラブコメ平安っぽい?異世界ファンタジー!

【完結】せっかくモブに転生したのに、まわりが濃すぎて逆に目立つんですけど

monaca
恋愛
前世で目立って嫌だったわたしは、女神に「モブに転生させて」とお願いした。 でも、なんだか周りの人間がおかしい。 どいつもこいつも、妙にキャラの濃いのが揃っている。 これ、普通にしているわたしのほうが、逆に目立ってるんじゃない?

逆ざまぁされ要員な僕でもいつか平穏に暮らせますか?

左側
BL
陽の光を浴びて桃色に輝く柔らかな髪。鮮やかな青色の瞳で、ちょっと童顔。 それが僕。 この世界が乙女ゲームやBLゲームだったら、きっと主人公だよね。 だけど、ここは……ざまぁ系のノベルゲーム世界。それも、逆ざまぁ。 僕は断罪される側だ。 まるで物語の主人公のように振る舞って、王子を始めとした大勢の男性をたぶらかして好き放題した挙句に、最後は大逆転される……いわゆる、逆ざまぁをされる側。 途中の役割や展開は違っても、最終的に僕が立つサイドはいつも同じ。 神様、どうやったら、僕は平穏に過ごせますか?   ※  ※  ※  ※  ※  ※ ちょっと不憫系の主人公が、抵抗したり挫けたりを繰り返しながら、いつかは平穏に暮らせることを目指す物語です。 男性妊娠の描写があります。 誤字脱字等があればお知らせください。 必要なタグがあれば付け足して行きます。 総文字数が多くなったので短編→長編に変更しました。

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

処理中です...