【完結】ここって天国？いいえBLの世界に転生しました

96.ダン視点2

「息子のダンです」

父にそう紹介されると、私に会いたいと言った小さな女の子のマリー様を見下ろす。

可愛らしい幼い顔にキラキラとした瞳、嬉しそうに上がる口角に私は眩しくて目を逸らしそうになる。

王子とマリー様は顔見知りなのか気軽に楽しそうに会話をしている。

そんな二人から一歩離れて立っているとあまりに違う世界の二人に何故自分が呼ばれたのかと気持ちが沈んできた。

王子が早速お茶を飲みながら話そうと言うとソファーに座る。

マリー様も腰掛けようとして、ふと私の方を見た、そして何故私が立っているのかと問いかける。

そりゃそうだろう、私はこの二人とは全然違う。

眩しすぎる二人から目を逸らし、自分は座る価値など無いことを伝えると…

「なら私も！」

マリー様がそんなのはおかしいと私の隣に立たれた。

「えっ？」

マリー様の行動に驚いていると、どうやら一人だけ立っていることが嫌なようだった。

私とマリー様が並び二人で立っていると王子が私が座るのを許可してくださった。

そしてお互いに自己紹介をしようと言ってくる、王子はご自分の事を話され甘い物が好きだと言うと次は自分の番がきた。

しかし二人に何か話す事など何もない…自分の事なのに何もわからなかった。

その事が恥ずかしく下を向くと突然マリー様が悲鳴をあげた。

驚く私達を見ると突然私の方を真っ直ぐに見つめる。

そして手を掴むと自分は自分でいいと言われた。

父のようになりたいと言った私に自分らしく好きな事をしろと…

臆病な自分の人の顔色ばかり伺う事を長所のように言ってくださった。

そしてその強さで守りたいモノを守れと…

自分は価値がある者だと言われてるような気がした。

守りたいモノ…それがこの小さい手だとしても？

柔らかく小さな手で自分のゴツゴツした手を握りしめてくれる。

自分よりはるかに弱そうな方なのに自分を守るように包み込んでくれる手に安堵する。

守られるとはこんなにも安心して心地がいいのか…私もこんな気持ちを与えられる人になりたい。

大きなキラキラとした自分を見上げるその子の瞳には今までオドオドとしていた自分とは違う強い意志を持った自分がいた。

これがなりたかった自分だ、それはちゃんと自分の中にあったんだ。

ダンはその事を教えてくれた小さな女の子に感謝してその手を握り返した。