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55.言い分

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「はぁ…君の言い分はわかった…」

ジェラートは首を振ってため息をつくと、シリルを見つめた。

その様子にラクターは満足そうに笑った。

ジェラート様は昔から優秀な方で自分を見出し、ご子息の家庭教師に抜擢してくれた方だった。

その後もテオドール様は自分のおかげでどんどんその才を発揮し優秀な子へとなったのだ!

その自信が自分にはあった!

テオドール様があそこまで優秀になったのは自分が面倒を見てから数年経った時だった…

最初は無口で覇気のない子だと思っていたがある時から人が変わったかの様に素晴らしい成長を見せたのだ!

自分の言葉に時折見せる笑顔…あれは私が引き出したのだ!

それをジェラート様も知っているはず!

だから自分の言葉を信じてくれる。

そう思い期待を込めた瞳で見つめていると…

「はぁ…君には心底ガッカリしたよ」

ジェラートは深いため息と共にラクター先生を見つめた。

「え?」

ラクターは自分の思っていた展開と違うことに戸惑った。

「え?あれ?ジェラート様?私の話を聞いていましたか?」

「ああ、しっかりと聞かせてもらったよ。私の子供達を侮辱したことをね…」

ジロっと睨みつけた。

「で、ですがテオドール様があそこまで育ったのは…私のおかげでは?」

「は?君のおかげ?何処がだ!?」

ジェラートは驚いて声を荒らげてラクターを見つめた!

隣ではシリルがやれやれと呆れている。

「だ、だって…あんなに勉強が嫌いなテオドール様が進んで勉強するようになったのは私が……」

「そんなわけないだろ…君のせいでテオドールは勉強嫌いになったのに…それを救ってくれたのはフローラとマリーだ。君では断じて無い!」

ジェラートはキッパリと言い切った。

「だと思った…」

シリルが隣でボソッとつぶやくとラクターがキッ!とシリルを睨みつける。

「あの子が私に心を開いてくれたのも進んで勉強するようになったのもマリー達のおかげだ。それは本人からも聞いている」

ジェラートがそう言うと

「はい!僕もお兄様からそう聞いています。マリーの為に自分はもっと強く、もっと優秀にならなくてはならないと…その為なら嫌いな人にも優しくできるとも…」

「そ、そうか…」

ジェラートは息子の成長に苦笑してしまう。

「マリー…様…あんな文字もかけない子に?」

ラクター先生が唖然とすると

「それだけど本当なのかい?マリーは幼いながらもすぐに喋れる事もできたし…人の気持ちを敏感に感じる。決して頭が悪いとは思えないが…」

ジェラートは疑うようにラクターを見つめた。

「まるで私が嘘をついているとでも!?なら確かめて見てください!あの子がどれだけ出来ない子なのか!」

ラクター先生はハァハァと息を荒らげ肩を揺らした。

「それは…先生が何も教えないからじゃ…」

シリルが言うと

「いいえ!ちゃんと教材を渡して課題も出しました!あなたならそれで出来ますよね?」

ラクターの言葉にシリルが黙る…確かに自分ならそれで理解できるかもしれないが…

二人の様子にジェラートは手を組むと…

「マリーを呼んできてくれるか?」

ずっと黙って話を聞いてそばに立っていたトーマスに話しかけた。
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