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35.夢

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テオドールを真ん中にマリーとシリルの三人で大きなベッドの上で川の字に眠ってしまった。

それをジェラートとフローラは嬉しそうに見つめて一人一人にキスを落とし布団をかけてあげた。

従者達に話を聞けばお風呂でシリルが不安そうにしてる所にマリーがちょっかいを出してそのままテオドールも巻き込みみんなでお湯を掛け合い遊んでいたという…

それを聞いた時は本当に残念でため息が出た…

なぜそんな可愛い場面に私を呼ばなかったのかと…

三人が無邪気に遊ぶ姿…見たかった。

悔やんでいると…フローラが笑って体を寄り添い声をかける。

「これからいくらでもそんな場面を見ることができますわ、だってみんなこんなにも優しくてお互いが好きなんですもの…」

三人を見るとマリーもシリルも慕うようにテオドールの服を掴んだまま寝ている。

「そうだね」

寄り添うフローラの肩をさらに自分の方に抱き寄せる。

「私はなんて幸せなんだろう…優しくて美しい妻に可愛らしく仲のいい子供達…これ以上の幸せがあるのだろうか…」

「ふふ…きっとこの子達の成長がさらに幸せを呼んでくれますよ」

「成長か…」

それは楽しみでもあり寂しくもあった。

「この子達が成長しても…私の事は構ってくださいね…」

フローラの少しいじけるような言い方に胸が締め付けられる。

「もちろんだ…嫌だと言ってももう手放す気はないよ?」

フローラは返事はしなかったが嬉しそうに笑うと頭を預けるように胸に押し当てた。

ジェラートはそれを了承と受けるとる。

子供達におやすみのキスをするとジェラートはフローラを抱き上げて部屋を出ていった。

その夜マリーはまた夢をみた。

成長したお兄様とシリルが私を睨みつける。

その隣には顔のよく見えない主人公の男の子が怯えるように泣きなが二人に支えられていた。

「マリー!○○に謝るんだ!」

テオドールお兄様が私に怒鳴りつける!

お兄様に怒鳴りつけられた事のなかった私は驚き身がすくむ。

しかしこのマリーは扇を口元に当てて不敵に笑った。

「私なんにも間違った事は言っておりません。こんな下賎な生まれの方に謝る意味がわかりませんわ」

相変わらず嫌な女だ…みんなに嫌われるのもわかる。

「大丈夫…」

どうやら主人公の子が下賎な生まれらしい泣いてるその子にシリルが優しく寄り添っていた…

あんなに怯えていたシリルが人を思いやれる子に成長している!

それがなんだか嬉しかった…

しかしその顔が歪むとマリーを睨みつける。

可愛い幼い顔が男の顔になった。

やだ…シリル可愛いだけじゃなくてカッコイイんだ…

睨まれていることなど忘れてその表情に見とれていると

「本当に妹ながら恥ずかしい…もうきょうだいと名乗るのさえ不愉快だ…」

テオドールお兄様も冷徹な眼差しを送ってきた。

その顔にゾクッとする…

お兄様…あんなクールな表情で…でも王子の前ではその顔が熱く萌えるんですね!

うっとりとしていると

「何を笑っている!」

「別に…恥ずかしいのはどっちかしら…男同士で全く理解できないわ…」

マリーの言葉に頭に血が上る!

全くこの女はわかってない!男同士で愛し合うからこその恥じらい…葛藤、禁断…その先に生まれる真実の愛に尊さがあるんだ!

はぁ!はぁ!

怒りのあまりに夢なのに息があがった。

しかしマリーの中にいる私の声は届かない…

クソ…絶対にテオドールお兄様とシリルを幸せにしてみせるんだから!

私はあの笑顔が見れるなら…と固く拳を握りしめた。




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