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32.散髪
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「一緒に…」
テオドール兄様はそう言うとピタリと動かなくなった。
あれ?
つんつん…腕をつつくが反応がない?
「おとうさま?」
私はなんで?とお父様に助けを求めるように見つめた。
「どうしたのかな?まぁ疲れたのかもしれないね…誰かテオドールを部屋に連れて行ってあげてくれ。マリーとシリルは…」
私達を見下ろすとがっちりと繋いだ手に目がいったようだ。
「じゃあ一緒に風呂に入ってしまおうか?でも先にシリルは髪を切れるかい?」
お父様が屈むと優しくシリルに目線を合わせて聞いている。
「はい…」
ビクビクしながらもシリルが頷いた。
「だいじょぶよーいっしょにいるからね」
そんな不安そうなシリルの手をぎゅっと握ってあげると唯一見える口元がほっとしたように笑った。
そうして私達はメイドさんや従者さんに連れられてお風呂場へと移動すると…
「ではマリー様はこちらに…シリル様はここで先に髪を切りましょうね」
椅子を用意されてされるがままに座らされる。
シリルは抵抗すること無く大人しくしているが見ると体が微かに震えていた。
「リアズ…わたしシリルのそばにいていい?」
服を脱がそうとしているリアズにお願いをすると…
「仕方ありませんね…どうぞ」
笑ってシリルの隣に同じように椅子を置いてくれた。
「ありがとう!リアズ」
ニコッと笑ってお礼を言うとリアズの顔も綻んだ。
これは怒ってないね!
リアズは私を抱き上げて椅子に座らせてくれると…
「はい!シリル」
私は手をシリルの方へと差し出した!
シリルが恐る恐る私の手にそっと指先を触れるとチャンスとばかりにその手をぎゅっと握りしめた。
「はやくきっておふろはいろー」
笑いかけると微かに頷く。
「では失礼しますね、シリル様痛かったら言ってくださいね」
髪を切る従者が優しく声をかけた、しかしシリルは何も答えずに大人しくしてる。
「ん、ここが絡まってるな…」
伸び放題でお風呂にも入ってなかったような髪はクシが通るのもやっとで切るのにも苦戦していた。
時折シリルが手を強く握り返してくる。
「シリル…いたい?」
少し心配になって顔を覗き込むと
ブンブンと頭を振ってしまった!
「危ない!」
髪を切ってきた従者がハサミを慌てて引くとその拍子に指を少し切ってしまった!
「いった…」
指先からポタッと血が垂れた…
「あっ…ああ…あぁぁぁ!!」
シリルはその血を見て顔を真っ青にすると叫び出した!
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!もうしませんおとなしくします」
ガタガタと震える…
「だ、大丈夫です!シリル様!」
従者が平気だと声をかけるがその声はシリルには届いていないようだった。
「シリル!!だいじょぶよー!」
こんな時は抱きしめるに限る!
私は怯えて震えるシリルの体をそっと抱きしめてあげた。
テオドール兄様はそう言うとピタリと動かなくなった。
あれ?
つんつん…腕をつつくが反応がない?
「おとうさま?」
私はなんで?とお父様に助けを求めるように見つめた。
「どうしたのかな?まぁ疲れたのかもしれないね…誰かテオドールを部屋に連れて行ってあげてくれ。マリーとシリルは…」
私達を見下ろすとがっちりと繋いだ手に目がいったようだ。
「じゃあ一緒に風呂に入ってしまおうか?でも先にシリルは髪を切れるかい?」
お父様が屈むと優しくシリルに目線を合わせて聞いている。
「はい…」
ビクビクしながらもシリルが頷いた。
「だいじょぶよーいっしょにいるからね」
そんな不安そうなシリルの手をぎゅっと握ってあげると唯一見える口元がほっとしたように笑った。
そうして私達はメイドさんや従者さんに連れられてお風呂場へと移動すると…
「ではマリー様はこちらに…シリル様はここで先に髪を切りましょうね」
椅子を用意されてされるがままに座らされる。
シリルは抵抗すること無く大人しくしているが見ると体が微かに震えていた。
「リアズ…わたしシリルのそばにいていい?」
服を脱がそうとしているリアズにお願いをすると…
「仕方ありませんね…どうぞ」
笑ってシリルの隣に同じように椅子を置いてくれた。
「ありがとう!リアズ」
ニコッと笑ってお礼を言うとリアズの顔も綻んだ。
これは怒ってないね!
リアズは私を抱き上げて椅子に座らせてくれると…
「はい!シリル」
私は手をシリルの方へと差し出した!
シリルが恐る恐る私の手にそっと指先を触れるとチャンスとばかりにその手をぎゅっと握りしめた。
「はやくきっておふろはいろー」
笑いかけると微かに頷く。
「では失礼しますね、シリル様痛かったら言ってくださいね」
髪を切る従者が優しく声をかけた、しかしシリルは何も答えずに大人しくしてる。
「ん、ここが絡まってるな…」
伸び放題でお風呂にも入ってなかったような髪はクシが通るのもやっとで切るのにも苦戦していた。
時折シリルが手を強く握り返してくる。
「シリル…いたい?」
少し心配になって顔を覗き込むと
ブンブンと頭を振ってしまった!
「危ない!」
髪を切ってきた従者がハサミを慌てて引くとその拍子に指を少し切ってしまった!
「いった…」
指先からポタッと血が垂れた…
「あっ…ああ…あぁぁぁ!!」
シリルはその血を見て顔を真っ青にすると叫び出した!
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!もうしませんおとなしくします」
ガタガタと震える…
「だ、大丈夫です!シリル様!」
従者が平気だと声をかけるがその声はシリルには届いていないようだった。
「シリル!!だいじょぶよー!」
こんな時は抱きしめるに限る!
私は怯えて震えるシリルの体をそっと抱きしめてあげた。
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