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「どうやらその顔はわかってきたようだな」
陛下の言葉にロレッタはしっかりと陛下を見つめ返した。
「私の甘い態度のせいで彼等にこのような愚行を重ねさせてしまいました」
悔やむように拳を膝の上で握りしめた。
「それは違う、奴らはきっと誰の言葉も聞かなかっただろう。現に国王が聞かなかったのだ誰にも止められまい」
陛下は呆れたように答えた。
「そうだ、ロレッタはあの国で出来ることをした」
フレッドもそれに同意すると、ロレッタの固く握りしめた拳をそっと上から触る。
「しかし、これからは違う。お前達が国の上に立つのだ。しかしそうなるとお前達の判断や行為が幾人もの命を奪う事になる事をよく覚えておけ」
陛下の言葉には重みがあった。
フレッドとロレッタはこくりと頷く。
「そこでは甘さがあってはならない、肉親だからこそ切り捨てなければいけない時が来る。だからこそ君にはあの妹をどう捌くか見たかった」
「ではもし、ロレッタが見捨てられなかったら?」
「その時はお前には相応しくないと彼らと一緒にお帰りいただいていただろう」
陛下はニヤリと笑う。
その顔にフレッドはフーっと安心したように息を吐いた。
「君の罰は国に帰って彼等をまず裁くことだ。それをしっかりと国民に見せて君らの決意と力を教えてやれ」
「一度無くした信頼を取り戻せるでしょうか…」
ロレッタは不安そうにする。
「そのような自信のない顔をしていたら駄目だろうな。王は常に自信に溢れていないとならん、不安な王に誰がついて行きたいと思う?」
「そう…ですね」
「あの馬鹿は自信だけは立派だったな」
フレッドがロレッタを和ませようと冗談を言うと、ロレッタは驚いた顔をした後に笑いが込み上げてきた。
「ふふ、確かにそうだったかも知れません…そこだけは見習ってもいいですね」
「それ以外は見習わないでくれよ」
「はい」
ロレッタは肩の力を抜いてふっと笑った。
「まぁお前達はちょうどいい組み合わせのようだな。フレッドに足りないものをロレッタが補い、ロレッタに無いものをフレッドが与える。そんな関係の者に会える事は奇跡に等しいぞ」
フレッドとロレッタはお互いを見合うと陛下の言ってる意味がよくわかった。
お互い完璧な人間では無い、それは自分がよくわかっていた。
でも二人で居ればそれもいいと思えた。
「はい、この偶然の出会いに感謝致します」
「偶然ではない、これは運命だ」
フレッドはロレッタの手を両手で包み込み見つめあった。
「おっほん…」
シドが咳払いするとロレッタはポーっとなっていた顔を引き締めて手を離した。
「すみません…」
「お前達はお互いの事になると少し周りが見えなくなるのも玉に瑕だな」
陛下はヤレヤレと頭を抱えて苦笑した。
陛下の言葉にロレッタはしっかりと陛下を見つめ返した。
「私の甘い態度のせいで彼等にこのような愚行を重ねさせてしまいました」
悔やむように拳を膝の上で握りしめた。
「それは違う、奴らはきっと誰の言葉も聞かなかっただろう。現に国王が聞かなかったのだ誰にも止められまい」
陛下は呆れたように答えた。
「そうだ、ロレッタはあの国で出来ることをした」
フレッドもそれに同意すると、ロレッタの固く握りしめた拳をそっと上から触る。
「しかし、これからは違う。お前達が国の上に立つのだ。しかしそうなるとお前達の判断や行為が幾人もの命を奪う事になる事をよく覚えておけ」
陛下の言葉には重みがあった。
フレッドとロレッタはこくりと頷く。
「そこでは甘さがあってはならない、肉親だからこそ切り捨てなければいけない時が来る。だからこそ君にはあの妹をどう捌くか見たかった」
「ではもし、ロレッタが見捨てられなかったら?」
「その時はお前には相応しくないと彼らと一緒にお帰りいただいていただろう」
陛下はニヤリと笑う。
その顔にフレッドはフーっと安心したように息を吐いた。
「君の罰は国に帰って彼等をまず裁くことだ。それをしっかりと国民に見せて君らの決意と力を教えてやれ」
「一度無くした信頼を取り戻せるでしょうか…」
ロレッタは不安そうにする。
「そのような自信のない顔をしていたら駄目だろうな。王は常に自信に溢れていないとならん、不安な王に誰がついて行きたいと思う?」
「そう…ですね」
「あの馬鹿は自信だけは立派だったな」
フレッドがロレッタを和ませようと冗談を言うと、ロレッタは驚いた顔をした後に笑いが込み上げてきた。
「ふふ、確かにそうだったかも知れません…そこだけは見習ってもいいですね」
「それ以外は見習わないでくれよ」
「はい」
ロレッタは肩の力を抜いてふっと笑った。
「まぁお前達はちょうどいい組み合わせのようだな。フレッドに足りないものをロレッタが補い、ロレッタに無いものをフレッドが与える。そんな関係の者に会える事は奇跡に等しいぞ」
フレッドとロレッタはお互いを見合うと陛下の言ってる意味がよくわかった。
お互い完璧な人間では無い、それは自分がよくわかっていた。
でも二人で居ればそれもいいと思えた。
「はい、この偶然の出会いに感謝致します」
「偶然ではない、これは運命だ」
フレッドはロレッタの手を両手で包み込み見つめあった。
「おっほん…」
シドが咳払いするとロレッタはポーっとなっていた顔を引き締めて手を離した。
「すみません…」
「お前達はお互いの事になると少し周りが見えなくなるのも玉に瑕だな」
陛下はヤレヤレと頭を抱えて苦笑した。
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