上 下
60 / 177

59.

しおりを挟む
エイトはみんなが寝た夜にこっそりと起きると…音を立てないように立ち上がる。

ラルクおじさん達から離れようとすると…

「どうした…」

おじさんが目も開けずに声をかけた…

「起こしちゃった?」

エイトがごめんと眉を下げると

「いや…気配でな、それでどこ行くんだ」

「ト、トイレだよ…」

エイトが言うと

「あんまり遠くに行くなよ」

それだけラルクは再び寝息をたてた…

エイトはホッと息をはくと…目的の場所へと向かった。

エイトは木の影から様子を伺うと…暗闇に呻き声が聞こえる。

血の匂いを嗅ぎつけて来たのか近くに魔物も気配もしていた。

「や、やばい…体が…」

「助けて…」

そこには盗賊達が身動き取れずに呻いていた。

「あ、足が…」

「おい…退いてくれ…くる…しい…」

下敷きになっているやつは息も絶え絶え声を出すと

「動けねぇんだ…俺達はここまでだな…魔物も寄ってきたし…食われて終わりだ」

もう諦めかけている者もいた。

エイトはグッと決心すると、盗賊のそばに火を灯す。

すると盗賊達は驚いてエイトを見ると…

「な、何しにきやがった…」

「ひぃ!」

ギャイギャイ騒ぐ盗賊達を無視してエイトは火をつけると魔物避けを置く。

「これで魔物は寄ってこないよ」

そう言うと盗賊達に近づき

「よいしょ…」

盗賊達を一人一人運んで木や岩などに寄りかからせて座らせた。

「な、何しやがる!」

盗賊達が警戒していると

「はいこれ適当に木とツル取ってきたから折れてる所を固定してね」

自分で出来そうな人にはポイっと渡して無理そうな人のはエイトが簡単に固定してやった。

「おじさんはちょっと酷いから…」

エイトは自分が傷つけた盗賊の頭を見ると眉を下げた…

その顔を見て頭は顔を逸らす。

「お前がやったんだろ…そんな顔するな!俺が惨めじゃねぇか…」

「ご、ごめんなさい。とりあえず手当だけするね…」

嫌がる頭を抑えながらエイトがサッと布を巻くと…

「なんでこんな事する…俺達はお前を殺そうとしたんだぞ…」

「でも僕死んでないし…それにこれで死なれちゃったらなんか嫌だからさ」

「そんな甘ちゃんでやっていけるのか?」

思わず盗賊も心配してしまうお人好しだった…

「うーん…わかんない」

昨日のラルクに殺す覚悟をしろと言われたがエイトにはまだその覚悟がなかった…

「わかんないって…お前そんなに強いのにもったいないなぁ」

「僕って強いの?」

「強いだろ!少なくとも俺よりは…」

「そっか…じいちゃんにもおじさんにも全然敵わないからなぁ…」

「お前が敵わないって…」

「俺達喧嘩する相手間違えたな」

「もういい、あとは好きにしろ肉なり焼くなり」

手当も終えて盗賊達が武器を投げ捨てる。

「えっ…別に僕、人は食べないよ…食べるなら魔物の肉が美味しいよね!」

エイトはそう言うとスープのあまりをどんと取り出す。

「これいっぱい余ったからよかったら食べてね…あっもうおじさんが心配するかも、僕の事は内緒にしてね!」

エイトはそれだけ言うと唖然としている盗賊達を無視してラルクの元に戻った。

音を立てずにラルクの隣に戻ると…

「遅かったな…」

ラルクが声をかける。

「ご、ごめんなさい…」

エイトがあやまると

「別に怒ってないぞ、心配しただけだ…長いトイレだったな」

暗闇のなか月明かりでうっすらと笑うラルクの顔が見えると

「な、なんか寂しくてね…」

誤魔化す為にそう言うとラルクがエイトを抱きしめた。

「じゃあこうすりゃ寂しくないか?」

「う、うん…温かい」

エイトはラルクの温もりにすぐに眠りについてしまった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。 異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。 途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。 しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。 その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

処理中です...