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15.三兄弟

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「な、なにか?」

カイン様の表情に私は不安になって聞いてみた。

「別に……でもさなんで急にこんな歳の離れた子を養子にしたのさ?」

カイン様はアンジェリカ様に問いかけた。

「なぁに、カインが一番喜んでいると思ったのに嬉しくないの?」

「この歳になって妹なんて……」

カイン様がちらっとこちらをみて顔を逸らした。

やはりみんなに歓迎される訳では無い、覚悟はしていたが辛かった。

なるべく表情に出さないように笑顔を見せるが上手くいかなかった。


「おい!カインのせいでマリルが泣きそうになってるじゃないか!」

「こいつ!」

ヨハン様とイアン様がカイン様の頭とおしりに拳を叩きつけた。

「何するんだよ!」

カイン様が2人を睨みつける。

「もう、兄弟喧嘩はやめなさい!マリルちゃんが困惑するでしょ」

アンジェリカ様が私を慰めるようにそばに来てくれた。

「マリルちゃんごめんね。カインは性格が難しい子だから、本当は妹が出来てすごく嬉しいのよ」

アンジェリカ様の言葉にカイン様が顔を赤くした。

「確かにカインは小さい頃妹が欲しいって母さんにずっと頼んでたな」

「あー言ってた。下が欲しいって確かクリスマスにも頼んでなかった?」

ヨハン様とイアン様の言葉にカイン様はこれ以上赤くならないほど真っ赤になる。

「ち、違う!ぼ、僕は妹……が欲しかったけどその兄と呼ばれたくて……とかじゃなくて」

しどろもどろになっている。

するとヨハン様が私のそばに来て耳打ちした。

「マリルちゃん、あいつにカインお兄様って呼んでみな」

えっ?とヨハン様を見るといい笑顔で頷いていた。

「カイン……お兄様、至らない妹ですがこれからよろしくお願いいたします」

私がそういうとカイン様の頬が緩んだ。

しかしすぐに顔を引き締める。

「う、うん、まぁ妹になった以上僕の事を兄と思って頼っていいからね。事実あの二人より頼りになるからね」

「こいつ!」

「いい加減にしろ!」

カイン様の言葉にヨハン様とイアン様が襲いかかった。

いい大人の兄弟喧嘩が面白くてクスクスと笑ってしまう。

「もう、あなた達妹に笑われてるわよ。兄弟喧嘩ばかりしてたら呆れられるわよー」

アンジェリカ様の言葉に三人はピタッと喧嘩をやめた。

「すごく仲が良くて羨ましいです。私、お兄様達の妹になれて幸せです」

本当にそう思って出た言葉にお兄様達はニコニコとご機嫌になって喧嘩をやめてくれた。

「すごいわマリルちゃん!三馬鹿の兄弟喧嘩を一発で止めさせたわ!」

アンジェリカ様は変なことに感激している。

ミコラス様もマリエル様も賑やかな様子に楽しそうに笑っている。

急に出来た家族だったがここなら私の居場所が出来るかもしれないと嬉しくて仕方なかった。


みんなが揃った事だしと、早速食事にする。
マナーは大丈夫かと緊張したがお兄様達が私にあれやこれやと料理を勧めてくれてマナーなど気にしない楽しい食事となった。
そして食事の後はみんなでゲームをしながらさらに親睦を深めた。

ヨハンお兄様とイアンお兄様は今度騎士団に遊びにおいでと誘ってくれる。

カインお兄様は勉強を見せくれると約束してくれた。

たくさん話しているといつの間にか夜遅くになり、お兄様達は自分の寮に帰る時間となってしまった。

外まで見送りに行きながら、先程までの賑やかさになんか寂しくなってしまう。

「じゃあねマリル、また来るよ」

「いつでも声掛けなね」

「そ、そうだよ。僕らは兄なんだから」

優しい三人のお兄様に私は手を振った。

「お兄様達ありがとうございます。お帰り気をつけてくださいね。また、また絶対に来てくださいね」

寂しくて何度も何度も手を振った。

「うん、明日すぐ帰るから」

「俺も」

「僕も」

3人は真顔で明日も必ず来ると約束する。

「え?」

騎士団員だしそんなに頻繁に戻って来れないんじゃ……
そんな心配をしていたがお兄様達はそれから毎日の様に帰ってくることになるとはこの時思いもしなかった。
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