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3.新しい仕事場
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「今日からお世話になるマリルと申します。ラジェット先生の紹介で来ました」
私は門番にそう言って頭を下げるとニコッと顔をあげた。
前の職場では少し子供っぽい感じが少なくて気味悪がれた。
なのでここでは年相応の振る舞いを心がけようと決めていた。
大きな体の門番達は私を見て目を合わす。
「えっと下働きかな?それなら正門じゃなくて裏門に回ってくれるか」
「あっ!」
なるほどそりゃ働く人がこんな立派な門を使うわけないか…
私は目の前に建つ大きな門の先にある巨大な建物を見上げた。
ラジェット先生の紹介で来たのは貴族の家の使用人の仕事だった。
こんな身元も分からない子供がそんなところで働けるのかと思ったがどうも訳ありのようでどんな子でも構わないからと募集がかかっていた。
貴族の下で働けると最初は人気の案件だったが、働く人働く人みんなすぐに辞めてしまい今では訳ありと誰も仕事を受けないでいたらしい。
内容を聞いてみると病気の子供のお世話係を探しているとの事。
病院で少しだが働けたので手当ての心得は少しはわかっていた。
どんな子でも大丈夫!
私は二つ返事でその仕事を受けることにしたのだ。
門番さんに聞いて裏門に回ると厳重な扉の裏門が見えた。
トントンっとノックすると覗き穴が開いて名前を聞かれる。
先程のように自己紹介すると門が開いた。
「話は聞いている、こっちだ」
門番の1人が私を案内してくれた。
1番大きな立派なお城のような屋敷に向かうと思っていたが足は暗い裏手に向かう。
少し不安になっていると門番の人が話しかけてきた。
「君いくつ?こんなに小さくてあの方のお世話できるかい?」
あの方とは私がお世話をする坊っちゃまの事だろう。
「六つになりました!ラジェット先生の元で仕事は覚えましたので大丈夫です!頑張ります」
ペコッと頭を下げる。
「小さいのにしっかりしてるな…まぁ無理しないで頑張れよ」
門番さんはここだとひとつの屋敷の前で止まった。
「え?ここですか」
そこは本邸とは離れた場所でちょうど影になり日当たりも悪くなんとなく暗い雰囲気だった。
「坊っちゃまはご病気なので隔離されているんだ」
門番さんがトントンと扉を叩くと中から扉が開く。
「はい」
白髪のビシッとした執事らしき人が出てきて私と門番さんをみた。
「ラジェット先生の紹介の使用人です」
「マリルと申します」
門番さんの紹介の後に名前を言った。
「聞いてます、お入りなさい」
執事さんに促されて私は建物に足を踏み入れた。
ここで別れる門番さんはくるっと後ろを向くと…「この子は何日持つかな」とボソッと呟いた。
執事さんはグランドさんと言うらしくこの隔離塔の責任者らしく指示はグランドさんに仰ぐとの事。
塔の中を簡単に案内されて最後に私がお世話をする坊っちゃまの部屋へと向かうことになった。
「坊っちゃまのお名前はわかりますか?」
「は、はい!ブライアン侯爵家の長男のアーロン様です、御歳は七つで二つ下に弟君のサミュエル様がいらっしゃいます」
事前にラジェット先生から聞いておいた事を伝える。
するとグランドさんがピタッと立ち止まった。
「え!?」
ドンッ!
グランドさんの長い足に私は顔からぶつかってしまった。
「す、すみません。失礼致しました」
私は慌てて謝罪するがグランドさんからの反応がない。
少しするとグランドさんから声がかかった。
「顔をあげなさい」
私は恐る恐る顔を上げるとグランドさんがじっと私を見つめていた。
値踏みするように下から上までじっくりと見られる。
「あなたの名前は?」
「わ、私はマリルと申します」
「歳は」
「今年六つになったばかりです」
「六つ…」
グランドさんは顎に手を当てて考え込んでしまった。
「ここで働くなら詐称は罪になりますが今の答えに偽りはありませんか?」
「あ、ありません!」
私は慌てて首を振った。
「うむ、ラジェット先生の紹介でそんな事は無いか」
グランドさんは納得したのかまた歩き出した。
私はなんだとパニックになったが慌てて後を追った。
私は門番にそう言って頭を下げるとニコッと顔をあげた。
前の職場では少し子供っぽい感じが少なくて気味悪がれた。
なのでここでは年相応の振る舞いを心がけようと決めていた。
大きな体の門番達は私を見て目を合わす。
「えっと下働きかな?それなら正門じゃなくて裏門に回ってくれるか」
「あっ!」
なるほどそりゃ働く人がこんな立派な門を使うわけないか…
私は目の前に建つ大きな門の先にある巨大な建物を見上げた。
ラジェット先生の紹介で来たのは貴族の家の使用人の仕事だった。
こんな身元も分からない子供がそんなところで働けるのかと思ったがどうも訳ありのようでどんな子でも構わないからと募集がかかっていた。
貴族の下で働けると最初は人気の案件だったが、働く人働く人みんなすぐに辞めてしまい今では訳ありと誰も仕事を受けないでいたらしい。
内容を聞いてみると病気の子供のお世話係を探しているとの事。
病院で少しだが働けたので手当ての心得は少しはわかっていた。
どんな子でも大丈夫!
私は二つ返事でその仕事を受けることにしたのだ。
門番さんに聞いて裏門に回ると厳重な扉の裏門が見えた。
トントンっとノックすると覗き穴が開いて名前を聞かれる。
先程のように自己紹介すると門が開いた。
「話は聞いている、こっちだ」
門番の1人が私を案内してくれた。
1番大きな立派なお城のような屋敷に向かうと思っていたが足は暗い裏手に向かう。
少し不安になっていると門番の人が話しかけてきた。
「君いくつ?こんなに小さくてあの方のお世話できるかい?」
あの方とは私がお世話をする坊っちゃまの事だろう。
「六つになりました!ラジェット先生の元で仕事は覚えましたので大丈夫です!頑張ります」
ペコッと頭を下げる。
「小さいのにしっかりしてるな…まぁ無理しないで頑張れよ」
門番さんはここだとひとつの屋敷の前で止まった。
「え?ここですか」
そこは本邸とは離れた場所でちょうど影になり日当たりも悪くなんとなく暗い雰囲気だった。
「坊っちゃまはご病気なので隔離されているんだ」
門番さんがトントンと扉を叩くと中から扉が開く。
「はい」
白髪のビシッとした執事らしき人が出てきて私と門番さんをみた。
「ラジェット先生の紹介の使用人です」
「マリルと申します」
門番さんの紹介の後に名前を言った。
「聞いてます、お入りなさい」
執事さんに促されて私は建物に足を踏み入れた。
ここで別れる門番さんはくるっと後ろを向くと…「この子は何日持つかな」とボソッと呟いた。
執事さんはグランドさんと言うらしくこの隔離塔の責任者らしく指示はグランドさんに仰ぐとの事。
塔の中を簡単に案内されて最後に私がお世話をする坊っちゃまの部屋へと向かうことになった。
「坊っちゃまのお名前はわかりますか?」
「は、はい!ブライアン侯爵家の長男のアーロン様です、御歳は七つで二つ下に弟君のサミュエル様がいらっしゃいます」
事前にラジェット先生から聞いておいた事を伝える。
するとグランドさんがピタッと立ち止まった。
「え!?」
ドンッ!
グランドさんの長い足に私は顔からぶつかってしまった。
「す、すみません。失礼致しました」
私は慌てて謝罪するがグランドさんからの反応がない。
少しするとグランドさんから声がかかった。
「顔をあげなさい」
私は恐る恐る顔を上げるとグランドさんがじっと私を見つめていた。
値踏みするように下から上までじっくりと見られる。
「あなたの名前は?」
「わ、私はマリルと申します」
「歳は」
「今年六つになったばかりです」
「六つ…」
グランドさんは顎に手を当てて考え込んでしまった。
「ここで働くなら詐称は罪になりますが今の答えに偽りはありませんか?」
「あ、ありません!」
私は慌てて首を振った。
「うむ、ラジェット先生の紹介でそんな事は無いか」
グランドさんは納得したのかまた歩き出した。
私はなんだとパニックになったが慌てて後を追った。
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