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2.病院
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「マリル、道具を磨いておいて」
「はーい!」
私がこの病院にきて1週間が経とうとしていた。
その間に私は雑用の仕事は完璧に覚えて、助手の仕事も少し出来ようになっていた。
「マリルって凄いね」
雑用の2人は私の仕事ぶりに舌を巻いている。
最初はいい気がしなかった2人も私が仕事を回したりやり方を教えたりすると次第に心を許してくれるようになっていた。
「マリルちゃん、手当てありがとうね。これ良かったら食べて」
私は怪我の手当てをしたお姉さんからお菓子の袋をもらった。
「いいんですか!?ありがとうございます」
簡単な傷の手当てなら私がやるようになっていてたまにこうやってお菓子をもらえていた。
リズとミクロムにもあげよう!
私は道具を洗って片ずけるとお菓子を持って雑用の2人の元へと向かった。
「リズ、ミクロムお菓子もらったから食べよ」
2人は洗濯をしていたところで私の声に振り返った。
「やった!」
「マリルありがとう」
お菓子を分けると口に放り込み私も洗濯を手伝う。
「マリルは傷の手当ての仕事してたんでしょ?洗濯は私達がやるからいいよ」
2人に休めと言われるが働いている2人を無視して休めない。
「私は下働きのなんでもやる係なんだよ。それに3人でやればすぐだよ」
タライに沈んだ洗濯を3人で上からジャブジャブと踏み込む。
汚いところは手でしっかりと洗って何度かすすぎをして終わりだ。
こうして手伝うことでいい関係をきずいていた。
「マリル、先生がお呼びよ」
洗濯がひと段落したところで私は助手のミリーさんに声をかけられた。
「はい、じゃ2人とも後でね」
リズ達に抜けることを言って私は先生の元に向かうべくミリーさんの後に続いた。
ミリーさんはズンズンと不機嫌そうに前を無言で歩いている。
「あの…先生はどのような御用でしょうか?」
「.........」
ミリーさんは聞こえているはずなのに私の事を無視していた。
はぁ…
私はそっとため息をついた。
ミリーさんは幼くして自分の仕事をしている私が気に食わないようでことある事に私をいじめていた。
まぁいじめと言っても無視とか影で悪口をいう程度なので軽く流していた。
「あんまり調子に乗るんじゃないよ」
部屋に着くとミリーさんはジロっと私を睨んでここだとばかりに部屋を指さした。
「はい、ありがとうございます」
私がお礼を言うとそれも気に食わないとふんっと顔を背けて行ってしまった。
ああいう人はどんな態度をとっても気に食わないのだろう。
私は気持ちを切り替えて扉をノックした。
「マリルです」
「入りなさい」
ラジェット先生の声が聞こえて私は扉を開いた。
ラジェット先生は背を向けて仕事をしていたが私が入るとゆっくりと振り返った。
そして悲しそうに眉を下げている。
あっ…
なんとなく私は察した。
きっと良くない話を今からされるのだろう。
私はそんな顔をおくびも出さないで笑顔を見せた。
「マリル、実はね…」
ラジェット先生は初めて会った時のように優しく話し出した。
「君はよくやってくれている、仕事を覚えるのも早いし機転も利くし効率もいい」
「ありがとうございます」
「でもね、そんな君だからと気味悪るがる人もいるんだよ」
ミリーさんですね。
わかっていたが声には出さなかった。
「約束の1週間だが、よく働いてくれたから治療費はもういいよ」
「それって…ここを出ていけってことですよね」
「すまない」
ラジェット先生は本当にすまなそうに謝ってくれた。
「いいえ、先生には感謝しています。本当に今までありがとうございました」
感謝しているのは本当だ、そんな先生を困らせたくなくて私はここを去ることを決めた。
「マリルなら何処でもやって行けると思う」
「そうでしょか?それなら何かいい場所などあったら教えて頂けませんか?」
先生ならいい就職先を知っていそうだったのでダメ元で聞いてみる。
先生は少し考えた後に何か思い出した顔をするが口を噤んだ。
「先生、私どんなところでも頑張れます!」
あんなクソみたいな両親の元にいたのだ、少しくらい劣悪でも頑張れる。
私の強い思いに先生は重い口を開いた。
「はーい!」
私がこの病院にきて1週間が経とうとしていた。
その間に私は雑用の仕事は完璧に覚えて、助手の仕事も少し出来ようになっていた。
「マリルって凄いね」
雑用の2人は私の仕事ぶりに舌を巻いている。
最初はいい気がしなかった2人も私が仕事を回したりやり方を教えたりすると次第に心を許してくれるようになっていた。
「マリルちゃん、手当てありがとうね。これ良かったら食べて」
私は怪我の手当てをしたお姉さんからお菓子の袋をもらった。
「いいんですか!?ありがとうございます」
簡単な傷の手当てなら私がやるようになっていてたまにこうやってお菓子をもらえていた。
リズとミクロムにもあげよう!
私は道具を洗って片ずけるとお菓子を持って雑用の2人の元へと向かった。
「リズ、ミクロムお菓子もらったから食べよ」
2人は洗濯をしていたところで私の声に振り返った。
「やった!」
「マリルありがとう」
お菓子を分けると口に放り込み私も洗濯を手伝う。
「マリルは傷の手当ての仕事してたんでしょ?洗濯は私達がやるからいいよ」
2人に休めと言われるが働いている2人を無視して休めない。
「私は下働きのなんでもやる係なんだよ。それに3人でやればすぐだよ」
タライに沈んだ洗濯を3人で上からジャブジャブと踏み込む。
汚いところは手でしっかりと洗って何度かすすぎをして終わりだ。
こうして手伝うことでいい関係をきずいていた。
「マリル、先生がお呼びよ」
洗濯がひと段落したところで私は助手のミリーさんに声をかけられた。
「はい、じゃ2人とも後でね」
リズ達に抜けることを言って私は先生の元に向かうべくミリーさんの後に続いた。
ミリーさんはズンズンと不機嫌そうに前を無言で歩いている。
「あの…先生はどのような御用でしょうか?」
「.........」
ミリーさんは聞こえているはずなのに私の事を無視していた。
はぁ…
私はそっとため息をついた。
ミリーさんは幼くして自分の仕事をしている私が気に食わないようでことある事に私をいじめていた。
まぁいじめと言っても無視とか影で悪口をいう程度なので軽く流していた。
「あんまり調子に乗るんじゃないよ」
部屋に着くとミリーさんはジロっと私を睨んでここだとばかりに部屋を指さした。
「はい、ありがとうございます」
私がお礼を言うとそれも気に食わないとふんっと顔を背けて行ってしまった。
ああいう人はどんな態度をとっても気に食わないのだろう。
私は気持ちを切り替えて扉をノックした。
「マリルです」
「入りなさい」
ラジェット先生の声が聞こえて私は扉を開いた。
ラジェット先生は背を向けて仕事をしていたが私が入るとゆっくりと振り返った。
そして悲しそうに眉を下げている。
あっ…
なんとなく私は察した。
きっと良くない話を今からされるのだろう。
私はそんな顔をおくびも出さないで笑顔を見せた。
「マリル、実はね…」
ラジェット先生は初めて会った時のように優しく話し出した。
「君はよくやってくれている、仕事を覚えるのも早いし機転も利くし効率もいい」
「ありがとうございます」
「でもね、そんな君だからと気味悪るがる人もいるんだよ」
ミリーさんですね。
わかっていたが声には出さなかった。
「約束の1週間だが、よく働いてくれたから治療費はもういいよ」
「それって…ここを出ていけってことですよね」
「すまない」
ラジェット先生は本当にすまなそうに謝ってくれた。
「いいえ、先生には感謝しています。本当に今までありがとうございました」
感謝しているのは本当だ、そんな先生を困らせたくなくて私はここを去ることを決めた。
「マリルなら何処でもやって行けると思う」
「そうでしょか?それなら何かいい場所などあったら教えて頂けませんか?」
先生ならいい就職先を知っていそうだったのでダメ元で聞いてみる。
先生は少し考えた後に何か思い出した顔をするが口を噤んだ。
「先生、私どんなところでも頑張れます!」
あんなクソみたいな両親の元にいたのだ、少しくらい劣悪でも頑張れる。
私の強い思いに先生は重い口を開いた。
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