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第四十五話 霊峰ケイラ(3)

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「なあ、お前」

「はい?」

「結局人間というのは、どこに進もうとしとるんだ?」

「いや、そんな事を私に聞かれても・・・」

「個人的な意見で構わん。流石にそれを人間の総意だとは思わん」

「うーん」



 いきなり無茶振りが過ぎるよ。この幼女。

『人類の進む先』なんて哲学みたいな問いの答えなんて持ち合わせてないよ。

 今はともかく、元はただの一般小市民だよ?



「そうだなあ。別に何も考えてないんじゃない?」

「なんだと?」

「人間は神様じゃないからね。人類の進む先は、人類のたどり着いた場所でしかないよ」

「なんじゃそれは。それではまるで思考停止ではないか。やる気ないのか?」

「そんな事ないよ。むしろ行動力の化身だよ」

「そうは聞こえんかったが」

「まあ、どんな場所に行きたいかというよりは、取り敢えず作れる道を作ってみて、そこからどんな場所に持っていけるかを考える感じかな。

 人間にはいろんな考えの人がいるから、そんな人達がとにかく色んな道を、思い思いに、手当たり次第に、次から次へと作っちゃってね。それが原因で人間同士での言い争いになったりもするんだけど」

「無茶苦茶じゃの」

「そうだね(笑)」



 思わず頭を抱えてうなだれる景羅。

 まあ、創造主たる万能の力を持った神様には、とても理解はできないよね。



「全く意味がわからん。よくもそんな事でこれほどに繁殖・繁栄できたもんだ」

「ほんと不思議だよね」

「お前が言うか」



 再び頭を抱える景羅。

 いちいちリアクションがいいのでちょっと楽しくなって来た。



「それにしても、お前は若いのにやたらと詳しいのだな。しかも、妾の姿を見えているようだし、お主、本当に人間か?」

「失礼な。私は人間だよ。ちょっとイレギュラーな部分があるのは確かだけど、ちゃんとれっきとした人間だよ。たぶん」

「・・・結局どっちじゃ」

「だから人間だって」



 別の世界のだけどね。



「・・・まあよい。思ったよりも随分面白い話じゃった。特別にお前の名前を覚えておこう。名は何という」

「え、私の名前?えっと、ナナだけど」



 神様になら、本名の朝倉奈々って名前を教えておいた方がいいかなとも思ったけど、あとあと面倒ごとになっても困るのでやめておいた。

 神様の絡んだ面倒ごととか、考えるだけでおぞましい。



「ふむ。ナナか。覚えておこう。

 本来、土地神である妾はその立場上、地上の生き物と個別に関わることはせんのだが、今回は特別じゃ」

「はあ。それはどうも」



 何がどう、特別なのかはわからないけど、取り敢えずは友好的な関係で神様と面識を持てたって事で喜んでおくべきかな。

 まあ、本来の目的は何も解決してないんだけど。



「それじゃ、そろそろ私は戻るね。魔物はどうにもならないみたいだし、村人たちの避難の準備をしなくちゃ」

「そうか」



 私が村を出てすでに数時間。

 今だに魔物が無限湧きしているとすれば、流石にそろそろキツイはず。

 いい加減に戻ってあげないと文句の一つも言われかねない。

 勝手に飛び出して結局、何も解決出来なかった訳だし。



「ああ、そうそう。村の者達に、たまには祠の参拝に行くように言っておけ。あと、供物は甘味か酒が良い、と」

「わかった。言っとくよ」



 まさか、神様からお供え物のリクエストをされるとは思わなかった。



「なら、お酒はないけど、甘味なら今持ってるから、それ供えて行こうか?」

「ほう。良い心がけじゃな。ならばついでに魔力も奉納して行くといい」

「魔力を奉納?」

「うむ」



 どうやら、魔力のあるこの世界では、寺や祠を参拝すると、魔力が奉納されるらしい。

 もっとも、参拝者には魔力を奉納した自覚はなく、手を合わせて拝んだり祈ったりした際に少量の魔力が流れて行くらしい。



 ちなみに、龍脈の魔力を享受するゾッテ村の人間が、もう少し多く参拝して祠に魔力を奉納(厳密には返納)していれば、村と龍脈との繋がりが太くなり、龍脈の枯渇も、回避出来た可能性があったらしい。



「じゃあ、せっかくだし奉納もして行くよ」

「うむ。助かる」



 私は景羅から祠の方へと体を向き直し、胸の前で手を合わせて目を瞑る。



「む、何故そっちを向くのじゃ。本体は妾じゃぞ?」



 うん。わかってるけど、ついさっきまで話をしてた幼女に向かって手を合わせて拝むのは、ちょっとなんかアレな感じなので却下だ。



 さて、どうせ普段から使い道もなく、無駄に余らせてる魔力だし、いい機会だから最大MPの半分くらい奉納しとこうかな。

 神様としても、奉納される魔力の量は多いに越したことはないだろうし。

 さて、それじゃあ行きますか。



(手を合わせて・・・魔力を、ほぉーー!!)



「ひゃっ!!?」



 私が一気に魔力を送ると、景羅が変な声を出して少し仰け反った。



「あれ、驚かせちゃった?」

「ちょ、ちょ、おい、ナナ!!お前はなんちゅー量の魔力を持っておるのじゃ!てか、そんなものを全部奉納してしまって、ぶっ倒れてもしらんぞ!?」

「え、あ、うん」



 予想外にも驚かれてしまった。

 まだ半分残ってるとか、とても言い出せない感じだよね

 神様相手なら多少の規格外っぷりはスルーしてもらえるかと思ったんだけど。

 神様的にも私は非常識な存在らしい。

 どんだけだよ、私。



「それじゃ、もう行くね」

「ああ・・・」



 さて、今度こそさっさと帰ろう。



「いや待て、お前に一つ言っておくべきことが出来た」

「え?また?今度は何?」



 早く戻らないと本当にマズイんだけど。



「今の大量の魔力奉納で、枯れた龍脈が復活したっぽい」

「・・・え」

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