タイム・ラブ

KMT

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第一章「近づく二人」

第6話「キノコと胸とプチクラ山」

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ブロロロロロロロ

私達を乗せたタイムマシンは乾燥した大地をゆっくりと走っている。元々見た目が普通の自動車っぽいから、ただ地面を走っているだけではもう普通の自動車そのものでしかない。

「ねぇ、見たところ植物が見当たらないんだけど...」

ママが心配げに呟く。
確かに、さっきから緑がまったく見当たらない。草原や森林の姿がこれっぽっちもない。本当にこんなところに植物なんてあるのかしら?もしかして時代間違えた?それとも図鑑の情報が間違ってたとか?

「そりゃあそうさ。陸上の緑化が本格的に始まったのがシルル期からだからね~。でも大丈夫、すぐ見つかるから」

なんだかやけに自信満々に語るパパ。何か秘策でもあるのかしら?


数分ほど走行すると、目の前に大きな谷が見えてきた。どんどん近づいている。

「アナタ、このスピードのまま行くと落っこちるわよ?」
「大丈夫、大丈夫」
「いやパパ、危ないって!」
「大丈夫、大丈夫」
「大丈夫じゃないわよ!落ちたら無事じゃ済まないって!」
「大丈夫、大丈夫」

「だから大丈夫じゃないんだってばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

ママと揃えて大声をあげる。
いやいやいや!マジでこのまま行くと確実に落ちるって!大丈夫じゃないって!あぁ!もうすぐそこまで迫ってるし!

ビュン!
タイムマシンが元気よく崖の上から飛び出した。

いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!

















...んあ?あ、あれ?
落ちてない。落ちてないわよ。ていうか...

「飛んで...る?」

タイムマシンはヒュルヒュルと空を飛んでいた。再びタイムマシンらしさを見せつけた。

「ね?だから大丈夫だって言ったでしょ♪」
「怖がらせんじゃないわよ!!!!!!」

ママの怒鳴り声が窓を震わせ、谷底までこだましていった。ついでに川の水面まで揺らしたかもしれない。




そう、谷底には川が流れていた。

「パパ!下に川が流れてるわよ~」
「あれは川じゃなくて海だよ」
「え?そうなの?」

タイムマシンは川岸...じゃなかった、海辺に着陸した。私はさっそくドアに手をかけた。早くあの海の水を舐めたい。大昔でも海水はしょっぱいのか?今すぐ確かめたい。すると

「ねぇ、今さらなんだけど、大気とかはどうなの?酸素とかちゃんとある?外で息はできるの?」

ママが立て続けに質問攻めをした。確かにそれは重要な問題だ。何の下調べもなく外に飛び出して、簡単にポックリといきたくない。

「それも大丈夫。ちゃんと酸素はあるよ。現代よりは酸素濃度は低いけど、息ができないってほどではないよ。ちょうどこの時代は植物の光合成のおかげで、生物が生息するのに十分な酸素が地上に行き渡った頃だし」

それもそうか。なら安心ね。まぁ、植物はまだこの目で見てはいないけど。

ガラリ!
私は豪快にドアを開け、シルル期の大地に足を踏み入れた。人生初の、異なる時代への一歩だ。

ザッ!
すごい。今、私ははるか大昔の時代の土の上に立っている。人類が何年も夢見てきた、異なる時代への旅。タイムマシンの発明。私はその奇跡を体感することができた人間だ。心が踊っている。まるでアポロ11号に乗り、初めて月面着陸に成功した宇宙飛行士、ニール・アームストロングになった気分だ。

「すごい!パパすごいね!私達、大昔に来てるんだよ!」
「あぁ、そうだな」
「気温も意外と快適ね。現代とそんなに変わらない」
「この時代の気候は結構安定してるんだ。この頃からオゾン層も形成されたからね。地球上に降り注ぐ有害物質とかが少なくなって、それで生物達も次々と陸上へ進出していくことができたというわけさ」

いやぁ~、ホントにすごい。
ってさっきから私、「すごい」しか言ってないわね...(笑)。いやぁ~、大昔のあまりのすごさに語彙力がどこかにトラベルしてしまったわ。いやぁ~、すごい。

すると、向こうの方に何かが見えた。

「何かしら?アレ」

私は海の方に走っていた。水に指を突っ込んで舐める。んん!しょっぱい!この頃から海水はしょっぱかったのね!いや、そんなことより

「パパ~、岸に何か打ち上げられてるよ~」
「ん?どれどれ?」

私は見つけたアレのところまで駆けつけて、パパを手招きした。岸に打ち上げられていたそれは、まるでカブトガニのような...魚のような...

「あぁ、ケファラスピスだね」
「ケアレスミス?」
「ケファラスピス!シルル期の後期からデボン期の後期の間に生息していた甲冑魚の一種だよ。...てことは、ここ中期じゃなくて後期か...少し時代を早め過ぎたな...(笑)」
「かっちゅうぎょ?」
「簡単に言うと、頭部が鎧みたいな硬い甲羅に覆われている魚のことだよ。オルドビス期から誕生し始めて、デボン期の終わりに絶滅してしまった古代の魚類の仲間だよ」

どうやらこの時代の陸上に生物はほとんどおらず、水中にいるらしい。陸上にいるのはわずかな植物だけのようだ。確か、図鑑にもそう書いてあった気がする。

「へぇ~。でもこれ、死んでるわね」
「まぁね。でも水辺を見つけられてよかったぁ...」
「え?どういうこと?」

パパは辺りを見渡す。すると、何かを見つけたらしく、走り始めた。

「ちょっとアナタ!どこ行くの?」
「あった!お~い真紀!お探しのものがあったぞ~!」

お探しのもの?それってまさか!
私はパパの元へと駆け出した。

「あった~!あのキノコ!」
「クックソニアだよ...。探してたのこれだろ?」
「うん!図鑑の写真とそっくり!でも、思ったより小さいわね。手のひらより小さいわ」
「図鑑に約7センチメートルって書いてあったろ?」

見渡すと浜辺の一面にクックソニアは生えていた。クックソニアは先端に丸っこいキノコのかさのような黄色い胞子が付いていた。茎?の部分は黄緑色をしていて、そこは現代の植物とほぼ同じだ。でも全体的な見た目はあまり植物っぽくない。だか植物だ。

私はリュックに入れてあったパパの一眼レフを取り出す。写真撮らなくちゃ。膝を下ろしてしゃがむ。電源のスイッチを押した時、ママも走ってきて追い付いてきた。

「もう二人とも、いきなり走るんじゃないわよ...」

パシャ!パシャ!パシャ!
私は何度もシャッターを切る。

「ふ~ん、これが真紀の探してたやつ?なんか植物に見えないわね~」
「これでも立派な植物さ。光合成だってちゃんとする。現代の植物のご先祖様だよ」
「でもこんなに小さいの、よく見つけられたわね」
「植物も水中から陸上に上がってきたからね。海岸に沿って探していけば探しやすいんだ。今回は案外早く見つかってよかったよ」

さすがパパ。時間監理局で働いているだけあって、歴史の話題にはめっぽう強い。


パシャ!パシャ!パシャ!
ん~、もう十分かしらね。私は一眼レフをしまう。そして手を伸ばs(ry

「真紀、持って帰るのはダーメ!」

伸ばした私の手を、パパは見逃さなかった。意外と鋭いな...。

「え~?いいじゃない、こんなにたくさん生えてるんだから一本くらい...」
「ダメって言ったらダーメ!一本でも持って帰ったらすぐに犯罪者になるよ」
「ちぇ~」

私は手を引っ込める。まぁ、今回は潔く諦めよう。犯罪を犯して高校を退学などとなれば、もとも子もない。

「じゃあ写真も撮ったし、次、行くか?」
「うん!」

私は立ち上がって、タイムマシンに向かって走り出した。まだまだこの時代は始まりに過ぎない。これからも~っといろんな時代を巡っていくのだ。


私達の冒険はまだまだこれからよ!






...なんてね♪







 🕛 🕐 🕑 🕒 🕓 🕔 🕕 🕖 🕗 🕘 🕙 🕚 🕛







腕時計を確認しながら、プチクラ山の時計広場で小さな時計台を眺めている裕介君。少々顔が険しい。それもそうか...。

「集合時間とっくに過ぎてんのに、なんであいつら来てねぇんだぁ?」

集合時間の午後2時30分を過ぎているが、僕達は裕介君と一緒にいない。というのも

「そろそろ出ていったほうがいいんじゃないの?」
「まだまだ~♪もう少し近づいてからよ」


僕達は、時計広場の深い草むらの中に隠れている。地面に腰を下ろして、隙間から裕介君の様子を伺う。隣には綾葉ちゃんがしゃがんで不適な笑みを浮かべている。綾葉ちゃんが最初に言い出したのだ。集合時間より早く来て、後から来た裕介君を驚かそうと。反対側の草むらには、広樹君と美咲ちゃんが隠れている。裕介君はまだこちらには気づいていない様子だが...。

「そろそろ腰が痛くなってきたよ..」

さっきから30分ほど同じ体型を維持している。さすがに疲れてきた。

「なかなか気づかないわね...」


バタッ!
後ろから音がした。振り向くと、草に立て掛けてあった僕のスケッチブックが倒れていた。写生の宿題のために持ってきてあったやつだ。

「お♪お前らそこにいんのか~?」

バレた。裕介君にも音が聞こえたらしい。ガツガツと靴音を響かせ、ポキポキと手を鳴らしながら、僕達の隠れている草むらに近づいてくる。

って何!?裕介君まさか殴ってくるつもりなの!?

「それで隠れたつもりかぁ~?俺様から逃れようなんざ3ヶ月早ぇんだよぉ~♪」

たった3ヶ月なんだ...(笑)。あと、殴るのはやめて...。

「あわわわわわわわわ...💦」

綾葉ちゃんも焦りを感じている。

「みーつけたぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

シュ!
裕介君が長い腕を伸ばして掴みかかってきた。僕は恐怖のあまり目をつぶる。
!!!!!!!!!!










フニュッ
何やら柔らかいものを掴んだような音がかすかに聞こえた。僕はその音が聞こえた隣を見たが、見た瞬間、手のひらで目を覆い隠した。

「ん?なんだこれ?」

裕介君は、自分の掴んだものを確認する。
それは...
































綾葉ちゃんの胸だった。

綾葉ちゃんは自分の胸をわしづかみにされ、顔が赤く染まっていた。そりゃそうだ。

「あ、あ...///」

恥ずかしさのあまり呆然とし、次の言葉が出てこなくなった綾葉ちゃん。裕介君は...

「...柔らかい」

ズドン!!!!!!!!!!
綾葉ちゃんのげんこつが、見事裕介君の頭にお見舞いされ、鈍い音が山にこだましていった。




 

「ほんっと最低!クズ!変態!」

ほぼ涙目になりながら綾葉ちゃんは、倒れこんだ裕介君に吐き捨てる。

「いや、まさか綾葉がいるとは思ってなくて...」

瀕死状態になりながらも、裕介君は答える。叩いた頭から湯気が沸いてるあたり、相当痛そうだ...。赤く腫れ上がって大きなたんこぶのようなものまでできてる。広樹君はしゃがんで哀れみの表情を浮かべながら、裕介君を眺めている。

「ここで裕介君に問題です。超難問!綾葉のおっぱいの大きさは何カップでしょう?」

いきなり美咲ちゃんがとんでもないクイズを出してきた。これで正解したら正真正銘の変態だ。

ピンポン!
裕介君が腫れ上がったたんこぶを手で押すと、なぜかクイズ番組のスイッチのような音が鳴った。

「あの手のひらへの収まり具合と柔らかさから推測して......Dカップ!!!!!!」
「正解!」
「よっしゃぁぁぁぁぁ!!!!!!」

ドカン!!!!!!!!!!!!
再び頭へのげんこつが炸裂し、さっきよりも響きのよい打音が、再度山をこだましていった。


「バッカじゃないの!!!!」
「なんで俺だけ...」
「美咲もなんで私のカップ数知ってんのよ!」
「裏ルートで情報を入手した」
「何よ裏ルートって!?」
「ハハッ!桐山、お前その頭、ミッキーマウスみたいだな(笑)」

左右に二つのたんこぶができている。確かに、正面から見たらミッキーマウスみたいに見える。

「そうか?ならミッキーマウスならぬミッキーリヤマウスだな♪桐山だけに♪」

少し風が吹いてきたのか、寒くなってきた。









僕達はプチクラ山の山道を歩く。人工的に作られた道で、ハイキングコースにもなっているので、そんなに辛くない。

「待ってくれよ...辛ぇんだが...」

今の裕介君を除いてだけど...(笑)。たくさげんこつをお見舞いされてクタクタになっているから無理もないか。

「我慢しなさい。男でしょ」

さっきから綾葉ちゃんは裕介君に厳しい。さっきのこと、相当根に持っているようだ。

「あ、みんな見て。いい景色」

美咲ちゃんが足を止め、開けた草原が茂っている、緩やかな坂の前でその景色を見つけた。僕達も並んで見てみる。

「おぉ~!スゲー!」
「なかなかのもんだな~」
「ほんと!いい景色ね~♪ねぇ満君!」
「そうだね~」

一目で街全体を見渡せる。その上には、わたあめのような白い雲をいくつか浮かべた青い空が広がっている。とても綺麗な景色だ。

「俺達結構高いところまで登ってきたんだな~」
「そろそろ花とか木とか探そうよ」
「うん。探す」

みんなはそれぞれバラバラに移動し始めた。だが僕は足を止めたままでいた。
僕はある衝動にかられたのだ。

「僕、この景色描いてみようかな...」
「えぇぇぇぇぇぇ!?」

みんな驚いた。予想通りの反応だ。

「マジでこれ描くつもりだったのかよ!?難しいだろ!?」
「そうだけど...すっごく綺麗だったら。なんか絵に残しておきたくなっちゃって...」
「そ、そうか...。まあ、お前のことだし、大丈夫だろ」
「さすが満君!チャレンジャーね!」
「未来の天才芸術家、青葉満君の記念すべき一作目」
「どんな感じになるか楽しみだな」

なんでみんな、そんなに過度な期待をしてるんだろ...。💧まだ筆も動かしてないよ...。

「じゃあ俺ら、奥の方行ってくるから。頑張れよ~」
「うん。じゃあ後でね~」

裕介君達と一旦別れ、僕は作業に入る。まずは下書きっと...。

ササササッ
鉛筆を動かし、景色の細部を写し取る。
しばらく時間がかかりそうだ。


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