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第三章 育ちゆくワイハー島
携帯電話と原子力
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通信革命が起きた! 僕のガラケーを元に携帯電話が出来上がり、安価で巷に出回ってしまう。本来これ以上の発展を望まなかったのに、例の充電器作成の際、ベースとして貸したときに内部構造を理解、少しの改良でこの街でも使えるようなモノを作り出してしまったのだ。だけど同じようにモッチーのスマホも渡っていたと思ったのだが、どうして今更ガラケー?
「まったく、油断も隙も無いですよ三河君? 彼等はまるで産業スパイです。僕のスマホも一応電源が入ったものの、アプリが全て消去されてました」
今回は珍しく家でのプチ会議。ドーラとミラカーはニャゴリューの散歩がてらお買い物へ。だから今、この場にいるのは僕とモッチーだけ。おっと、勿論ヤキも。これまでも時々僕とモッチープラスヤキで表向きは話し合いとの密談を重ねてきた。時には過去を懐かしんだり、或は元の世界に戻る方法の考察、そして移り行くワイハー島についての論議。今回はどんどん進化するアオジョリーナ・ジョリ―村に危機感を抱き、現在の状況を改めてモッチーから確認することに。そこで僕自身、初めて携帯電話が普及していると教えられたのだ。
あいつ等街で僕と会う時、さっと何かを隠したのはコレか! しかも変な愛想笑いで誤魔化してやがったな!
「それと写真や動画も消去……」
「うそ! マジで!?」
すかさずモッチーの手にあったスマホを取り上げると、僕は自分の目を疑った。そこには悲しい映像が……。
「なんだよこれ? 怒りが画面から滲み出てるじゃないか!? モッチー相当酷い写真とか持ってたんじゃないの? あっ! まさか盗撮?」
画面のバックには鋭い爪や牙で引き裂かれていくモッチーの動画が繰り返し流されている。とても精巧なCGで作られてはいるものの、そこからはあり得ない程の怒りを感じる。恐らく爪や牙はあの二人を現しているのでは?
「バカだなモッチー? ドーラやミラカーまで盗撮対象にしてたの?」
「…………」
ビンゴだな。答えないのは図星の証し。リアルでバラバラにされていないのを喜ぶことだな。きっと警告なんだろうけど。次はやるぞとの……。
「因みに僕のガラケーとモッチーのスマホで会話できるの?」
「それは大丈夫みたいですよ。知らないうちに基地局を一杯作ってましたし。とはいっても、背の高い木に機材をつけるだけの簡易な中継局ですけどね。一応ワイハー島全域で使用可とヤンキーは言ってました」
モッチーの説明では既に無線技術は成熟期を迎え、様々な分野で活用されているとのこと。よって携帯電話など、今どき一人一台は持っているのが当たり前なのだそうだ。ドローンなどの無人遠隔操作システムも電波技術を応用してとっくに開発済み。それどころかそれを使って正確な島の周辺図を作製、海里制限はあるもののGPSまで登場したのだ。更にはニーワーに手伝ってもらい、外洋にも次々アンテナを設置していると。彼等曰く、緊急時の為にも電磁捜索網は必要不可欠なのだそうだ。何かあってからでは遅いのだと! もしかして要塞でも作ろうとしてる?
「それとですね三河君、困ったことがもう一つ……」
「これ以上何に困るんだよモッチー? なんとか進化を止めなきゃ……」
「いえ、そっち方面ではないんです。あの……その……」
モッチーはソレを非常に言いにくそう。あの空気読まずで他人にヘイトされることを厭わないモッチーが口にしたがらないなんて! これは大事件の予感!
「なんだよ? モッチーのくせに歯切れが悪いなー?」
「その……ヤキさんが……」
「なに? ヤキに聞かれるとマズイこと? だったらちょっと席を外してもらえるかなヤキ」
因みにエビちゃんは今いない。真剣な話をする時は邪魔だから。いや、間違いなく邪魔をするから。
『……わかりました。なにかあったら大声で呼んでくださいよ旦那様』
{バッタン}
こうしてヤキは渋々リビングから姿を消した。最後にモッチーを焼き殺すような視線で睨みつけて。
「ふぅ。僕はあの人苦手なんですよ。なにせ触れることができないから如何せんどうすることも……」
早速ヤキの悪口を言い始めるモッチー。だからそーゆーとこだってば!
「おっと、彼女への愚痴はこれぐらいにしてっと……実はですね三河君」
モッチーの話はこうだった。アマゾネスの何人かが今にも爆発しそうだと。アオジョリーナ・ジョリ―村での不満で暴動でも起こしそうなのかと尋ねたが、どうやらそうではないらしい。
「つまりね、子孫を増やしたいそうなんですよ」
この島に住むヒューマンは僕とモッチーにエビちゃん、それと青ジョリしかいない。その他は獣人、いや、知性を兼ね備える獣しか存在しない。つまり交配に限っては僕にモッチー、それと青ジョリしか選択肢がないのだ。しかもモッチーはアマゾネスに嫌われまくっているから子種どころか取られるのはきっと命。青ジョリにしてもイマイチ評判が良くない。なにせブサイクだから。となると……
「絶対嫌だからな僕は! 大体モッチーが彼女達から嫌われなければ全て上手く行ったのに!」
「据え膳食わぬは男の恥と言いましてね三河君……」
「その据え膳が盗撮や痴漢行為ってのはどーゆーこったモッチー? ガマンの一つもできないの?」
「面目ない!」
時々こいつの正直さに清々しさすら感じる。最低な行為に対して恥の概念はまったく持ち合わせていないようで。
「元々戦闘民族ですから暴れられると面倒ですよ? だから三河君が犠牲となって……」
「お前ふざけんなよ? つかさ、この島以外から人種の男を数人連れてこれないの? これだけの技術があればそんなの簡単じゃない?」
「…………」
モッチーは急に困った顔となり、ダラダラと額に汗をかきだした。何かを隠してるのが見え見え。
「白状しろモッチー! 僕は全てお見通しだぞ!」
「クッ、これまでか……。実は……」
「!?」
― 数日前 ―
「ねぇモッチーさん、言われた通り沖へアンテナ立ててきたワニ」
「ご苦労クロコン。誰にも見られなかっただろうな?」
「勿論だワニ!」
「いいか皆! なんども言うけど、今回の実験は三河君に内緒だからな! こんなの知られると間違いなく怒られるからそこんとこ肝に命じておけ! だからアマゾネス以外の各種族長とその信頼於ける部下を除いて話すのも禁止だし悟られないように細心の注意を心掛けよ!」
「サーイエッサー!」×複数
{ピコーン}
「外洋にて早速レーダーになにか反応でちゅ! 画像拡大しまちゅ!」
「あれは人間族だクマー! しかも武装してるでクマー! 間違いなくこのワイハー島を襲う気でクマー!」
「けっ、こざかしい。なるほど、装備を見るに僕達の世界でいうところの黒船並の武装か。外の世界の科学力もどうやら知れたもの」
「どうするんだワン? 早速例のアレを試してみるかワン?」
「そうだな。威力は分からないけど、驚かせるぐらいの音はでるだろう。あくまでも理論上だけどな」
「だったらスイッチオンだワン!」
この日、ワイハー島に不自然な津波が押し寄せた。同時に震度3程の地震にも見舞われたが、被害一つなく時間も短かったため、誰一人として気に留めるものもなく、僕こと三河安成とてその内の一人だった。
「ふ、船が消えちゃったクマー……」
「き、きのこのような雲が……いや、向日葵でちゅかね?」
「お、お前たち僕に何か隠してないか? 本当にあれは目ん玉ぐらいの大きさしかないやつだったのか?」
「弾頭なら言われた通り作ったでッキー。だけど中身は極限まで圧縮した向日葵の中性子をちょいと暴れさせるだけの質素なやつだッキーよ?」
「へ? 中性子? まさか核分裂で……」
「簡単に言えばそうだッキー。分裂を利用して効率よく……」
「中止だ……。この実験は即中止するっ! 弾頭は直ぐに廃棄! 尚もレーダー技術だけはそのままで!」
「えぇー? 勿体ないッキーよモッチーさん? ほんの10……」
「マジかタパーツ! まだ十個しかないんだな! 早急に廃棄を命ずる!」
(言えないッキー。十万個だなんて口が裂けても言えないッキー……)
こうして偶然にも侵略者を未然に防いだアオジョリーナ・ジョリ―村。同時に人種数百人の命を奪ったのもこれまた事実。上手く交渉すればアマゾネスたちへの慰み者となったものを全て塵にしてしまったのだった。流石のモッチーもこの後数日間は命の重さに苛まれて眠れぬ夜を過ごすハメとなったのだとか。
僕の知らないところでなにしてるんだよもう……。
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「それと写真や動画も消去……」
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すかさずモッチーの手にあったスマホを取り上げると、僕は自分の目を疑った。そこには悲しい映像が……。
「なんだよこれ? 怒りが画面から滲み出てるじゃないか!? モッチー相当酷い写真とか持ってたんじゃないの? あっ! まさか盗撮?」
画面のバックには鋭い爪や牙で引き裂かれていくモッチーの動画が繰り返し流されている。とても精巧なCGで作られてはいるものの、そこからはあり得ない程の怒りを感じる。恐らく爪や牙はあの二人を現しているのでは?
「バカだなモッチー? ドーラやミラカーまで盗撮対象にしてたの?」
「…………」
ビンゴだな。答えないのは図星の証し。リアルでバラバラにされていないのを喜ぶことだな。きっと警告なんだろうけど。次はやるぞとの……。
「因みに僕のガラケーとモッチーのスマホで会話できるの?」
「それは大丈夫みたいですよ。知らないうちに基地局を一杯作ってましたし。とはいっても、背の高い木に機材をつけるだけの簡易な中継局ですけどね。一応ワイハー島全域で使用可とヤンキーは言ってました」
モッチーの説明では既に無線技術は成熟期を迎え、様々な分野で活用されているとのこと。よって携帯電話など、今どき一人一台は持っているのが当たり前なのだそうだ。ドローンなどの無人遠隔操作システムも電波技術を応用してとっくに開発済み。それどころかそれを使って正確な島の周辺図を作製、海里制限はあるもののGPSまで登場したのだ。更にはニーワーに手伝ってもらい、外洋にも次々アンテナを設置していると。彼等曰く、緊急時の為にも電磁捜索網は必要不可欠なのだそうだ。何かあってからでは遅いのだと! もしかして要塞でも作ろうとしてる?
「それとですね三河君、困ったことがもう一つ……」
「これ以上何に困るんだよモッチー? なんとか進化を止めなきゃ……」
「いえ、そっち方面ではないんです。あの……その……」
モッチーはソレを非常に言いにくそう。あの空気読まずで他人にヘイトされることを厭わないモッチーが口にしたがらないなんて! これは大事件の予感!
「なんだよ? モッチーのくせに歯切れが悪いなー?」
「その……ヤキさんが……」
「なに? ヤキに聞かれるとマズイこと? だったらちょっと席を外してもらえるかなヤキ」
因みにエビちゃんは今いない。真剣な話をする時は邪魔だから。いや、間違いなく邪魔をするから。
『……わかりました。なにかあったら大声で呼んでくださいよ旦那様』
{バッタン}
こうしてヤキは渋々リビングから姿を消した。最後にモッチーを焼き殺すような視線で睨みつけて。
「ふぅ。僕はあの人苦手なんですよ。なにせ触れることができないから如何せんどうすることも……」
早速ヤキの悪口を言い始めるモッチー。だからそーゆーとこだってば!
「おっと、彼女への愚痴はこれぐらいにしてっと……実はですね三河君」
モッチーの話はこうだった。アマゾネスの何人かが今にも爆発しそうだと。アオジョリーナ・ジョリ―村での不満で暴動でも起こしそうなのかと尋ねたが、どうやらそうではないらしい。
「つまりね、子孫を増やしたいそうなんですよ」
この島に住むヒューマンは僕とモッチーにエビちゃん、それと青ジョリしかいない。その他は獣人、いや、知性を兼ね備える獣しか存在しない。つまり交配に限っては僕にモッチー、それと青ジョリしか選択肢がないのだ。しかもモッチーはアマゾネスに嫌われまくっているから子種どころか取られるのはきっと命。青ジョリにしてもイマイチ評判が良くない。なにせブサイクだから。となると……
「絶対嫌だからな僕は! 大体モッチーが彼女達から嫌われなければ全て上手く行ったのに!」
「据え膳食わぬは男の恥と言いましてね三河君……」
「その据え膳が盗撮や痴漢行為ってのはどーゆーこったモッチー? ガマンの一つもできないの?」
「面目ない!」
時々こいつの正直さに清々しさすら感じる。最低な行為に対して恥の概念はまったく持ち合わせていないようで。
「元々戦闘民族ですから暴れられると面倒ですよ? だから三河君が犠牲となって……」
「お前ふざけんなよ? つかさ、この島以外から人種の男を数人連れてこれないの? これだけの技術があればそんなの簡単じゃない?」
「…………」
モッチーは急に困った顔となり、ダラダラと額に汗をかきだした。何かを隠してるのが見え見え。
「白状しろモッチー! 僕は全てお見通しだぞ!」
「クッ、これまでか……。実は……」
「!?」
― 数日前 ―
「ねぇモッチーさん、言われた通り沖へアンテナ立ててきたワニ」
「ご苦労クロコン。誰にも見られなかっただろうな?」
「勿論だワニ!」
「いいか皆! なんども言うけど、今回の実験は三河君に内緒だからな! こんなの知られると間違いなく怒られるからそこんとこ肝に命じておけ! だからアマゾネス以外の各種族長とその信頼於ける部下を除いて話すのも禁止だし悟られないように細心の注意を心掛けよ!」
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「けっ、こざかしい。なるほど、装備を見るに僕達の世界でいうところの黒船並の武装か。外の世界の科学力もどうやら知れたもの」
「どうするんだワン? 早速例のアレを試してみるかワン?」
「そうだな。威力は分からないけど、驚かせるぐらいの音はでるだろう。あくまでも理論上だけどな」
「だったらスイッチオンだワン!」
この日、ワイハー島に不自然な津波が押し寄せた。同時に震度3程の地震にも見舞われたが、被害一つなく時間も短かったため、誰一人として気に留めるものもなく、僕こと三河安成とてその内の一人だった。
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「お、お前たち僕に何か隠してないか? 本当にあれは目ん玉ぐらいの大きさしかないやつだったのか?」
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「へ? 中性子? まさか核分裂で……」
「簡単に言えばそうだッキー。分裂を利用して効率よく……」
「中止だ……。この実験は即中止するっ! 弾頭は直ぐに廃棄! 尚もレーダー技術だけはそのままで!」
「えぇー? 勿体ないッキーよモッチーさん? ほんの10……」
「マジかタパーツ! まだ十個しかないんだな! 早急に廃棄を命ずる!」
(言えないッキー。十万個だなんて口が裂けても言えないッキー……)
こうして偶然にも侵略者を未然に防いだアオジョリーナ・ジョリ―村。同時に人種数百人の命を奪ったのもこれまた事実。上手く交渉すればアマゾネスたちへの慰み者となったものを全て塵にしてしまったのだった。流石のモッチーもこの後数日間は命の重さに苛まれて眠れぬ夜を過ごすハメとなったのだとか。
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