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第三章 育ちゆくワイハー島

平和と戦争

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 産業革命が起きた! 内燃機関の開発に成功したのだ! 勿論動力源は向日葵を使って! これにより様々な分野で技術革新となり、特に製川原石業が格段に成長し、只の石ッコロからあらゆる鉱物を精製、それを用いて色々な機械を開発! 著しく工業や繊維業が発展を遂げ、遂には鉄道をも作り上げたのだった!

 「あ、自動車はダメよ。危ないからね。長距離以外は健康維持も兼ねて歩かなくっちゃ!」

 調子に乗って技術供与しすぎてしまった僕とモッチー。僕らとて各分野における浅い基礎知識しかないものの、それらを元に構造こそ多少違いはあれど、用途は同じといった道具や機械をこれでもかと開発、直ぐに実用量産を成し遂げるアオジョリーナ・ジョリ―村の民たち。どんどん成長するから面白半分でやりすぎた結果がコレ。僕達の世界ではこれによって武器なども進化し、悲しい歴史が訪れることとなる。リバーライダーが筒に粉末の向日葵を詰め、先に河原の石を研いだものをはめ込んだ即席の銃で漁をしていたのを見て愕然とした。このままではよからぬ方向へ向かいかねないなと。

 
 アマゾネスが仲間となって数ヶ月が過ぎたこの日、いつもの青ジョリん家にある会議室で僕とモッチー及びエビちゃん、それプラス青ジョリにドーラ&ミラカーも加えてお茶を飲みながらこの先街の行く末を話し合っていた。あ、当然ヤキも一緒に。

 「なぁモッチー? 向日葵は管理した方がいいんじゃない? 彼等の今の技術だと大量破壊兵器なんて簡単に作れるんじゃないの?」

 「そうなんですよねぇ。僕もそれを心配してるんです。やり過ぎましたかねぇ?」

 まさかこんなにも成長が早いとは思ってもみなかった僕達。これまで殺傷事件はモッチーを除いて一度たりとも起きたことがないこの街。しかしこの先は予想だにつかないのも確か。実際既に銃は誕生してしまったワケだし。なんとかしなければ……。

 「モッチーは性教育ばっかりしてたじゃん? あれもやり過ぎと違う?」

 「し、失礼なことを言わないでください三河君! お陰で人口が爆発的に増えて、結果的にアオジョリーナ・ジョリ―村の経済を支えてるんですよ? それをやり過ぎって……君だって毎晩ドーラとミラカーを教育してるんでしょ!?」

 「ヤキが近くにいるのによくそんなこと言えるよな? 自殺行為ってもんだよモッチー?」

 「す、すみませんでした。ちょっと調子に乗り過ぎました」

 『……次は無いからな』

 相変わらずヤキには頭が上がらないと見える。その上ドーラとミラカーもヤツの言いなりにならないからそのしわ寄せをニャゴリューが全て受け止めるハメに。今のところ同レベルみたいで、怪我とかしないのがせめてもの救い。勿論ニャゴリューがだ! モッチーなんて全身複雑骨折となっても次の火にはケロっとしてるから心配するだけ無駄ってもの。

 「そういえばモッチー、お前ハーレム作ったんだって?」

 「だ、誰がそんなことをっ!? そりゃハーレムは男の夢ですが……そもそも三河君がそんなの言えた義理ではないですよね?」

 「まぁそうなんだけどさ、ヤンキーが言ってたんだよ。モッチーはアマゾネスにちょっかい出したいんだけど町の入り口でクロコンが睨みを利かしているからリバーライダーでその欲求を満たしてる的なことを」

 「チッ! あの犬ッコロが余計なことを……」

 「別に可愛がったり愛情を注ぐのはいいけどさ、悪戯したりエッチな事はしちゃだめだよ? あの外観だからおかしなイメージはつけないでね。じゃないと僕のガーディアンが黙ってないからね!」

 『……人が無理だから獣人でハーレムて……そこまで落ちぶれたのか? ペッ!』

 寧ろ心配なのはヤキのイメージかも。清純なイメージが音を立てて崩れていくのが分かる。ハァァァァァ……。

 『……旦那様は女に夢を見過ぎなんです。私とて受け付けないモノには酷く当たりますよ?』

 つまりそれがモッチーってワケか。ハアァァァァ……。埒が明かなかった。

 「お二人の話はサッパリ分からねぇでさぁ? 発展のなにがいけねえんで? 何もかも便利となればいいことこの上無いでさぁよ?」

 「まあ普通はそう思うよね。だけどさ青ジョリ、今の生産体制を全て武器制作に向けたらどうなると思う?」

 「!」

 こいつは目から鱗の表情となった青ジョリ。それもヤバいとの感じではなく、その手があった的な意味で。だからそうじゃないってば!

 「お前がそう考えるぐらいだから他にも同じ考えの者が必ずいるハズなんだよね。強大な武力を手にすれば次は侵略ありきなんだよね。つまり殺し合いをするんだよ! 戦争だよ戦争!」

 「で、でも絶対に負けないでさぁあよ? それでも……」

 「だからブルー、三河君が言いたいのは、そうなると必ずこちらにも多かれ少なかれ被害が出るってことなんですよ。それは僕かも知れないし、或はショーキューやタパーツかも。せっかく今が平和で皆幸せな時間を共有しているのに自分から壊すようなことはやめろってことなんですよ。そうでしょ三河君?」

 「そうだねー。ほぼモッチーの言った通りなんだけど、もう一つ言いたいのは相手にも同じ思いがあるってこと。誰もが一人一人違うストーリーの主役なんだよ? それをこちらの都合で破滅に追いやるなんて……喜怒哀楽全てを捨てて悲だけ残るのが戦争なんだよね。そうだろヤキ?」

 『……はい』

 「あの……いえ、なんでもないでさぁ」

 青ジョリは何かを言いかけてやめた。それが何だったのかは結局分らずじまい。それでも顔からは渋々納得した感が半端ない。僕ともッチーが思う以上に青ジョリは野心家だったようである。

 とはいえ、あくまでもそう見えたってだけの話で、実際の本心は分からない。実はあれが青ジョリのホッとした顔だったのなら安心できるのだが……。(んなワケあるか!)

 「それにしても僕達がここへ来てどれだけが経つ? 未だ帰る方法も分からないし……あ! そういえば僕のリュックってどこやった?」

 「あー、それならブルーん家の金庫にしまってありますよ。元の世界から持ってこれた唯一のアイテムですから。それにしたって突然どうしたんです?」

 「いやさ、携帯とかどうなってるんかなーって。今なら充電器とか作れるんじゃないかなと思ってさ」

 「あー、確かにモンキーンダなら直ぐに作っちゃうかも。ちょっと待っててくださいね」

 モッチーはそう言い残して会議室から出て行った。青ジョリ以上にこの城内を知り尽くしているモッチーのこと、きっとリュックをとりに金庫へと向かったのだろう。まったく、誰が城主なのか分からないや。

 「三河君たちは荷物も一緒に転移したのね? いいなぁー? 私なんて身一つよ」

 「だけど持ってこれたのは日帰り登山用の荷物が入ったリュックだけだよ? おにぎりは転移したその日に三人で食べちゃったし」

 それ以上は一切役に立たなかったのも確か。モッチーのガジェットや僕の携帯なんてとっくにバッテリー切れだし。一番役に立ったのがおにぎりだけだなんて……トホホ。


 ― 数分後 ―

 「どうぞ三河君。それにしても君のリュックは軽いですねぇ? 登山舐めすぎじゃないですか?」

 「舐めてるのはモッチーの方だろ? 前回もそうだったけど、中身カメラとか電子機器ばっかでありえない重量になってるじゃん? 僕の方は薄いけど防寒具一式と水や食料で、遭難しても数日は耐えられるぐらいの装備だっつーの」

 「皮肉ねぇ三河君。数日どころかこのままいくと一生遭難かもよ? まあ、それを言えば私もなんだけどね……」

 「いいではないですか不雷先生。最悪僕が子作りを手伝ってあげますよ。で、遺伝子操作で女の子を誕生させて名前は〝ないろ〟と……!」

 {ガスッ!}

 この直後、モッチーは息絶えた。と言いたいが、恐らく気を失っただけだろう。エビちゃんの掌底がヤツの顎を突き上げると、首を捩じられて即、操り人形の糸が切れたようにその場へ崩れた。だけど僕は知っている。あれはワザと煽って仕打ちを受けるように導いたのだと。だってあのキモイ笑い顔で失神してるんだもん。


 だから話を進めさせてってば!

 

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