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第1話 家族はみんなお星さま!?

疑惑の琢磨

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 チャイムが鳴る5分前!
 ギリギリセーフで登校した私は、駆け足ぎみに教室に滑り込んだ。

 危ない、危ない。

 息を整えながら自分の席に着いた途端、学ランの男子生徒が腕を組みながら近づいて来た。
 幼馴染の琢磨たくまだ。

「おはようあかりくん。早速だが、話がある。」


「朝から何よ。」
 私は鞄から筆記用具を取り出すと、仁王立ちの琢磨たくまを見上げた。

「君には秘密がある。」

「ないよ。」
 私は提出物を机に出しながら即座に答えた。「あるわけないじゃん。」

「どうかな」

 琢磨たくまは疑惑の鋭い目力を崩さずに、私の顔を覗き込んだ。
「幼いころから隣に住んでいる、僕の目はごまかせないよ。」

 あ~ダメだこりゃ。完全に目が据わっている。
 もともと理屈っぽい現実主義者なんだけど、こういう時の琢磨たくまは特にタチが悪い。

「君の家は一人暮らしのはずなのに、夜な夜な色んな部屋の明かりが点いたり消えたりする。」
「ユーレイの家族と住んでいるからね。」

「居ないはずの犬の遠吠えがしたり」
「私にも見えないけど、ペットの犬のクロだよ。」

「たまに窓から家具が飛び出してきたり」
「ポルターガイスト。
 夫婦喧嘩した時にやるやつなのよ。悪気はないから許して!」

「ハア・・・。」

 琢磨たくまはイライラした態度を隠そうとせず、大きくため息を吐いた。「またその態度か。」

「君はいつもそうやって、自身の問題に向き合わずに話をらすんだ‼」
 急に大声を張り上げた琢磨たくまに、ざわついていた教室中が静まり返った。

「ふえっ?」
 私は思わず固まった。

「君はもう居ない家族の幻覚にとらわれているだけなんだッ‼」
 クラスのみんなから注目が集まる中、琢磨たくまは意気揚々と胸に片手を当て、陶酔とうすいした表情で目を閉じた。

 まるでミュージカル俳優みたい。

「幼馴染の僕が相談に乗るから、悩みを全部うちあけてくれたまえ‼」

「それなら・・・。」
 私はうつむきながら、唇を噛んだ。

「実は私・・・。」

 私は持っていた筆記用具を琢磨たくまに思い切り投げつけると、顔を火照ほてらせて立ち上がった。

「なんて言うか! ちゃんと琢磨たくまには、本当のことを話しているのに‼」

 床に尻もちをついてうろたえる琢磨たくま
 私が反撃するなんて、思ってもいなかったみたい。

琢磨たくまなんて、大嫌い!」

 唖然とする琢磨たくまとクラスメイトたちを背に、私は逃げるように駆けて教室を出ていった。
 絶対に、泣き顔だけは誰にも見せたくなかった。




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