20 / 141
次の日の出来事!
11
しおりを挟む
佐々木先輩に告白されたことが衝撃的すぎて、私はずっと拒否する言葉ばかり告げてしまった。
相手に追いかけられてばかりだった人が、はじめて誰かを追いかける立場になったとき、まずは拒否されるかもしれないという、マイナスな感情があったはず。
(佐々木先輩はそれを乗り越えて、私に告白してくれたんだ――)
「ううっ、くっ……」
泣かせてみたいと言った先輩が、私のせいで泣いている姿に焦りを覚える。焦らないほうがおかしい。だけどそれよりもおかしいことは、佐々木先輩が私を好きだってことだろう。正直、趣味がいいとは思えない。
「佐々木先輩、あの……」
今まで挨拶以上の会話をかわしたことがなかった先輩。だからこそこれから相手を知るために、付き合ってみるのはアリかもしれない。そしてこのことにより、四菱商事の見合いの話を、堂々と断る理由になる!
「…………」
鼻から息を思いっきり吸い込み、吐き出す勢いを使って喋りかける。
「佐々木先輩とお付き合いしてもいいですよ。さっき言ったように、少しずつ距離を縮めていく感じでお願いします……」
「くくっ!」
抱きしめていた私をぽいっと放り出して、佐々木先輩はお腹を抱えながら爆笑した。大笑いする理由の見当がつかない私は、ぽかんとするしかなく――。
(近寄りがたいオーラを漂わせている大人ってイメージだったのに、こんなふうに笑ってるだけで、親近感が増していく不思議な人だな)
傍にある棚をバシバシ叩いて、大きな体を揺さぶり、なおも爆笑を続ける佐々木先輩を見つめるしかなかった。
「佐々木先輩、笑いすぎですよ。そんなふうに笑うようなこと、私は言った覚えがないのに」
ジト目で佐々木先輩を見上げながら呟いたら、メガネを外して涙を拭い、ふたたび吹き出す。
「佐々木先輩っ!」
「悪い悪い。間近で松尾の百面相を見ているのが、面白くてつい」
「はい?」
「それを見てるだけで、なにを考えてるのか手に取るようにわかってしまうものだから。とりあえず、付き合うことを決めてくれてありがとな」
きちんとメガネをかけ直してから、目の前に右手を差し出されたので、導かれるように握手した。佐々木先輩の大きな手が、私の右手をぎゅっと握りしめる。
「松尾が不安にならないように、ちょっとずつ距離を縮めていけばいいんだよな?」
「束縛されるのは苦手なので……」
「それじゃあまずは、見える形で俺の気持ちを表してやる」
佐々木先輩は、繋いだ右手をグイッと引き寄せた。
「ちょっ?」
引っ張られた衝撃は私の体を動かすほどじゃなく、右腕のみ動かされた。黙って佐々木先輩がすることを見つめたら、手首が露にされて、脈をとるところに唇が押しつけられる。
相手に追いかけられてばかりだった人が、はじめて誰かを追いかける立場になったとき、まずは拒否されるかもしれないという、マイナスな感情があったはず。
(佐々木先輩はそれを乗り越えて、私に告白してくれたんだ――)
「ううっ、くっ……」
泣かせてみたいと言った先輩が、私のせいで泣いている姿に焦りを覚える。焦らないほうがおかしい。だけどそれよりもおかしいことは、佐々木先輩が私を好きだってことだろう。正直、趣味がいいとは思えない。
「佐々木先輩、あの……」
今まで挨拶以上の会話をかわしたことがなかった先輩。だからこそこれから相手を知るために、付き合ってみるのはアリかもしれない。そしてこのことにより、四菱商事の見合いの話を、堂々と断る理由になる!
「…………」
鼻から息を思いっきり吸い込み、吐き出す勢いを使って喋りかける。
「佐々木先輩とお付き合いしてもいいですよ。さっき言ったように、少しずつ距離を縮めていく感じでお願いします……」
「くくっ!」
抱きしめていた私をぽいっと放り出して、佐々木先輩はお腹を抱えながら爆笑した。大笑いする理由の見当がつかない私は、ぽかんとするしかなく――。
(近寄りがたいオーラを漂わせている大人ってイメージだったのに、こんなふうに笑ってるだけで、親近感が増していく不思議な人だな)
傍にある棚をバシバシ叩いて、大きな体を揺さぶり、なおも爆笑を続ける佐々木先輩を見つめるしかなかった。
「佐々木先輩、笑いすぎですよ。そんなふうに笑うようなこと、私は言った覚えがないのに」
ジト目で佐々木先輩を見上げながら呟いたら、メガネを外して涙を拭い、ふたたび吹き出す。
「佐々木先輩っ!」
「悪い悪い。間近で松尾の百面相を見ているのが、面白くてつい」
「はい?」
「それを見てるだけで、なにを考えてるのか手に取るようにわかってしまうものだから。とりあえず、付き合うことを決めてくれてありがとな」
きちんとメガネをかけ直してから、目の前に右手を差し出されたので、導かれるように握手した。佐々木先輩の大きな手が、私の右手をぎゅっと握りしめる。
「松尾が不安にならないように、ちょっとずつ距離を縮めていけばいいんだよな?」
「束縛されるのは苦手なので……」
「それじゃあまずは、見える形で俺の気持ちを表してやる」
佐々木先輩は、繋いだ右手をグイッと引き寄せた。
「ちょっ?」
引っ張られた衝撃は私の体を動かすほどじゃなく、右腕のみ動かされた。黙って佐々木先輩がすることを見つめたら、手首が露にされて、脈をとるところに唇が押しつけられる。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R18】ドS上司とヤンデレイケメンに毎晩種付けされた結果、泥沼三角関係に堕ちました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向けランキング31位、人気ランキング132位の記録達成※雪村里帆、性欲旺盛なアラサーOL。ブラック企業から転職した先の会社でドS歳下上司の宮野孝司と出会い、彼の事を考えながら毎晩自慰に耽る。ある日、中学時代に里帆に告白してきた同級生のイケメン・桜庭亮が里帆の部署に異動してきて…⁉︎ドキドキハラハラ淫猥不埒な雪村里帆のめまぐるしい二重恋愛生活が始まる…!優柔不断でドMな里帆は、ドS上司とヤンデレイケメンのどちらを選ぶのか…⁉︎
——もしも恋愛ドラマの濡れ場シーンがカット無しで放映されたら?という妄想も込めて執筆しました。長編です。
※連載当時のものです。
【R-18】私を乱す彼の指~お隣のイケメンマッサージ師くんに溺愛されています~【完結】
衣草 薫
恋愛
朋美が酔った勢いで注文した吸うタイプのアダルトグッズが、お隣の爽やかイケメン蓮の部屋に誤配されて大ピンチ。
でも蓮はそれを肩こり用のマッサージ器だと誤解して、マッサージ器を落として壊してしまったお詫びに朋美の肩をマッサージしたいと申し出る。
実は蓮は幼少期に朋美に恋して彼女を忘れられず、大人になって朋美を探し出してお隣に引っ越してきたのだった。
マッサージ師である蓮は大好きな朋美の体を施術と称して愛撫し、過去のトラウマから男性恐怖症であった朋美も蓮を相手に恐怖症を克服していくが……。
セックスシーンには※、
ハレンチなシーンには☆をつけています。
性欲の強すぎるヤクザに捕まった話
古亜
恋愛
中堅企業の普通のOL、沢木梢(さわきこずえ)はある日突然現れたチンピラ3人に、兄貴と呼ばれる人物のもとへ拉致されてしまう。
どうやら商売女と間違えられたらしく、人違いだと主張するも、兄貴とか呼ばれた男は聞く耳を持たない。
「美味しいピザをすぐデリバリーできるのに、わざわざコンビニのピザ風の惣菜パンを食べる人います?」
「たまには惣菜パンも悪くねぇ」
……嘘でしょ。
2019/11/4 33話+2話で本編完結
2021/1/15 書籍出版されました
2021/1/22 続き頑張ります
半分くらいR18な話なので予告はしません。
強引な描写含むので苦手な方はブラウザバックしてください。だいたいタイトル通りな感じなので、少しでも思ってたのと違う、地雷と思ったら即回れ右でお願いします。
誤字脱字、文章わかりにくい等の指摘は有り難く受け取り修正しますが、思った通りじゃない生理的に無理といった内容については自衛に留め批判否定はご遠慮ください。泣きます。
当然の事ながら、この話はフィクションです。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる