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煌めくルビーに魅せられて番外編 吸血鬼の執愛

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 瑞稀の頭に顎を乗せたままの俺に、静かな声がかけられる。

「マサさん、俺がいない間に、なんで呑気にナンパされてるんですか」

「でも瑞稀が追っ払ってくれたから、一安心したところだよ」

 ふたたびアイスコーヒーを飲むべく、ベンチに腰かけた。

「もっと危機感を持ってください」

「んう?」

「ご自分がイケメンなこと、わかってます?」

 水筒を口にしたままの俺に、不機嫌な表情の瑞稀が腰を屈めて顔を寄せる。

「30過ぎのおじさんを相手にするのは、君くらいだと思うけどね」

「マサさんは、30過ぎのおじさんに見えないんです。20代で通用するから、ああやってナンパされてるっていうのに、もう!」

「どうしたら機嫌を直してくれるだろうか?」

 言いながら立ったままの彼の袖を引っ張り、隣に座るように促した。すると白けた横目で俺の顔を見つつ、仕方なさそうにベンチに座る。

「瑞稀ありがと、アイスコーヒー美味いよ」

「そうですか。良かったですね」

「瑞稀もなにか飲む?」

 連続でアトラクションに乗って、きっと喉が渇いているであろう恋人に、もう一本の水筒を手渡そうと考え、リュックに手をかけた。すると俺の手に瑞稀の手がすぐさま重ねられ、動きを止められる。

「マサさんが飲んでるアイスコーヒー、一口ください」

「えっ?」

 リュックに注いでいた視線を隣に移動させたら、顔を横に背けた姿が目に映る。頬を少しだけ赤く染めて固まった瑞稀の態度で、さっきの女性たちに嫉妬しているのが、イヤでもわかってしまった。

 重ねられた瑞稀の手に、持っているアイスコーヒーの水筒を、そっと手渡す。

「どうぞ。ブラックでいいのかい?」

「はい、大丈夫です……」

 肩をすぼめて躰を小さくし、困った様相で水筒に口をつけたタイミングで話しかけた。

「間接キスで飲むアイスコーヒーは、また格別だろう?」

「ぶっ!」

 アイスコーヒーを吹き出しはしなかったものの、さっきよりも頬を赤くした瑞稀は、目を白黒させて俺を見上げる。

「俺としては瑞稀との仲を、もっと見せつけたかったけどね」

「マサさんの仕事場にもなってるところで、そういうのはしないほうがいいと思います」

「俺の立場を考えてくれる君は、俺なんかよりも大人かもしれないな。ここが職場のこと、すっかり忘れていたよ」

 カラカラ笑ってみせた俺の隣で、瑞稀は静かにアイスコーヒーを飲む。

「マサさん俺ね、実はアイスコーヒーというか、コーヒー自体あまり得意ではないんです」

「え?  じゃあどうして――」

「ここでは、マサさんとの仲を悟られないようにしなきゃいけない場所なので、自分なりにできる接触をしたというか」

 ほかにもいいわけじみたことを口にする瑞稀を見ているだけで、頬が自然と緩んでしまう。

「時間には少し早いが、お弁当を食べないか? 瑞稀が作ってくれた唐揚げを、早く食べてみたくて」

「いいですよ。じゃああっちの日影があるベンチに移動したら、ゆっくりできるかも!」

 瑞稀のナイスな提案に頷き、指定されたところに一緒に向かったのだった。
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