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煌めくルビーに魅せられて番外編 吸血鬼の執愛
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湯に入ったあとを示すように、ほかほかしている瑞稀の手に、ミネラルウォーターのペットボトルを握らせる。
「お疲れ様、さぁここに座って。濡れた髪を乾かしてあげる」
「そんなの、放っておいても勝手に乾くのに」
「慣れない俺の家で風邪でも引いたら、明日のデートが台無しになるが、それでもいいのかい?」
テンポよく会話をかわしている間に、ドライヤーを用意。それを瑞稀の目の前に見せつけた。
「マサさん、風邪を引きたくないので、お願いシマス……」
「お願いされました」
食卓テーブルの椅子にちょこんと座り、ペットボトルを両手で握りしめる瑞稀の髪に触れながら、ドライヤーの温風を当てた。少しだけクセのある黒髪が早く乾くように、手際よくセットしていく。
「んっ」
目をつぶって、俺にされるがままでいる瑞稀。後頭部から首筋のラインや、耳の傍などがくすぐったいらしく、小さな呻き声をあげたり、体をビクつかせたりする姿で、否応なしに胸の奥がざわついた。
湯上りだからか、見るからに肌がしっとりしていて、まっすぐなラインの首筋に牙を突き立てたくなり、口内に溢れる生唾を何度も飲み込む。
「よし、美丈夫な瑞稀のできあがり!」
「美丈夫じゃないのに褒めすぎですよ。ありがとうございます」
ドライヤーのコードを片付けていると、照れた瑞稀は持っていたペットボトルの水を勢いよく飲む。水を飲むたびに動く喉仏――美味しそうに飲んでいるだけなのに、違うものに変換されてしまうのは、俺が瑞稀を欲しているせいだろう。
(瑞稀に似合うと思って購入したパジャマも、想像以上にピッタリで、今すぐに手を出したくなる)
「マサさん?」
声をかけられて、自分の手が止まっていることに、はじめて気づいた。
「な、なんだい?」
静かなリビングに響いたキョドる声は、間違いなく瑞稀の耳に不審に聞こえただろう。
「俺がしてほしいこと、わかりましたか?」
ドライヤーを片づける手が滑り、ガチャンとうるさい異音をたてた。まるで俺の心を表すもののようで、余計に落ち着きをなくす。
「わ、悪い。なかなか思いつかなくて」
瑞稀に背を向けて話をしているので、卑猥なことを考えついた顔を見せなくて済むことに内心安堵していた。そんな俺に、瑞稀は静かに語りかける。
「俺はね、マサさん――」
少しずつ大好きな彼の声が近づき、そして細い二の腕が俺の背中にぎゅっと抱きついた。
「アナタのことを、もっと知りたいです。苦労した過去をひっくるめて、マサさんを好きになりたい」
慈愛に満ちたセリフを聞いた瞬間、こみあげるものが涙腺を緩ませる。それをぐっと堪えて、抱きしめる瑞稀の腕に触れた。熱烈な愛の告白ではないが、瑞稀らしい優しさを感じさせる告白に、真摯に答えたいと切に思った。
「わかった。話はきっと長くなる。ベッドで横になりながら教えてあげよう」
触れている瑞稀の腕をとり、寝室へと誘う。ほの暗い過去の俺を知った瑞稀は、どう思うだろうか。
苦労した過去をひっくるめて好きになりたいといった彼に、真実を打ち明けることは容易じゃなかったが、ベッドにふたり仲良く横になったら、重たい口が自然と過去を語りだした――。
湯に入ったあとを示すように、ほかほかしている瑞稀の手に、ミネラルウォーターのペットボトルを握らせる。
「お疲れ様、さぁここに座って。濡れた髪を乾かしてあげる」
「そんなの、放っておいても勝手に乾くのに」
「慣れない俺の家で風邪でも引いたら、明日のデートが台無しになるが、それでもいいのかい?」
テンポよく会話をかわしている間に、ドライヤーを用意。それを瑞稀の目の前に見せつけた。
「マサさん、風邪を引きたくないので、お願いシマス……」
「お願いされました」
食卓テーブルの椅子にちょこんと座り、ペットボトルを両手で握りしめる瑞稀の髪に触れながら、ドライヤーの温風を当てた。少しだけクセのある黒髪が早く乾くように、手際よくセットしていく。
「んっ」
目をつぶって、俺にされるがままでいる瑞稀。後頭部から首筋のラインや、耳の傍などがくすぐったいらしく、小さな呻き声をあげたり、体をビクつかせたりする姿で、否応なしに胸の奥がざわついた。
湯上りだからか、見るからに肌がしっとりしていて、まっすぐなラインの首筋に牙を突き立てたくなり、口内に溢れる生唾を何度も飲み込む。
「よし、美丈夫な瑞稀のできあがり!」
「美丈夫じゃないのに褒めすぎですよ。ありがとうございます」
ドライヤーのコードを片付けていると、照れた瑞稀は持っていたペットボトルの水を勢いよく飲む。水を飲むたびに動く喉仏――美味しそうに飲んでいるだけなのに、違うものに変換されてしまうのは、俺が瑞稀を欲しているせいだろう。
(瑞稀に似合うと思って購入したパジャマも、想像以上にピッタリで、今すぐに手を出したくなる)
「マサさん?」
声をかけられて、自分の手が止まっていることに、はじめて気づいた。
「な、なんだい?」
静かなリビングに響いたキョドる声は、間違いなく瑞稀の耳に不審に聞こえただろう。
「俺がしてほしいこと、わかりましたか?」
ドライヤーを片づける手が滑り、ガチャンとうるさい異音をたてた。まるで俺の心を表すもののようで、余計に落ち着きをなくす。
「わ、悪い。なかなか思いつかなくて」
瑞稀に背を向けて話をしているので、卑猥なことを考えついた顔を見せなくて済むことに内心安堵していた。そんな俺に、瑞稀は静かに語りかける。
「俺はね、マサさん――」
少しずつ大好きな彼の声が近づき、そして細い二の腕が俺の背中にぎゅっと抱きついた。
「アナタのことを、もっと知りたいです。苦労した過去をひっくるめて、マサさんを好きになりたい」
慈愛に満ちたセリフを聞いた瞬間、こみあげるものが涙腺を緩ませる。それをぐっと堪えて、抱きしめる瑞稀の腕に触れた。熱烈な愛の告白ではないが、瑞稀らしい優しさを感じさせる告白に、真摯に答えたいと切に思った。
「わかった。話はきっと長くなる。ベッドで横になりながら教えてあげよう」
触れている瑞稀の腕をとり、寝室へと誘う。ほの暗い過去の俺を知った瑞稀は、どう思うだろうか。
苦労した過去をひっくるめて好きになりたいといった彼に、真実を打ち明けることは容易じゃなかったが、ベッドにふたり仲良く横になったら、重たい口が自然と過去を語りだした――。
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