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危愛
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「じゃあ、また明日」
爽やかに言って、マットは帰って行った。
せっかくふたりで初めてお出かけしたのに店員に兄妹と間違われ、気分最悪の最中だったのに、マットの撫でなで攻撃に見事丸め込まれてしまった。
帰り際に何かあるかもしれないとドキドキしながら待ってたのに、何もないまま終了――繋いでた手の温もりが、一気に冷めていく。
「もうちょっとくらい、積極的になってくれてもいいのに」
ガッカリしながら家に入ると、ニコニコしたおじいちゃんが出迎えてくれた。
「おかえり。ちょっと話があるんだが、こっちに来てくれないかい?」
おじいちゃんの書斎に入ると、机の上には何枚かの履歴書が置かれていた。何でか、ホモ山田の履歴書もあるし……
パラパラとそれらを見ていると、おじいちゃんに声をかけられる。
「その中で、気になる男はいないかい?」
「これ、会社の人間ばかりだよね。何人か知ってるのがいる」
年齢は全て20代から30代前半、すべて独身者である。
「この間会議をした時に、重役達に声をかけてみたんだ。どれも将来有望な若者ばかりだよ」
つまり、お見合い写真なワケなんだ。
ホモ山田の履歴書を手に取ってまじまじと読んでいると、手元を覗き込むおじいちゃん。
「ああ、それは今川部長が推薦した男だね」
マット、自分を推薦しろよ! なぜ山田を推薦するかな。
「とりあえず、コレでいいわ」
山田の履歴書を押し付けるように、おじいちゃんに渡した。
「山田賢一くんか……。おじいちゃんは彼の方が、蓮に合ってると思うがな」
そう言って見せてくれたのは、今川貴弘の履歴書だった。この間の合コンで話しかけられたけど、チャラい感じがしてスルーした男だ。
「今川部長の甥っ子だよ。専務が勧めてくれたんだから、間違いないんじゃないかな」
「山田でいい。見た目より中身がしっかりしたヤツの方が安心するから」
こっそり溜め息をつきながら考える。
マットはどうして、自分の事を言わなかったんだろう。私と付き合う事になりましたって、ばばんと宣言すれば、おじいちゃんがこんな、ムダになる履歴書を用意しなくてすんだのに。
明日お昼にとっちめてあげよう。奥手な彼氏をもつと、恋人として大変だ――
「じゃあ、また明日」
爽やかに言って、マットは帰って行った。
せっかくふたりで初めてお出かけしたのに店員に兄妹と間違われ、気分最悪の最中だったのに、マットの撫でなで攻撃に見事丸め込まれてしまった。
帰り際に何かあるかもしれないとドキドキしながら待ってたのに、何もないまま終了――繋いでた手の温もりが、一気に冷めていく。
「もうちょっとくらい、積極的になってくれてもいいのに」
ガッカリしながら家に入ると、ニコニコしたおじいちゃんが出迎えてくれた。
「おかえり。ちょっと話があるんだが、こっちに来てくれないかい?」
おじいちゃんの書斎に入ると、机の上には何枚かの履歴書が置かれていた。何でか、ホモ山田の履歴書もあるし……
パラパラとそれらを見ていると、おじいちゃんに声をかけられる。
「その中で、気になる男はいないかい?」
「これ、会社の人間ばかりだよね。何人か知ってるのがいる」
年齢は全て20代から30代前半、すべて独身者である。
「この間会議をした時に、重役達に声をかけてみたんだ。どれも将来有望な若者ばかりだよ」
つまり、お見合い写真なワケなんだ。
ホモ山田の履歴書を手に取ってまじまじと読んでいると、手元を覗き込むおじいちゃん。
「ああ、それは今川部長が推薦した男だね」
マット、自分を推薦しろよ! なぜ山田を推薦するかな。
「とりあえず、コレでいいわ」
山田の履歴書を押し付けるように、おじいちゃんに渡した。
「山田賢一くんか……。おじいちゃんは彼の方が、蓮に合ってると思うがな」
そう言って見せてくれたのは、今川貴弘の履歴書だった。この間の合コンで話しかけられたけど、チャラい感じがしてスルーした男だ。
「今川部長の甥っ子だよ。専務が勧めてくれたんだから、間違いないんじゃないかな」
「山田でいい。見た目より中身がしっかりしたヤツの方が安心するから」
こっそり溜め息をつきながら考える。
マットはどうして、自分の事を言わなかったんだろう。私と付き合う事になりましたって、ばばんと宣言すれば、おじいちゃんがこんな、ムダになる履歴書を用意しなくてすんだのに。
明日お昼にとっちめてあげよう。奥手な彼氏をもつと、恋人として大変だ――
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