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告白
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朝の重い気持ちを吹っ切るように、颯爽と会議室に向かう。今日のお弁当は、焼き魚がメインの自信作。ちくわとにんじんの煮物に、えのきとピーマンの炒め物。ご飯も鰹節と醤油をまぶした、俵型のおにぎりにしてみた。
「美味しいです」
今川部長のその言葉を聞くだけで、天にも昇る気持ちになれる。毎晩お弁当の仕込みをするのも、その言葉が聞けるようにと無性に頑張れた。
良いお嫁さんになれるね――って言われたらどうしよう! さすがにこの言葉は言ってくれないか。
ひとりでツッコミながら、ポツンと会議室で待つ。
「どうしたんだろ、今日はやけに遅いな……」
仕事で何か、トラブルでもあったんだろうか。
不安になりかけたその時、ゆっくりと扉が開いて今川部長が入ってきた。
「こんにちは……」
ほっとしながら挨拶をする。
「こんにちは。申し訳ないけど、今日は一緒に弁当食べられないんです」
傍まで来て自分のお弁当を机に置き、私のお弁当を手に取った。
「忙しいなら、仕方ないですよ」
内心ガックリしながら言うと、なぜか頭を撫でる。普段そんな事をしないのに、一体どうしたんだろ?
目を丸くして今川部長の顔を見つめると、なぜだか頬がちょっとだけ赤くなっていた。
「ちゃんと出先で、しっかり食べるから。君の手料理……」
「はい、お仕事頑張って下さいね!」
微笑みながら応援したら頷いたあと、逃げるようにバタバタ足音を立てて会議室を出て行った。
何だかいつもと様子が違う感じ……。違和感ありまくり。忙しいせいなのかな――
お弁当袋の結び目を解いて、ため息をつく。ひとりで食べるのは寂しいけど、しょうがないよね。
さて今日はどんなお弁当なんだろう、ワクワク。
気分を変えて、ぱかっと蓋を開けたら――
「……っ!」
あまりに衝撃的な中身に、蓋を閉じた。コレはいったい?
もう一度蓋を開けて、まじまじと確認してみる。
煎り卵とひき肉の二色ご飯の真ん中に、さくらでんぶでキレイなハートが描かれていた。その上に海苔を使って、文字が書かれていたのである。
『スキダ』
――どうしよう、どうしよう。
これ食べられないよ。写メ撮らなきゃって、デスクの上にスマホを置きっぱなしにしてきちゃった。
頭が混乱して、どうしていいか分からない。冗談でこんな事をする人じゃないから、これってアレだよね。
急いで廊下に出てみるが、当然今川部長の姿はない。また会議室に戻る私。
午後の始業時間まで、あと10分――嬉し泣きしながらお弁当を食べた。ドキドキしすぎて、味なんて分からない。
明日会ったら、まず何て言ったらいいのかな。
幸せすぎて怖いよ――
朝の重い気持ちを吹っ切るように、颯爽と会議室に向かう。今日のお弁当は、焼き魚がメインの自信作。ちくわとにんじんの煮物に、えのきとピーマンの炒め物。ご飯も鰹節と醤油をまぶした、俵型のおにぎりにしてみた。
「美味しいです」
今川部長のその言葉を聞くだけで、天にも昇る気持ちになれる。毎晩お弁当の仕込みをするのも、その言葉が聞けるようにと無性に頑張れた。
良いお嫁さんになれるね――って言われたらどうしよう! さすがにこの言葉は言ってくれないか。
ひとりでツッコミながら、ポツンと会議室で待つ。
「どうしたんだろ、今日はやけに遅いな……」
仕事で何か、トラブルでもあったんだろうか。
不安になりかけたその時、ゆっくりと扉が開いて今川部長が入ってきた。
「こんにちは……」
ほっとしながら挨拶をする。
「こんにちは。申し訳ないけど、今日は一緒に弁当食べられないんです」
傍まで来て自分のお弁当を机に置き、私のお弁当を手に取った。
「忙しいなら、仕方ないですよ」
内心ガックリしながら言うと、なぜか頭を撫でる。普段そんな事をしないのに、一体どうしたんだろ?
目を丸くして今川部長の顔を見つめると、なぜだか頬がちょっとだけ赤くなっていた。
「ちゃんと出先で、しっかり食べるから。君の手料理……」
「はい、お仕事頑張って下さいね!」
微笑みながら応援したら頷いたあと、逃げるようにバタバタ足音を立てて会議室を出て行った。
何だかいつもと様子が違う感じ……。違和感ありまくり。忙しいせいなのかな――
お弁当袋の結び目を解いて、ため息をつく。ひとりで食べるのは寂しいけど、しょうがないよね。
さて今日はどんなお弁当なんだろう、ワクワク。
気分を変えて、ぱかっと蓋を開けたら――
「……っ!」
あまりに衝撃的な中身に、蓋を閉じた。コレはいったい?
もう一度蓋を開けて、まじまじと確認してみる。
煎り卵とひき肉の二色ご飯の真ん中に、さくらでんぶでキレイなハートが描かれていた。その上に海苔を使って、文字が書かれていたのである。
『スキダ』
――どうしよう、どうしよう。
これ食べられないよ。写メ撮らなきゃって、デスクの上にスマホを置きっぱなしにしてきちゃった。
頭が混乱して、どうしていいか分からない。冗談でこんな事をする人じゃないから、これってアレだよね。
急いで廊下に出てみるが、当然今川部長の姿はない。また会議室に戻る私。
午後の始業時間まで、あと10分――嬉し泣きしながらお弁当を食べた。ドキドキしすぎて、味なんて分からない。
明日会ったら、まず何て言ったらいいのかな。
幸せすぎて怖いよ――
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