46 / 89
白熱する選挙戦に、この想いを込めて――
4
しおりを挟む
「ぷっ! 面白そうなヤツが来るんだね。どんな男なのか、ちょっと楽しみかもしれない」
なんて、のん気な顔をして言い放った。俺の心配する気持ちが、全然分かっていない言葉に、どうにも落胆を隠せなかったんだ。
それがあったせいで昨日、あんな風にしつこく何度も抱いてしまった――
しかもまだ気持ちの切り替えが上手くいかない中で、問題の選挙プランナーと顔を合わせることになるなんてな。
軽くため息をつき、渋々扉へと視線を飛ばしてみた。
「四国から直接ここに来たものですから、身なりがなっていなくてすみません」
足元にリュックサックとアタッシュケースを置き、顔を上げながら姿勢を正す姿に、事務所にいた者たちは皆、彼に視線を向けざるおえない。
見境なく相手に手を出すと聞いていたから、どれくらいチャラチャラした男なんだろうかと想像していたのだが、その期待を見事に打ち砕かれてしまった。
身なりがなっていないと言っていたのに、体のラインに合っている仕立ての良さそうなスーツに、グレーのカラーシャツといういで立ちは、自分の方が身なりがなっていないと思わされる。
それだけじゃなく暗めの茶髪に銀縁のメガネからは、真面目そうな印象を受けるだけじゃなく、隙を見せないきちんとした姿勢や物言いも、好青年という感じだ。
出来過ぎた彼を陥れるべく、誰かがデマでも流しているんじゃないか!?
「はじめまして!! この度、革新党の要請を受けてこちらに参りました、二階堂 はじめと申します」
ぺこりと一礼をしてから足元のカバンをそのままに、上座にいる稜の元へと靴音を立てて歩いていく。突然現れた好青年に、誰も声をかけられず、何が起こるんだろうと見守るしかなかった。
「二階堂さん、はじめまして。これから――」
にこやかに微笑み、挨拶をした稜に向かって首を振る。
「お話の前に二、三聞きたいことがあります。答えていただきたい。その返答によってはこのお話を、なかったことに致しますので」
(何を考えているんだ、この男は)
「稜……」
どうにも心配になり駆け寄ろうとしたら、真顔になった稜が無言のまま、左手を突き出して俺の動きを止める。
そんな手の動きから、二階堂は視線を移してこっちを見、どこか蔑むような眼差しを飛ばしてきた。
「ああ……貴方は、彼の恋人でしたっけ? 部外者はこの件について、立ち入らないでいただきたい」
「部外者じゃない、俺はちゃんとし」
「相田さんっ、大丈夫だから。俺がきちんと、答えればいいだけの話でしょ!」
苛立ちを含んだ稜の台詞に、心配した気持ちに冷水を浴びせられてしまったせいで、口を引き結ぶしかない。
なんて、のん気な顔をして言い放った。俺の心配する気持ちが、全然分かっていない言葉に、どうにも落胆を隠せなかったんだ。
それがあったせいで昨日、あんな風にしつこく何度も抱いてしまった――
しかもまだ気持ちの切り替えが上手くいかない中で、問題の選挙プランナーと顔を合わせることになるなんてな。
軽くため息をつき、渋々扉へと視線を飛ばしてみた。
「四国から直接ここに来たものですから、身なりがなっていなくてすみません」
足元にリュックサックとアタッシュケースを置き、顔を上げながら姿勢を正す姿に、事務所にいた者たちは皆、彼に視線を向けざるおえない。
見境なく相手に手を出すと聞いていたから、どれくらいチャラチャラした男なんだろうかと想像していたのだが、その期待を見事に打ち砕かれてしまった。
身なりがなっていないと言っていたのに、体のラインに合っている仕立ての良さそうなスーツに、グレーのカラーシャツといういで立ちは、自分の方が身なりがなっていないと思わされる。
それだけじゃなく暗めの茶髪に銀縁のメガネからは、真面目そうな印象を受けるだけじゃなく、隙を見せないきちんとした姿勢や物言いも、好青年という感じだ。
出来過ぎた彼を陥れるべく、誰かがデマでも流しているんじゃないか!?
「はじめまして!! この度、革新党の要請を受けてこちらに参りました、二階堂 はじめと申します」
ぺこりと一礼をしてから足元のカバンをそのままに、上座にいる稜の元へと靴音を立てて歩いていく。突然現れた好青年に、誰も声をかけられず、何が起こるんだろうと見守るしかなかった。
「二階堂さん、はじめまして。これから――」
にこやかに微笑み、挨拶をした稜に向かって首を振る。
「お話の前に二、三聞きたいことがあります。答えていただきたい。その返答によってはこのお話を、なかったことに致しますので」
(何を考えているんだ、この男は)
「稜……」
どうにも心配になり駆け寄ろうとしたら、真顔になった稜が無言のまま、左手を突き出して俺の動きを止める。
そんな手の動きから、二階堂は視線を移してこっちを見、どこか蔑むような眼差しを飛ばしてきた。
「ああ……貴方は、彼の恋人でしたっけ? 部外者はこの件について、立ち入らないでいただきたい」
「部外者じゃない、俺はちゃんとし」
「相田さんっ、大丈夫だから。俺がきちんと、答えればいいだけの話でしょ!」
苛立ちを含んだ稜の台詞に、心配した気持ちに冷水を浴びせられてしまったせいで、口を引き結ぶしかない。
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】少年王が望むは…
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
シュミレ国―――北の山脈に背を守られ、南の海が恵みを運ぶ国。
15歳の少年王エリヤは即位したばかりだった。両親を暗殺された彼を支えるは、執政ウィリアム一人。他の誰も信頼しない少年王は、彼に心を寄せていく。
恋ほど薄情ではなく、愛と呼ぶには尊敬や崇拝の感情が強すぎる―――小さな我侭すら戸惑うエリヤを、ウィリアムは幸せに出来るのか?
【注意事項】BL、R15、キスシーンあり、性的描写なし
【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう、カクヨム
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
理香は俺のカノジョじゃねえ
中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。
僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる