2 / 13
Come, say yes:ネットでの再会2
しおりを挟む
***
「兄ちゃん、起きてよ。ねえってば!」
「――んあ? 何だよ透馬……今、何時だ?」
ゆさゆさ体を揺さぶられ、しぶしぶ目を擦りながら、枕元に置いてあるスマホへやっと手を伸ばす。
「……3時ってお前、こんな時間に何で、起こされなきゃならないんだ」
「しょうがないだろ、ローランドが兄ちゃんに話あるから代われって、言っててさ。俺の部屋に来てよ」
急かすように俺の腕を引っ張り、強引に布団から引きずり出された。
ローランドが俺に話って、間違いなくアンディ絡みだろう。
「透馬……いつの間にローランドと、仲良しさんになったんだ?」
さっさと俺の部屋を出て、隣にある自分の部屋に入ろうとした透馬に話しかけると、扉を開けながら振り返り、ちょっと照れたような顔をした。
「えっと、アンドリュー王子の病院に行った次の日に、いきなり携帯に電話がかかってきて、世間話してから」
「どうしてお前の番号、分かったんだろうな」
つっこむべき問題は、そこじゃないか。
「それよりもここに座ってよ。ローランド待たせてるんだから」
勉強机の上に透馬専用のノートパソコンが設置され、モニターには不機嫌な顔をしたローランドが、じーっとこちらを見ていた。
「ロウ、兄ちゃん連れて来たよ。じゃあ俺、これからランニングしてくるから」
さりげなくローランドを愛称で呼んだ透馬は、俺の肩をポンポン叩いてから、颯爽と部屋を出ていく。
ローランドの雰囲気に、ビビった俺。透馬に放った、助けてくれの視線は、華麗に無視されてしまった。
寝起きのボサボサの髪で顔を引きつらせた俺を、呆れた眼差しで見つめるローランド。
「――相変わらず、酷い顔をしているな和馬。久しぶり」
「お久しぶりです、ローランド……。お元気そうでなにより」
以前病院で逢った時よりも、ぐぐっと威厳が増してる気がする。
「何をビクビクしているのだ、取って食ったりしないぞ。小者め」
愛情を感じるアンディの言葉遣いに対し、ローランドは辛辣な言葉遣いで俺に向かって、猛毒を吐いてると思われる。自分の大事な兄をたぶらかしてる、俺だからだろうけど。
同じ気持ちで今、ローランドをじっと見つめた。もしかして透馬に対して、好意を抱いているのではないかと、不安な気持ちになったから。
「透馬とやり取りしてるんですね。全然知らなかったです」
「ああ、いろいろ相談事に、乗ってもらっているからな。知らなかったのか?」
「初耳、です……」
交友関係に対して、わざわざ俺に報告しなくてもいいんだが――表向き一応、兄の友人の弟(しかも王子様だぜ)と交流があるのは、知らせた方がいいんじゃないか透馬くん。
俺が放つ、猜疑心を含んだ眼差しに、画面越しでチッと舌打ちした。
「貴様、激しく勘違いしてるだろ。俺にはそういう趣味ないからな!」
悪かったな、そういう趣味してて。俺はひとりの男として、アンディが好きなんだよ。
「いつもこの時間帯に逢って、話をしてるんですか?」
「俺も忙しい身だから、毎日というワケにいかないが。それがどうかしたのか?」
受験生の透馬、夜遅くまで、勉強してるハズなんだ。毎日でなくても、この時間帯は絶対にキツいと思う。友達の為にそこまで、出来るものだろうか?
「ローランドもし、透馬が告白してきたら、どうしますか?」
「はあ!? そんな事あるワケなかろう。自分がそうだからって、弟まで変な道に染めたいのかお前は」
超絶呆れたと言わんばかりに両手をW型にし、首を横に振る。
世の中絶対なんて、あり得ないんだよ。自分で実証済みだからこそ、この言葉を言ってみたのだ。
「こんなくだらない話をするのに、呼び出したんじゃないぞ俺は。お前にお願いがあってな」
お願いの台詞に、自然と顔を引きつらせた。心がズーンと重くなる。アンディのお願いの時は、ヒモになれと言われたから。まさか……
「透馬が欲しいのだ、だから説得して欲しくて」
「やっぱりっ! そういう目で透馬を見てるんじゃないか」
「そういう目って、違うのだ! あ~もう、日本語は厄介だぞ……」
何やらブツブツ英語を喋り、肩まである栗色の髪を苛立ち気に耳に掛けながら、
「透馬の体が欲しいんじゃなく、能力が欲しいのだ。俺の傍で働いて欲しくてな」
「そんなに能力、高いんでしょうかね?」
ごくごく普通の、中学生だと思うんだが。
「和馬……陰ながら透馬がお前の事を支えているのが、分からないのか? 俺に対する態度や、接し方一つとっても一級品だぞ」
昔からドジばかりしてるから、透馬に支えられてるの分かってますよ。言われなくても。
「透馬はまだ中学生ですよ、欲しいと言われてもですね」
「鉄は、熱いうちに鍛えよと言うではないか。俺が透馬の持つ才能を、最大限に引き出す事が出来るのだぞ。兄として鼻が高いだろう?」
うへぇ――俺にそんな事、お願いされても正直困る。さすが兄弟だよ、変な頼みごとをするトコが。
「ええっと、その話は透馬にしてるんですよね?」
困った顔をしながら渋々訊ねると、モニターの向こうでも同じように、困った顔をしたローランド。
「俺の誘いに、Yesと言ってくれなくてな。理由を聞いても言葉を濁して、教えてくれないのだ。何か心当たりはないだろうか?」
「そんな事、急に言われても。う~ん」
「鈍くさいお前に、訊ねたのが間違いだった、もういい。ただ透馬を説得してくれればいいから。兄のお前なら出来るだろう?」
「ちょ……それは――」
「無論タダでとは言わん。きちんと報酬前払いにしてやるからな」
「兄ちゃん、起きてよ。ねえってば!」
「――んあ? 何だよ透馬……今、何時だ?」
ゆさゆさ体を揺さぶられ、しぶしぶ目を擦りながら、枕元に置いてあるスマホへやっと手を伸ばす。
「……3時ってお前、こんな時間に何で、起こされなきゃならないんだ」
「しょうがないだろ、ローランドが兄ちゃんに話あるから代われって、言っててさ。俺の部屋に来てよ」
急かすように俺の腕を引っ張り、強引に布団から引きずり出された。
ローランドが俺に話って、間違いなくアンディ絡みだろう。
「透馬……いつの間にローランドと、仲良しさんになったんだ?」
さっさと俺の部屋を出て、隣にある自分の部屋に入ろうとした透馬に話しかけると、扉を開けながら振り返り、ちょっと照れたような顔をした。
「えっと、アンドリュー王子の病院に行った次の日に、いきなり携帯に電話がかかってきて、世間話してから」
「どうしてお前の番号、分かったんだろうな」
つっこむべき問題は、そこじゃないか。
「それよりもここに座ってよ。ローランド待たせてるんだから」
勉強机の上に透馬専用のノートパソコンが設置され、モニターには不機嫌な顔をしたローランドが、じーっとこちらを見ていた。
「ロウ、兄ちゃん連れて来たよ。じゃあ俺、これからランニングしてくるから」
さりげなくローランドを愛称で呼んだ透馬は、俺の肩をポンポン叩いてから、颯爽と部屋を出ていく。
ローランドの雰囲気に、ビビった俺。透馬に放った、助けてくれの視線は、華麗に無視されてしまった。
寝起きのボサボサの髪で顔を引きつらせた俺を、呆れた眼差しで見つめるローランド。
「――相変わらず、酷い顔をしているな和馬。久しぶり」
「お久しぶりです、ローランド……。お元気そうでなにより」
以前病院で逢った時よりも、ぐぐっと威厳が増してる気がする。
「何をビクビクしているのだ、取って食ったりしないぞ。小者め」
愛情を感じるアンディの言葉遣いに対し、ローランドは辛辣な言葉遣いで俺に向かって、猛毒を吐いてると思われる。自分の大事な兄をたぶらかしてる、俺だからだろうけど。
同じ気持ちで今、ローランドをじっと見つめた。もしかして透馬に対して、好意を抱いているのではないかと、不安な気持ちになったから。
「透馬とやり取りしてるんですね。全然知らなかったです」
「ああ、いろいろ相談事に、乗ってもらっているからな。知らなかったのか?」
「初耳、です……」
交友関係に対して、わざわざ俺に報告しなくてもいいんだが――表向き一応、兄の友人の弟(しかも王子様だぜ)と交流があるのは、知らせた方がいいんじゃないか透馬くん。
俺が放つ、猜疑心を含んだ眼差しに、画面越しでチッと舌打ちした。
「貴様、激しく勘違いしてるだろ。俺にはそういう趣味ないからな!」
悪かったな、そういう趣味してて。俺はひとりの男として、アンディが好きなんだよ。
「いつもこの時間帯に逢って、話をしてるんですか?」
「俺も忙しい身だから、毎日というワケにいかないが。それがどうかしたのか?」
受験生の透馬、夜遅くまで、勉強してるハズなんだ。毎日でなくても、この時間帯は絶対にキツいと思う。友達の為にそこまで、出来るものだろうか?
「ローランドもし、透馬が告白してきたら、どうしますか?」
「はあ!? そんな事あるワケなかろう。自分がそうだからって、弟まで変な道に染めたいのかお前は」
超絶呆れたと言わんばかりに両手をW型にし、首を横に振る。
世の中絶対なんて、あり得ないんだよ。自分で実証済みだからこそ、この言葉を言ってみたのだ。
「こんなくだらない話をするのに、呼び出したんじゃないぞ俺は。お前にお願いがあってな」
お願いの台詞に、自然と顔を引きつらせた。心がズーンと重くなる。アンディのお願いの時は、ヒモになれと言われたから。まさか……
「透馬が欲しいのだ、だから説得して欲しくて」
「やっぱりっ! そういう目で透馬を見てるんじゃないか」
「そういう目って、違うのだ! あ~もう、日本語は厄介だぞ……」
何やらブツブツ英語を喋り、肩まである栗色の髪を苛立ち気に耳に掛けながら、
「透馬の体が欲しいんじゃなく、能力が欲しいのだ。俺の傍で働いて欲しくてな」
「そんなに能力、高いんでしょうかね?」
ごくごく普通の、中学生だと思うんだが。
「和馬……陰ながら透馬がお前の事を支えているのが、分からないのか? 俺に対する態度や、接し方一つとっても一級品だぞ」
昔からドジばかりしてるから、透馬に支えられてるの分かってますよ。言われなくても。
「透馬はまだ中学生ですよ、欲しいと言われてもですね」
「鉄は、熱いうちに鍛えよと言うではないか。俺が透馬の持つ才能を、最大限に引き出す事が出来るのだぞ。兄として鼻が高いだろう?」
うへぇ――俺にそんな事、お願いされても正直困る。さすが兄弟だよ、変な頼みごとをするトコが。
「ええっと、その話は透馬にしてるんですよね?」
困った顔をしながら渋々訊ねると、モニターの向こうでも同じように、困った顔をしたローランド。
「俺の誘いに、Yesと言ってくれなくてな。理由を聞いても言葉を濁して、教えてくれないのだ。何か心当たりはないだろうか?」
「そんな事、急に言われても。う~ん」
「鈍くさいお前に、訊ねたのが間違いだった、もういい。ただ透馬を説得してくれればいいから。兄のお前なら出来るだろう?」
「ちょ……それは――」
「無論タダでとは言わん。きちんと報酬前払いにしてやるからな」
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
保育士だっておしっこするもん!
こじらせた処女
BL
男性保育士さんが漏らしている話。ただただ頭悪い小説です。
保育士の道に進み、とある保育園に勤めている尾北和樹は、新人で戸惑いながらも、やりがいを感じながら仕事をこなしていた。
しかし、男性保育士というものはまだまだ珍しく浸透していない。それでも和樹が通う園にはもう一人、男性保育士がいた。名前は多田木遼、2つ年上。
園児と一緒に用を足すな。ある日の朝礼で受けた注意は、尾北和樹に向けられたものだった。他の女性職員の前で言われて顔を真っ赤にする和樹に、気にしないように、と多田木はいうが、保護者からのクレームだ。信用問題に関わり、同性職員の多田木にも迷惑をかけてしまう、そう思い、その日から3階の隅にある職員トイレを使うようになった。
しかし、尾北は一日中トイレに行かなくても平気な多田木とは違い、3時間に一回行かないと限界を迎えてしまう体質。加えて激務だ。園児と一緒に済ませるから、今までなんとかやってこれたのだ。それからというものの、限界ギリギリで間に合う、なんて危ない状況が何度か見受けられた。
ある日の紅葉が色づく頃、事件は起こる。その日は何かとタイミングが掴めなくて、いつもよりさらに忙しかった。やっとトイレにいける、そう思ったところで、前を押さえた幼児に捕まってしまい…?
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件
水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて──
※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。
※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。
※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。
暗殺者は王子に溺愛される
竜鳴躍
BL
ヘマをして傷つき倒れた暗殺者の青年は、王子に保護される。孤児として組織に暗殺者として育てられ、頑なだった心は、やがて王子に溺愛されて……。
本編後、番外編あります。
逢瀬はシャワールームで
イセヤ レキ
BL
高飛び込み選手の湊(みなと)がシャワーを浴びていると、見たことのない男(駿琉・かける)がその個室に押し入ってくる。
シャワールームでエロい事をされ、主人公がその男にあっさり快楽堕ちさせられるお話。
高校生のBLです。
イケメン競泳選手×女顔高飛込選手(ノンケ)
攻めによるフェラ描写あり、注意。
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる