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桃瀬画伯のお絵描き講座だよ

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 小説の執筆で、思いっきり煮詰まってしまった僕。ここは気分転換したほうがいいとすぐさま判断して、郁也さんに声をかけた。

「郁也さん、今、暇かな?」

「ああ、どうした?」

「あのね、この間言ってた、お絵描き講座やってほしいなって」

 いそいそしながら、紙とペンを手渡す。

「実は僕、もう描いちゃったんだけど」

「何を描いたんだ?」

「……周防さん。身近な人物なら、特徴捉えやすいかなって思ったんだ」

「確かに身近な人間なら、特徴を捉えやすいよな。周防がモデルか、う~ん……」

 しばし白紙を見つめ、意を決してから、さらさらっと描き始めたのだけれど。

「いっ、郁也さん、ちょっと質問っ! どうして目から描いてるの?」

 普通は顔の輪郭を描いてから、目などのパーツを描くと思うのに。

「だってよ、その人が持つ、一番の特徴だから。大事な部分だから、最初に描いてるんだ」

 うーん、言ってることは間違っていないと思うんだけど。そこから描くと、輪郭のバランスとるのが、すっごく大変じゃないのかな。

 僕の心配を他所に目を描き終えると、慣れた手つきで輪郭を描き、鼻やその他の顔のパーツを描き始める。

 もう誰が何といおうと、郁也さんワールドの絵が、どんどん展開されていき――

「よしっ! いいのが出来た。周防に見せてやりたいぞ」

 なぁんて自信満々に言い放つ郁也さんに、僕は微笑んであげる。
(実際は苦笑いかも)

「あは、ははは……周防さんの特徴、ちゃんと描かれているね。すごいや」



 最後の恋の最初の表紙を元に、描いたらしい絵なのだけれど、もう何て言っていいのか、分からないΣ(|||▽||| )



(いつも郁也さんが描くこの絵は、目から描かれてるから、絶妙なバランスが保たれているんだなぁ)

 なぁんてことを絵をじっくり見て、考え込んでしまった。

「それよりも、涼一のを見せろよ」

「あ、うん。これだよ」

「何だよ、この出来は……」

「えっと、サラサラって描いてみました」

「しかもこれ、逆だろうが」

「逆って何が?」

 ムスッとした郁也さんは、僕が描いた周防さんに、ばしばしっと指を差す。

「何でこんなに、周防がたくましいんだ。どうして太郎が女々しく描かれているのか理解できないぞ」

 その言葉に、ワケが分からず首を傾げるしかない。

「だって周防さん、年上だしさ。それに、しっかりとリードしてるじゃないか。僕の中では、こんなイメージなんだけど――」





「タケシ先生、抱いてよー」
「何、言ってんだ、このバカ犬が。今は仕事中だから、あとでな」
「やだやだ、寂しい。構ってってば」
「……ダメだ、諦めろ」
「じゃあ抱きしめてくれたら、ガマンする――」
「しょうがないヤツ、分かったよ」

 そして、太郎くんをぎゅっとしてから。
 
 優しい周防さんはついでに、ちゅってしてあげちゃうんだ、きっと――




「お前……その絵ひとつで、よくもそれだけ話を展開できるな」

「お仕事が作家なんで、当然のことかと思います」

「だが華麗に話が作れても、掛け算が間違っていたら、本人たちが可哀想だ」

 郁也さんが腕組をして、じっと僕の顔を見る。

「掛け算って?」

「周防たちの場合、太郎が襲うほうなんだ。世間様が言うと、年下攻めってヤツだっけな」

「∑o(*'o'*)o ウオオォォォォ!! 周防さんが襲われちゃうの!?」

 自分が描いた絵でそれぞれの立ち位置を変えて、しっかりと妄想してみる――






「タケシ先生、いきなり抱きついてきて、どうしたの?」
「……ちょっとだけ寒かったから、くっついてるだけ」
「患者の子どもから、風邪でも貰ったんじゃねぇの? 熱は大丈夫?」
「ない、と思う……」
「いつまで、この状態でいるワケ? くっついてるだけじゃ、あったまらないと思うけど」
「…………」
「まったく――素直に抱いてって言えばいいだけなのに。毎回手の込んだウソ、つくんだから」

 そしてふたりは仲良く、寝室に消えていくのであった。

 

 .....ヾ( 〃∇〃)ツ キャーーーッ♪


 そんなイメージが、頭の中に浮かんだ。

「涼一のイメージどおりじゃねぇの。周防が主導権を握りしめてるように見えるけど、実際は太郎に弄ばれてるからな」

「うーん、そうなんだろうけど。僕はどっちかっていうと、太郎くんが弄ばれてるように見えるんだよね」

「そうか?」

「うん。だってちゃんと周防さんのいう事、太郎くんは聞いてるじゃないか。周防さんがリードしているって」

「まぁ……。時と場合によりだろうがな」

 僕たちの話が、このあと現実化するなんて、思いもよらなかった。

 周防さんのいう事を聞く、太郎くんが見られる、かも?
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