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「僕は浩司兄ちゃんと怜司の手で、誰かを傷つけてほしくないんだ」
両手を握りしめながら告げた言葉に反応して、浩司兄ちゃんは忌々しそうに舌打ちしてから口を開く。
「龍がこう言ってるから、今回は見逃してやる。だがそれでも龍に手を出してみろ、後悔することになるぞ」
「い゛っ!」
浩司兄ちゃんは股間を掴んでいた手に力を入れたのか、小山田の顔が青ざめる。
「ほらよ、とっとと消えろ」
音もなく手を放すと小山田は前屈みになりながら、ふらついた足取りで音楽室を出て行く。怜司も浩司兄ちゃんと同じタイミングで羽交い締めをやめ、菊池を解放した。
消えていく背中を見送る僕に、浩司兄ちゃんは無言で抱きつく。怜司は横目で僕らを見つつ「鍵かけろよ」とひとこと呟き、音楽室の扉を静かに閉めた。
「今の俺には、鍵をかける余裕なんてないのにさ……」
「浩司兄ちゃん?」
「龍が無事だったことを、ここで確かめてもいいか?」
僕が返事をする前に塞がれる唇。扉に鍵がかけられていない状況がわかっているゆえに、両手で浩司兄ちゃんの胸をバシバシ叩いた。
「龍……?」
「いやだよ、こんな誰かに見られるかもしれない場所で、浩司兄ちゃんとキスするなんて」
不満を口にしたら、目の前にふたつの鍵を突きつけられた。浩司兄ちゃんとそれを交互に眺めて問いかける。
「これは?」
「音楽室の鍵とマスターキー。鍵を閉めたら、どうなるかわかる?」
(それって、誰にも邪魔できない空間を作ることができるということで――)
期待感でゴクリと唾を飲み込む僕を見、浩司兄ちゃんは真顔のまま身を翻し、重たい音を立てて音楽室の鍵をかけた。
見知らぬ3年生に閉じ込められたときは、背筋がゾッとしたのに、浩司兄ちゃんだとそれが真逆になって――。
「こ、浩司兄ちゃ……」
胸が苦しいくらいに、ドキドキする。これから大好きな人に触れられることを考えるだけで、切なくて堪らない。
「龍、アイツらにどこ触れられた?」
「えっ?」
「俺が全部消毒してやる。だから教えて?」
浩司兄ちゃんは手にしていた鍵を床に放り投げ、僕を強く抱き締めた。
「龍、早く教えろ。じゃないと、俺の手がおまえのすべてに触れるかもしれない」
「すべてって、ちょっと待って!」
「知らないやつふたりに、どんなことされた? 怖かったろう?」
痛みを感じるくらいにぎゅっと抱きしめているのに、そこから浩司兄ちゃんの優しさが伝わってきて、僕の瞳に涙が滲む。
「怖かった……すごく怖かった」
「怜司が知らせてくれたんだ。アイツの友達が玄関でおまえを見かけて、3年に手を引かれて連れられている様子が、なんか変だってラインで知らされたのをキッカケに、俺にも情報を共有してくれてさ」
「そうだったんだ」
「たまたま職員室に呼ばれていた関係で、タイミングよく鍵を全部持ち出すことができたってわけ」
艶っぽい声が耳に聞こえて間がなく、首筋に浩司兄ちゃんの唇が押しつけられる。チリッとした痛みと同時に、感じる声が出てしまい、慌てて口元を押さえた。
両手を握りしめながら告げた言葉に反応して、浩司兄ちゃんは忌々しそうに舌打ちしてから口を開く。
「龍がこう言ってるから、今回は見逃してやる。だがそれでも龍に手を出してみろ、後悔することになるぞ」
「い゛っ!」
浩司兄ちゃんは股間を掴んでいた手に力を入れたのか、小山田の顔が青ざめる。
「ほらよ、とっとと消えろ」
音もなく手を放すと小山田は前屈みになりながら、ふらついた足取りで音楽室を出て行く。怜司も浩司兄ちゃんと同じタイミングで羽交い締めをやめ、菊池を解放した。
消えていく背中を見送る僕に、浩司兄ちゃんは無言で抱きつく。怜司は横目で僕らを見つつ「鍵かけろよ」とひとこと呟き、音楽室の扉を静かに閉めた。
「今の俺には、鍵をかける余裕なんてないのにさ……」
「浩司兄ちゃん?」
「龍が無事だったことを、ここで確かめてもいいか?」
僕が返事をする前に塞がれる唇。扉に鍵がかけられていない状況がわかっているゆえに、両手で浩司兄ちゃんの胸をバシバシ叩いた。
「龍……?」
「いやだよ、こんな誰かに見られるかもしれない場所で、浩司兄ちゃんとキスするなんて」
不満を口にしたら、目の前にふたつの鍵を突きつけられた。浩司兄ちゃんとそれを交互に眺めて問いかける。
「これは?」
「音楽室の鍵とマスターキー。鍵を閉めたら、どうなるかわかる?」
(それって、誰にも邪魔できない空間を作ることができるということで――)
期待感でゴクリと唾を飲み込む僕を見、浩司兄ちゃんは真顔のまま身を翻し、重たい音を立てて音楽室の鍵をかけた。
見知らぬ3年生に閉じ込められたときは、背筋がゾッとしたのに、浩司兄ちゃんだとそれが真逆になって――。
「こ、浩司兄ちゃ……」
胸が苦しいくらいに、ドキドキする。これから大好きな人に触れられることを考えるだけで、切なくて堪らない。
「龍、アイツらにどこ触れられた?」
「えっ?」
「俺が全部消毒してやる。だから教えて?」
浩司兄ちゃんは手にしていた鍵を床に放り投げ、僕を強く抱き締めた。
「龍、早く教えろ。じゃないと、俺の手がおまえのすべてに触れるかもしれない」
「すべてって、ちょっと待って!」
「知らないやつふたりに、どんなことされた? 怖かったろう?」
痛みを感じるくらいにぎゅっと抱きしめているのに、そこから浩司兄ちゃんの優しさが伝わってきて、僕の瞳に涙が滲む。
「怖かった……すごく怖かった」
「怜司が知らせてくれたんだ。アイツの友達が玄関でおまえを見かけて、3年に手を引かれて連れられている様子が、なんか変だってラインで知らされたのをキッカケに、俺にも情報を共有してくれてさ」
「そうだったんだ」
「たまたま職員室に呼ばれていた関係で、タイミングよく鍵を全部持ち出すことができたってわけ」
艶っぽい声が耳に聞こえて間がなく、首筋に浩司兄ちゃんの唇が押しつけられる。チリッとした痛みと同時に、感じる声が出てしまい、慌てて口元を押さえた。
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