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Class Sex

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「山田ショウコとセックスしたい!」
 期末テスト中という、学生にとって自分の全てだと言っても過言ではないその時、しんと静まり返る教室に声が響いた。黒板の前で椅子にふんぞり返り、うとうととする教師が、突然の声に跳ね起きてきょろきょろと辺りを見渡した。生徒たちの気持ちは完全にテストから離れ、声の主が気になって仕方なくなったようだが、少しでも首を動かしてしまうとカンニングと間違えられてしまう。堪えながらテストに集中しようとも、その声が気になって仕方が無い……。
 その時、また声が響いた。それも一回だけ ではなく、何度も。遂に痺れを切らした教師が教室をうろつく。しかし、そんなことお構いなしと言いたげに、その声が止むことは無い。当の山田ショウコはこ のクラスの女子生徒である。山田ショウコは、そんな声に気にもとめずテスト用紙をライターで燃やし、それを使い煙草に火をつけようとしている最中だった。真剣な眼差し。声が耳に入る筈が無かった。テストを真剣に受けているのは暮らすの三分の一といった所だろうか。残りの過半数は、生徒同士の干渉は無く静か にしているものの、読書をする者、ゲームをする者、煙草を吸う者、タロットカードをいじくる者、下半身をいじくる者、携帯をいじくる者、昼飯を食らう者、 という、正に何でもありの無法地帯。それがかの有名な3年B組(3B)だった。その間も声が止むことはない。にらみを聞かせながら歩いていた教師が、ふと とある男子生徒の目の前で足を止めた。男子生徒は机にうな垂れ、小さないびきをかいている。胸のポケットに入れてある携帯から、「山田ショウコとセックスしたい!」という声が聞こえた。一時流行った着ボイス、というものだろうか。いびきをかく生徒を見下しながら、教師がポケットから煙草を取り出し、火をつけた。そしてその燃える煙草を、男子生徒の頭に置いた。短く整った髪の毛がちりちりと音を立てて少しずつ燃えていく。教室に異臭が漂った。田中義久はその臭いに顔をしかめ、車田和夫はうっとりた表情でその臭いを吸い込み、原田久恵はあまりの悪臭に排泄物を机にぶちまけた。必死に解いていたテスト用紙がぐ ちゃぐちゃに汚れ、原田久恵は静かに泣いた。頭が焼け野原になり、皮膚を燃やしているにも関わらず、男子生徒が起きる気配は無い。教師は一旦教卓へと戻り、教卓に置いてあったガラスのコップを手に取った。そして足元に置いてあるポリタンクからガソリンをコップに流し込む。それを口に含むと、口の前にくる ようにライターを手に持った。そして男子生徒の元へと行き、ライターの火に向かってガソリンを噴射した。男子生徒の全身が、あっという間に燃えていく。
 燃えさかり無様な死を遂げた男子生徒の最後の言葉は、「燃えるほど熱い恋! 激しすぎるぜ山田ショウコ!」であった。
 男子生徒を包む炎に煙草を近づけ、一息ついた後、テスト中だというのに早退した山田ショウコは、途中でバラの花束を買い、燃え死んだ男子生徒の家へと向かった。しかし住所がわからないので諦め、そのまま家路についた。山田ショウコの消息はそこで絶っている。
 その頃教室では、テストを一旦中断し、『燃えさかる人』というタイトルの絵を書いていた。所謂美術の時間というものだろうか。
「男子生徒が灰になって絶命するまであと数時間といった所だろうか。それまでに書き上げたものには、山田ショウコ・セックスフリーパス券というものが貰えるんだ」と教師が言った。それまで自分勝手にしていた生徒たちが大きな声援を上げ、一丸となって絵を仕上げる。3Bが始めて一つになった。しかし田所美里だけ は「下品だわ」と呟き、家に帰った。そう、今日はジャニーズのコンサートがある日なのだ。
 燃えさかる男子生徒は、もう起き上がることすら出来ないはずであるが、よろよろとゆっくり立ち上がり、
「俺、もうちょっと生きていたかったな……」
 と呟き、しばらくして絶命した。書き上げた者がいなかったため、教師自身が券を握り締め、山田ショウコの家へと走っていった。教師は走った。どこまでも。世界の果てまでも。山田ショウコの元へ向かって……。
 お前ならできるはずだ。選ばれし者よ。走り続けろ。決して後ろを振り向くんじゃない。

 走れ! 教師!
 どこまでも!
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