さようなら、外脛骨

れつだん先生

文字の大きさ
上 下
8 / 30
術後編

第7話 手術後3 2021年7月31日

しおりを挟む
 朝食を食べて寝て昼食を食べて起きる。朝食の内容はまったく覚えていない。深田えいみが現れて「私のこと覚えてます?」と訊くのでもちろんですと答えると「よかった」と笑ったので胸がときめく。担当看護師が現れて「朝のこと覚えてます?」と訊くので「まったく覚えてませんと答えると「眠ったまま朝ごはん食べてましたよ」と笑ったので胸がときめく。
 昼食後に抗生剤の点滴を打つ。片足立ちでテレビ台の上の引き出しから本を取って少し読む。ハムスターがやってきて「今日の痛みは10段階でいくらか」と訊くので1とか2ですと答える。
 前夜あれだけ痛い痛いと騒いでいたのに、人間の体というのはよくわからない。トイレの際に動くことで痛みが強まるが、それも気になるほどでもない。それ以外は無痛といってもいい。
 夕食前に担当看護師が大量の薬を持ってくる。今後薬は自己管理でとのこと。高橋優がオリンピックを見て興奮している。スポーツ観戦に一切興味がなくテレビを持たない生活なのでオリンピック関連のニュースは一切わからない。日本人が金メダルを獲ることが嬉しいとも思わない。イヤホンで音楽を聴きながら読書。読書を楽しめるほど痛みが落ち着いてきたというわけだが、また突然激しい痛みに襲われる可能性もなくはないだろう。痛いときに好きなだけ痛がればよい。
 夕食後に体温測定で二日連続の37.9度を叩き出す。もしかして新型Cウイルスではと二日続けて心配になるが、対応したのがイケメン看護師だったから熱が出たのだろうと思い込む。イケメンが「傷口からくる発熱だと思いますが、続くようならPCR検査をするかもしません」と言い去っていく。
 これで僕がC陽性だったらどうなるのだろう。スマホで病院のホームページを確認すると、ここはC外来、入院、ワクチン接種すべて受け付けていないとのこと。転院するのだろうか。するとして転院先が見つかるのだろうか。見つからなければここを追い出され自宅待機になるのだろうか。そうなると足はどうなる。「入院中にC感染した場合」と検索してみるが欲しい情報はヒットせず。考えても仕方のないことほど深く考えてしまうもので、音楽も読書も集中することができずベッドの上でスマホ片手に悶々とする。痛みがなくなったため別のことを考える余裕ができたとプラスに捉える。足がお祭り騒ぎのノットフェス状態であれば考える余裕もなかった。
 消灯後に抗生剤の点滴を打つ。途中でトイレに行きたくなったためナースコールを押すとイケメンがやってきて「点滴の最中ですから尿瓶でお願いします」と言い放つ。尿瓶チャレンジは何度も失敗したことを述べると点滴を早めるから腕を伸ばしておけと言われる。猛スピードで液体が血管に入っていく間腕が冷たくてとても気持ちがよかった。点滴を打って血液は薄まらないのだろうかとふと疑問。
 痛みもほとんどなく快眠。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

渡辺透クロニクル

れつだん先生
現代文学
カクヨムという投稿サイトで連載していたものです。 差別表現を理由に公開停止処分になったためアルファポリスに引っ越ししてきました。 統合失調症で生活保護の就労継続支援B型事業所に通っている男の話です。 一話完結となっています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

一統失患者の日乗

れつだん先生
エッセイ・ノンフィクション
統合失調症で障害者手帳2級の生活保護受給者の日記です。 ただの日記です。 これまで断片的に書いてきた日記をまとめました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

みるく♪日記2023・2024

みるく♪
エッセイ・ノンフィクション
暮らしの日記 旅行記

カクヨムでアカウント抹消されました。

たかつき
エッセイ・ノンフィクション
カクヨムでアカウント抹消された話。

処理中です...