21 / 23
グリンディア ~エピソードゼロ~
しおりを挟む
これは、グリンディアがオズワルドと出会う前の話。
――マイハーマ村は、古の魔王討伐に参加した伝説の魔法使いの子孫、クリティン・ピピンが治める地。魔法の頂きを目指す者たちが修行に訪れる、秘境の村だ。季節は春、村には新しい命が芽吹き、穏やかな風が吹いていた。
「最近、村の様子が変なんじゃよね」
ピピンは弟子のケスミーに話しかける。家の窓からは柔らかい陽光が差し込み、春の暖かさが広がっている。ケスミーはその言葉に耳を傾けながら応じた。
「変?どういうことでしょうか?」
「お主も気づいておるじゃろう?グリンディアの魔力が強すぎて、村人たちが妙にもてはやしておる。それが、最近ちと過熱しすぎておるんじゃ」
ケスミーが耳を澄ますと、外から村人たちの賑やかな声が聞こえてくる。外には、村人たちが集まり、グリンディアを囲んで何かを差し出していた。
「確かに…外が騒がしいですね」
「グリンディア様!美味しい果実が取れました。どうぞお召し上がりください!」
「グリンディア様!私は焼き菓子を用意しました!」
「うむ、ありがとうな♪」
グリンディアは笑顔を浮かべ、村人たちは口々に「グリンディア様!ありがたき幸せ!」と叫び、彼女を崇め奉っている。
「こりゃどうにもならん…。ケスミーや、魔法学校の資料を集めてくれんか?」
「かしこまりました。」
――ピピンの家に戻ったグリンディアは、渡された書類を見て驚きの声を上げた。
「えー!ワシに魔法学校に入れって?なんでじゃあ!」
「だって、このまま村におったら、お主は駄目な人間になってしまいそうじゃから」
「駄目な人間にはならん!」
グリンディアはソファーに寝転び、先ほど村人から貰った果物やお菓子をぼりぼり食べながら反論する。ピピンは軽くため息をつき、話を続けた。
「いや、もうすでにその兆候が…」
ピピンのため息が部屋に響き、グリンディアは少し恥ずかしそうに顔を伏せた。
「お主の魔力はワシからみても途方のないものじゃ。魔法の知識も、ワシが教えられることはもうほとんどないじゃろう」
「でも、最高の魔法使いと名高いお祖母様に習うことがなかったら、魔法学校で学ぶことなんてないじゃろ?」
グリンディアの反論にピピンは微笑を浮かべ、優しく答える。
「魔法を学ぶんじゃない。世間を知ってほしいんじゃ」
「世間を?」
「そうじゃ。この村は狭すぎるし、魔法に偏りすぎておる。もっと広い世界を見てくるんじゃ。」
「広い世界を…?」
グリンディアは考え込んで答えた。
「確かに…広い世界を見てみたい。でも、お祖母様と離れるのは寂しいなあ」
ピピンは微笑んで答える。
「なあに、移動ゲートを作ればすぐ戻ってこれるじゃろ。それにお主が本気でホウキを飛ばせば、どこにおっても30分にあれば戻れるわい。」
「ふふ、それもそうじゃな」
「淋しくなったらいつでも戻ってくれば良い。お主はワシの可愛い孫娘じゃからな」
ピピンはグリンディアをそっと抱きしめた。
「お祖母様…」
グリンディアは微笑み、村を出る決意を固めた。
広い世界へ飛び出し、やがてオズワルドとの出会いが待っていた。
――マイハーマ村は、古の魔王討伐に参加した伝説の魔法使いの子孫、クリティン・ピピンが治める地。魔法の頂きを目指す者たちが修行に訪れる、秘境の村だ。季節は春、村には新しい命が芽吹き、穏やかな風が吹いていた。
「最近、村の様子が変なんじゃよね」
ピピンは弟子のケスミーに話しかける。家の窓からは柔らかい陽光が差し込み、春の暖かさが広がっている。ケスミーはその言葉に耳を傾けながら応じた。
「変?どういうことでしょうか?」
「お主も気づいておるじゃろう?グリンディアの魔力が強すぎて、村人たちが妙にもてはやしておる。それが、最近ちと過熱しすぎておるんじゃ」
ケスミーが耳を澄ますと、外から村人たちの賑やかな声が聞こえてくる。外には、村人たちが集まり、グリンディアを囲んで何かを差し出していた。
「確かに…外が騒がしいですね」
「グリンディア様!美味しい果実が取れました。どうぞお召し上がりください!」
「グリンディア様!私は焼き菓子を用意しました!」
「うむ、ありがとうな♪」
グリンディアは笑顔を浮かべ、村人たちは口々に「グリンディア様!ありがたき幸せ!」と叫び、彼女を崇め奉っている。
「こりゃどうにもならん…。ケスミーや、魔法学校の資料を集めてくれんか?」
「かしこまりました。」
――ピピンの家に戻ったグリンディアは、渡された書類を見て驚きの声を上げた。
「えー!ワシに魔法学校に入れって?なんでじゃあ!」
「だって、このまま村におったら、お主は駄目な人間になってしまいそうじゃから」
「駄目な人間にはならん!」
グリンディアはソファーに寝転び、先ほど村人から貰った果物やお菓子をぼりぼり食べながら反論する。ピピンは軽くため息をつき、話を続けた。
「いや、もうすでにその兆候が…」
ピピンのため息が部屋に響き、グリンディアは少し恥ずかしそうに顔を伏せた。
「お主の魔力はワシからみても途方のないものじゃ。魔法の知識も、ワシが教えられることはもうほとんどないじゃろう」
「でも、最高の魔法使いと名高いお祖母様に習うことがなかったら、魔法学校で学ぶことなんてないじゃろ?」
グリンディアの反論にピピンは微笑を浮かべ、優しく答える。
「魔法を学ぶんじゃない。世間を知ってほしいんじゃ」
「世間を?」
「そうじゃ。この村は狭すぎるし、魔法に偏りすぎておる。もっと広い世界を見てくるんじゃ。」
「広い世界を…?」
グリンディアは考え込んで答えた。
「確かに…広い世界を見てみたい。でも、お祖母様と離れるのは寂しいなあ」
ピピンは微笑んで答える。
「なあに、移動ゲートを作ればすぐ戻ってこれるじゃろ。それにお主が本気でホウキを飛ばせば、どこにおっても30分にあれば戻れるわい。」
「ふふ、それもそうじゃな」
「淋しくなったらいつでも戻ってくれば良い。お主はワシの可愛い孫娘じゃからな」
ピピンはグリンディアをそっと抱きしめた。
「お祖母様…」
グリンディアは微笑み、村を出る決意を固めた。
広い世界へ飛び出し、やがてオズワルドとの出会いが待っていた。
1
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった
ぐうのすけ
ファンタジー
日本の社会人として暮らす|大倉潤《おおくらじゅん》は女神に英雄【ジュン】として18才に若返り異世界に召喚される。
ジュンがチートスキルを持たず、他の転移者はチートスキルを保持している為、転移してすぐにジュンはパーティーを追放された。
ジュンは最弱ジョブの投資家でロクなスキルが無いと絶望するが【経験値投資】スキルは規格外の力を持っていた。
この力でレベルを上げつつ助けたみんなに感謝され、更に超絶美少女が俺の眷属になっていく。
一方俺を追放した勇者パーティーは横暴な態度で味方に嫌われ、素行の悪さから幸運値が下がり、敵にマークされる事で衰退していく。
女神から英雄の役目は世界を救う事で、どんな手を使っても構わないし人格は問わないと聞くが、ジュンは気づく。
あのゆるふわ女神の世界管理に問題があるんじゃね?
あの女神の完璧な美貌と笑顔に騙されていたが、あいつの性格はゆるふわJKだ!
あいつの管理を変えないと世界が滅びる!
ゲームのように普通の動きをしたら駄目だ!
ジュンは世界を救う為【深刻な女神力不足】の改善を進める。
念のためR15にしてます。
カクヨムにも先行投稿中
序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜
水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑
★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位!
★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント)
「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」
『醜い豚』
『最低のゴミクズ』
『無能の恥晒し』
18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。
優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。
魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。
ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。
プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。
そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。
ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。
「主人公は俺なのに……」
「うん。キミが主人公だ」
「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」
「理不尽すぎません?」
原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。
※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる