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10話

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目が覚めてから体感で数分が経った頃、重い扉が開けられるような音と数人が階段を下りてくる音がした。

誰か来たのね。

「目覚めていたか。」

「何のおつもりですか?」

「父親に対して相変わらず敬意のかけらもない。」

「尊敬に値しないので。」

「減らず口を‥‥。全く、誰に似たんだか。‥‥お前はあいつを思い出させる。忌々しい。」

「お母様似でよかったわ。」

「喜べ。お前も最後にこの家の役に立てるぞ。」

「何を‥‥?成人すればこの家を出て自由にやっていく約束では?」

「ああ。それはやめだ。もっと良いお前の有用な使い道を見つけたからな。」

「何を勝手なことを!!」

「リリアのためだ。」

「さっきからいったい何を?何をするつもり??」

「リリアの病状がここ最近悪化していたことはお前も知っているだろう?」

「ええ。」

「あともって半年と医者から言われた。」

「そう‥‥残念ね。」

「冷たいな。仮にも姉だろう?」

「ええ私はあの子の義姉よ。でもあと少しで無関係になる。可哀そうだとは思うわ。でもそれだけ。」

「そうか‥‥。お前にはあの子の代わりになってもらう。」

「何を馬鹿なことを‥‥。ついに気でも狂ったのかしら?」

「これを使えば決して不可能ではない。」

「?!」

そう言って父が取り出したのは禍々しい邪気を放つ女神像だった。

「これを使えばけがや病気を生贄に移すことができる。これを使う対象と生贄は血縁関係がなければいけないのが難点だがな。素晴らしいだろう!!」

狂気的な目で語るその姿はとても正気を保っているようには見えない。胸にかすかな痛みが広がった。?‥‥いまさらどうして。期待なんてしていなかったはずよ。でも‥‥でも心のどこかでほんの少しでもいいから父からの愛を願っていたのかもしれない。それがこんな形で‥‥。決定的な亀裂が父と私の間に走った。二度と修復されない深く、広い亀裂。

正直今の話を聞いても半信半疑だ。本当にそんなことはぁできるのだろうか?もし本当にそんな効果があるとしたら禁忌として封じられている呪具くらいだ。まさかそうと知っていて‥‥?

「さあ!準備を!!」

周りの男たちが動き出す。ローブを深くかぶって一言も発さないその姿は不気味だ。

これは‥‥本格的にまずいかもしれない。

小一時間ほどで準備は終わったみたいだ。よくわからない魔法陣やら祭壇やらが出来上がっていた。

コツコツ

幾分軽い足音が聞こえてきたと思ったらリリアがおりてきた。

「お父様!準備はできた??」

「おお!リリア。大丈夫なのか?ほら座りなさい。」

「ふふっありがとう。あら?お姉さま。」

「リリア‥‥」

「私の代わりに死んでね!だって当然でしょう?誰よりも愛される私が死ぬより死んだって悲しむ人のいないお姉さまが死ぬべきだわ。ああ!ようやく解放される。楽しみだわ!!お姉さまが私より幸せなんて許せない!!せいぜいみじめに死になさい!あははは!!」

純真無垢で愛らしいリリア。そんなときもあったわ。純粋であるがゆえに人を傷つけることはあったけれど故意にすることはなかった。いったいどこで狂ってしまったのかしらね。

手足の縄は少しも緩むことはない。もうだめなのかしら?

「ユリアには手を出さないことを約束しなさい。」

「はっ、なぜお前の約束なんかーー」

「約束を守る気はない?なら儀式とやらが終わる前に死んでやる!」

「惨めね。お姉さま。いいわ最期くらい聞いてあげる。」

「どこからも上から目線ね。『人を呪わば穴二つ』この言葉を知っているかしら?」

「何を言っているの??」

「分からないならいいわ。いつかーー」
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