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第六章 ひとりぼっちの苦悩
第二十五話 捨てられた恋と選ばれた愛
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会話が途切れ、玲音とフィードが共有する空間に入れずにいた真愛は、控えめに口を開く。
「時と場所の亀裂って……前にフィードが言っていたやつだよね。確か、前世の魂が吸い込まれたっていう」
「あぁ、それだ。吸い込まれると、時間も場所も分からない位置へと運ばれる。オレたち新成人の前世の魂もそれぞれどこかへ行ってしまった……」
「なるほど、そっちはそういう事情だったか。……なるほど」
しみじみとした口調で「なるほど」と繰り返した玲音は、一瞬芹香に視線を走らせた。
「でもどうして? それに吸い込まれたからって、魔界に帰ることができないの?」
「ただ単に移動しただけなら帰れるが、一度でもその世界に行ったことがあれば話は別だ。因果律の掟により、大変なことになる」
「大変なこと……?」
フィードの言葉を繰り返し、首を傾げた真愛。玲音とフィードが答える前に、優が口を開いた。
「もしかして……掟に触れた罰ってことじゃないかな。それが玲音の魔界へ帰れなくなった理由なんでしょ」
優に顔を向け、玲音は苦笑する。
「前から思っていたが、優は年の割に察しがいいよな。話が早くて助かる」
「別にそういうわけじゃない。玲音は分かりにくいから……だから今まで君を理解したくて必死になって考えてただけだよ」
玲音から目を逸らし唇を尖らせる優の姿は、真愛が見たことのないものだった。兄の後を付いていく弟のような態度で、こんな状況でなければ微笑ましく思えただろう。
「優の言うとおり、俺は因果律の掟を破ったせいで、どこにも行けなくなった。人間界のこの時代の流れから動くことができない。だから魔界には帰れないんだ」
「因果律の掟を破れば大変なことになるとは聞いていたが、実際にどんなことになるのかまでは知らなかった。大変なこととは、魔界に帰れなくなることだったんだな」
「俺も自分の身に起こるまでは知らなかったさ。良かったな、身をもって知る前に知識を仕入れておけて」
なげやりにそう言い、フィードに対して皮肉げに笑いかける。苦い顔をしたフィードは、しかし何も言わなかった。
(助けてあげたい……)
だけど、どうしてあげることもできない。真愛は自分の無力を思い知らされた。
苦しむ玲音を救う方法は、玲音を因果律の掟とやらから解放し、魔界に帰れるようにしてあげること。とてもじゃないが、ただの人間である真愛には不可能なことだ。
救うことは出来ないけれど、一つだけ、真愛は玲音にしてあげられることがある。
「私は」
ドクドクと胸の中で心臓が揺れる。声が震えないように、後から後から湧いてくる激情を無理やり抑え、想いを言葉に変えていく。
「私は玲音くんが悪魔でも、大切なことには変わりなくて……」
「真愛……」
「玲音くんのこと、好きだけど……それで玲音くんが苦しいっていうなら……私――玲音くんを好きなの止める」
玲音への恋を捨てること。玲音の負担を減らすこと。それが真愛にできる精一杯。
「真愛……!」
「だから、友達でいさせて。支えさせて」
こみあげてくるもので胸が詰まり、言葉を発せなくなってしまいそうだった。そうなる前にと、早口で伝える。
「ただの友達なら……良いんだよね?」
玲音は恋を禁止する魔法は掛けたけれど、友達であることまで否定はしなかった。きっとそこが、玲音の引いたライン。
「……ありがと」
薔薇が綻んだ。そんな表現が似合うほど神聖で美しい笑みを、玲音は浮かべていた。
良かったと心から思う。完璧とはいかなくても、一時的であったとしても、玲音の苦しみを減らしてあげられたのなら、それでいい。自分の恋心を押し殺すくらいどうってことない。
「真愛の決意を嬉しく思うよ。――だから、もう一度魔法を掛けさせてくれないか?」
「え……?」
「真愛に、俺を好きにならない魔法を掛けておきたいんだ」
「どうして? 私は玲音くんのこと諦めるのに……。言葉だけじゃ、信用できない?」
やんわりとした拒絶の態度を取ると、玲音は「そうじゃない」、と穏やかに説明を付け加える。
「確かに最初に真愛に魔法を掛けたのは、俺が真愛を好きにならないようにするためだ。大好きになった真愛に置いていかれるのが怖かったから。……でも、今魔法を掛けたいのは別の理由だよ」
「別の? 他にも何か問題があるの?」
「根本的な理由は変わらないが、配役が逆になる」
輪郭のぼやけた玲音の言葉は、すぐには理解できなかった……だというのに、言い知れない不安が全身を駆け巡る。
「今度は俺が置いていく側になるということだ。……友達の真愛に苦しい思いをして欲しくない」
友達の、という部分を強調されたことも気になったが、それよりも前が最重要だ。
「置いていく? 玲音くん、どこかに行くの?」
「…………悪魔と悪魔に比べて短命である人間の関係の場合、死別は人間の死によって訪れる事例が多い。だが、悪魔の命も永遠ではない。タイミングによっては悪魔の死による死別もあり得るという話だ」
じっくり頭を整理する間もなく、一番聞きたいことが口からすり抜けていた。
「玲音くん、死ぬの?」
端的にそれだけ言うと、見なかったことにしたかったが、玲音は一つ頷いた。
玲音が死ぬ。本人に肯定されたが、まったく現実味がない。「シヌ」という音の別の言葉があったっけ、と考えてしまうくらいには受け入れられないでいた。
「お前は、俺を悪魔として認識できているか?」
視線を落として、玲音はフィードへ問いかける。するとフィードは玲音を見据えた後、フルフルと首を振った。
「いや、人間にしか思えないな。他の悪魔には気配を感じるが、レオンには特有のニオイがない。だからといって、悪魔だと信じていないわけじゃない。目の前で魔法を使うのを見ているし、成人の儀のことも知っていた。悪魔だと思っているが、悪魔だと感じられないだけだ」
玲音は肩をすくめた。
「予想していた通りの返答だな。俺はもう自分の体内で魔力を生成することができないし、魔力の保持も短時間しかもたない。悪魔としての機能が衰えてる俺を、悪魔と思えなくても当然だ。……寿命なんだ」
「じゅ……みょう?」
始まりがあれば、終わりがある。生きとし生けるものすべてに、平等に訪れる死。それは自然の摂理であり、何者も逆らうことができない大いなる法則。すべての生き物が、いつか必ず死ぬことは真愛も知っていた。しかし、知っていただけにすぎないのだ。
「嘘だ……だって玲音くん、こんなに元気なのに」
「俺も驚いてるよ。他の悪魔が死にゆくときは魔力的な衰えだけでなく、もっと肉体的な衰えもあったように思う。だけどね、真愛、俺はもう……」
「やだ! 聞きたくない!」
知っていた。けれどそれは日常で意識することのない、脳内の端の端に畳んで捨て置かれていた、現実味などまるでない単なる知識なのだ。生々しさを伴い大切な相手に降りかかる現実としては、受け入れることなどできなかった。
キュッと喉が締まり、涙が溢れそうだった。玲音に魔法をかけられそうになった時より、玲音が悪魔と知った時より、胸が痛い。ズタズタに切り裂かれて、それでもなお痛覚だけが正常に機能しているようだ。
「辛いだろ?」
「辛いよ! 辛い……」
大粒の涙が真愛の右目から零れ、頬を濡らす。
「真愛にそんな顔をさせたくなかった」
見ると、玲音は泣いてはいないものの、真愛と同じくらい辛そうな顔をしていた。
(きっと思い出してるんだ。以前失った時のことを)
玲音なら、今の真愛の気持ちを本当に痛いほど解るだろう。
「さぁ真愛、魔法を掛けさせてくれ。そしたら楽になるから、な?」
しっとりと心に染み渡る声音に、思わず「うん」と頷きそうになった。それを止めたのは、玲音と過ごした楽しかった日々だ。
魔法の力で恋心を失くしたら、玲音との思い出が無味乾燥な過去に成り果ててしまう。思い出が思い出たり得るのはそこに気持ちがあり、振り返った時に同じ気持ちになれるからであって、感情を失した過去は思い出を名乗れない。
両の瞳から絶えず涙を流しながら、髪を乱してブンブンと首を振る。
「いや! 私、玲音くんへの気持ちを忘れたくない」
玲音への恋を捨てると誓ったのは、玲音を苦しませたくなかったからだ。けれど立場が逆転して、苦しむのが真愛自身になるというのなら……。
「どんなに苦しくてもいい。私はこの気持ちを大切にしたい」
玲音はハッと目を見張った
「真愛……本当にいいのか? 今なら」
「私の答えは変わらない」
この想いのせいで生涯苦しむことになったとしても、その痛みと苦しみは温かな思い出が癒してくれる。
真愛はもう泣いてはいなかった。
「私は人間で、悪魔である玲音くんほど長くは生きられない。だからその分、どんな些細な思い出も取りこぼすことなく持っておきたいの」
なにか言いたげに口を開きかけた玲音に先んじて、真愛は言葉を続ける。
「それに、寿命が短い分、苦しみも短くて済むし……玲音くんと違って、何度も同じ痛みを感じることはないと思うから。……ね、大丈夫」
寿命に差のある異種族の中で生きることになった玲音とは違い、真愛は人間の中で人間として生きる。人生の中で誰かを看取ることになったとしても、それはほかの人間が経験する回数と大差ないと予想された。
「……真愛は強いな」
「時間の長さが違うだけだよ」
「真愛の中に好きだった人として残してもらえるなんて、俺は幸せだな」
真愛にとってみればとても悲しい表現だった。しかし言葉通り玲音は幸せな笑みを浮かべている。
(笑え!)
強く言い聞かせて、真愛は笑う。
「私も、玲音くんと出会えて、好きになれて……幸せだよ」
「時と場所の亀裂って……前にフィードが言っていたやつだよね。確か、前世の魂が吸い込まれたっていう」
「あぁ、それだ。吸い込まれると、時間も場所も分からない位置へと運ばれる。オレたち新成人の前世の魂もそれぞれどこかへ行ってしまった……」
「なるほど、そっちはそういう事情だったか。……なるほど」
しみじみとした口調で「なるほど」と繰り返した玲音は、一瞬芹香に視線を走らせた。
「でもどうして? それに吸い込まれたからって、魔界に帰ることができないの?」
「ただ単に移動しただけなら帰れるが、一度でもその世界に行ったことがあれば話は別だ。因果律の掟により、大変なことになる」
「大変なこと……?」
フィードの言葉を繰り返し、首を傾げた真愛。玲音とフィードが答える前に、優が口を開いた。
「もしかして……掟に触れた罰ってことじゃないかな。それが玲音の魔界へ帰れなくなった理由なんでしょ」
優に顔を向け、玲音は苦笑する。
「前から思っていたが、優は年の割に察しがいいよな。話が早くて助かる」
「別にそういうわけじゃない。玲音は分かりにくいから……だから今まで君を理解したくて必死になって考えてただけだよ」
玲音から目を逸らし唇を尖らせる優の姿は、真愛が見たことのないものだった。兄の後を付いていく弟のような態度で、こんな状況でなければ微笑ましく思えただろう。
「優の言うとおり、俺は因果律の掟を破ったせいで、どこにも行けなくなった。人間界のこの時代の流れから動くことができない。だから魔界には帰れないんだ」
「因果律の掟を破れば大変なことになるとは聞いていたが、実際にどんなことになるのかまでは知らなかった。大変なこととは、魔界に帰れなくなることだったんだな」
「俺も自分の身に起こるまでは知らなかったさ。良かったな、身をもって知る前に知識を仕入れておけて」
なげやりにそう言い、フィードに対して皮肉げに笑いかける。苦い顔をしたフィードは、しかし何も言わなかった。
(助けてあげたい……)
だけど、どうしてあげることもできない。真愛は自分の無力を思い知らされた。
苦しむ玲音を救う方法は、玲音を因果律の掟とやらから解放し、魔界に帰れるようにしてあげること。とてもじゃないが、ただの人間である真愛には不可能なことだ。
救うことは出来ないけれど、一つだけ、真愛は玲音にしてあげられることがある。
「私は」
ドクドクと胸の中で心臓が揺れる。声が震えないように、後から後から湧いてくる激情を無理やり抑え、想いを言葉に変えていく。
「私は玲音くんが悪魔でも、大切なことには変わりなくて……」
「真愛……」
「玲音くんのこと、好きだけど……それで玲音くんが苦しいっていうなら……私――玲音くんを好きなの止める」
玲音への恋を捨てること。玲音の負担を減らすこと。それが真愛にできる精一杯。
「真愛……!」
「だから、友達でいさせて。支えさせて」
こみあげてくるもので胸が詰まり、言葉を発せなくなってしまいそうだった。そうなる前にと、早口で伝える。
「ただの友達なら……良いんだよね?」
玲音は恋を禁止する魔法は掛けたけれど、友達であることまで否定はしなかった。きっとそこが、玲音の引いたライン。
「……ありがと」
薔薇が綻んだ。そんな表現が似合うほど神聖で美しい笑みを、玲音は浮かべていた。
良かったと心から思う。完璧とはいかなくても、一時的であったとしても、玲音の苦しみを減らしてあげられたのなら、それでいい。自分の恋心を押し殺すくらいどうってことない。
「真愛の決意を嬉しく思うよ。――だから、もう一度魔法を掛けさせてくれないか?」
「え……?」
「真愛に、俺を好きにならない魔法を掛けておきたいんだ」
「どうして? 私は玲音くんのこと諦めるのに……。言葉だけじゃ、信用できない?」
やんわりとした拒絶の態度を取ると、玲音は「そうじゃない」、と穏やかに説明を付け加える。
「確かに最初に真愛に魔法を掛けたのは、俺が真愛を好きにならないようにするためだ。大好きになった真愛に置いていかれるのが怖かったから。……でも、今魔法を掛けたいのは別の理由だよ」
「別の? 他にも何か問題があるの?」
「根本的な理由は変わらないが、配役が逆になる」
輪郭のぼやけた玲音の言葉は、すぐには理解できなかった……だというのに、言い知れない不安が全身を駆け巡る。
「今度は俺が置いていく側になるということだ。……友達の真愛に苦しい思いをして欲しくない」
友達の、という部分を強調されたことも気になったが、それよりも前が最重要だ。
「置いていく? 玲音くん、どこかに行くの?」
「…………悪魔と悪魔に比べて短命である人間の関係の場合、死別は人間の死によって訪れる事例が多い。だが、悪魔の命も永遠ではない。タイミングによっては悪魔の死による死別もあり得るという話だ」
じっくり頭を整理する間もなく、一番聞きたいことが口からすり抜けていた。
「玲音くん、死ぬの?」
端的にそれだけ言うと、見なかったことにしたかったが、玲音は一つ頷いた。
玲音が死ぬ。本人に肯定されたが、まったく現実味がない。「シヌ」という音の別の言葉があったっけ、と考えてしまうくらいには受け入れられないでいた。
「お前は、俺を悪魔として認識できているか?」
視線を落として、玲音はフィードへ問いかける。するとフィードは玲音を見据えた後、フルフルと首を振った。
「いや、人間にしか思えないな。他の悪魔には気配を感じるが、レオンには特有のニオイがない。だからといって、悪魔だと信じていないわけじゃない。目の前で魔法を使うのを見ているし、成人の儀のことも知っていた。悪魔だと思っているが、悪魔だと感じられないだけだ」
玲音は肩をすくめた。
「予想していた通りの返答だな。俺はもう自分の体内で魔力を生成することができないし、魔力の保持も短時間しかもたない。悪魔としての機能が衰えてる俺を、悪魔と思えなくても当然だ。……寿命なんだ」
「じゅ……みょう?」
始まりがあれば、終わりがある。生きとし生けるものすべてに、平等に訪れる死。それは自然の摂理であり、何者も逆らうことができない大いなる法則。すべての生き物が、いつか必ず死ぬことは真愛も知っていた。しかし、知っていただけにすぎないのだ。
「嘘だ……だって玲音くん、こんなに元気なのに」
「俺も驚いてるよ。他の悪魔が死にゆくときは魔力的な衰えだけでなく、もっと肉体的な衰えもあったように思う。だけどね、真愛、俺はもう……」
「やだ! 聞きたくない!」
知っていた。けれどそれは日常で意識することのない、脳内の端の端に畳んで捨て置かれていた、現実味などまるでない単なる知識なのだ。生々しさを伴い大切な相手に降りかかる現実としては、受け入れることなどできなかった。
キュッと喉が締まり、涙が溢れそうだった。玲音に魔法をかけられそうになった時より、玲音が悪魔と知った時より、胸が痛い。ズタズタに切り裂かれて、それでもなお痛覚だけが正常に機能しているようだ。
「辛いだろ?」
「辛いよ! 辛い……」
大粒の涙が真愛の右目から零れ、頬を濡らす。
「真愛にそんな顔をさせたくなかった」
見ると、玲音は泣いてはいないものの、真愛と同じくらい辛そうな顔をしていた。
(きっと思い出してるんだ。以前失った時のことを)
玲音なら、今の真愛の気持ちを本当に痛いほど解るだろう。
「さぁ真愛、魔法を掛けさせてくれ。そしたら楽になるから、な?」
しっとりと心に染み渡る声音に、思わず「うん」と頷きそうになった。それを止めたのは、玲音と過ごした楽しかった日々だ。
魔法の力で恋心を失くしたら、玲音との思い出が無味乾燥な過去に成り果ててしまう。思い出が思い出たり得るのはそこに気持ちがあり、振り返った時に同じ気持ちになれるからであって、感情を失した過去は思い出を名乗れない。
両の瞳から絶えず涙を流しながら、髪を乱してブンブンと首を振る。
「いや! 私、玲音くんへの気持ちを忘れたくない」
玲音への恋を捨てると誓ったのは、玲音を苦しませたくなかったからだ。けれど立場が逆転して、苦しむのが真愛自身になるというのなら……。
「どんなに苦しくてもいい。私はこの気持ちを大切にしたい」
玲音はハッと目を見張った
「真愛……本当にいいのか? 今なら」
「私の答えは変わらない」
この想いのせいで生涯苦しむことになったとしても、その痛みと苦しみは温かな思い出が癒してくれる。
真愛はもう泣いてはいなかった。
「私は人間で、悪魔である玲音くんほど長くは生きられない。だからその分、どんな些細な思い出も取りこぼすことなく持っておきたいの」
なにか言いたげに口を開きかけた玲音に先んじて、真愛は言葉を続ける。
「それに、寿命が短い分、苦しみも短くて済むし……玲音くんと違って、何度も同じ痛みを感じることはないと思うから。……ね、大丈夫」
寿命に差のある異種族の中で生きることになった玲音とは違い、真愛は人間の中で人間として生きる。人生の中で誰かを看取ることになったとしても、それはほかの人間が経験する回数と大差ないと予想された。
「……真愛は強いな」
「時間の長さが違うだけだよ」
「真愛の中に好きだった人として残してもらえるなんて、俺は幸せだな」
真愛にとってみればとても悲しい表現だった。しかし言葉通り玲音は幸せな笑みを浮かべている。
(笑え!)
強く言い聞かせて、真愛は笑う。
「私も、玲音くんと出会えて、好きになれて……幸せだよ」
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