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第三章 学園に潜む危機
第七話 氷雪王子は微笑みを浮かべる
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生垣に隠れるようにして、真愛は正方形の並んだ石畳の庭を散策する。下校する生徒の姿がまばらに見えるが、どの生徒の意識も正門に向いていて、真愛を気にしている様子はない。少しずつ人気のない方へと足を進めていき、校舎の脇へと素早く入り込む。
校舎脇には正門付近のような舗装はなく、人が集まるような場所ではない。黒髪を揺らして周囲に目をやった後、スカートを押さえて木の根元に腰を下ろした。
「フィード、どう?」
小さめの紙袋から冠クマちゃんを手に取って外に出す。鞄に無理やり押し込むわけにもいかず、かといって抱えて歩くのにも抵抗があったので妥協案として紙袋が採用されたのだ。
短く刈られた芝の上に立ち腕を組んだフィードは瞳を閉じた。冠クマちゃんの瞳は黒いボタンでできていたはずなのだが、フィードが取り付いてからそれは本物の瞳に変化していた。
「……やはり、ここだな。数人の生徒に魔力の反応を感じる」
「そ、そんな……。私、この学校で動くぬいぐるみなんか見た事ないのに……」
「ぬいぐるみに限らない。最初に取りついた物が人形という可能性もあるからな。それに」
「そういえば! うちの学校の話じゃないんだけど、動く人体模型っていう七不思議があるって聞いた!」
「この学校の話をしてくれ! そして話を遮るな!」
柔らかい手でぺしぺしと真愛の膝を叩く。
真愛が口を閉じて静かになったのを確認して、咳払いを一つしたフィードは少し険しい顔をして続けた。
「別の世界に行くのに媒体を必要とするのは未成人だけだ。成人している悪魔なら人間界でも本体で行動できるし、見た目では分からないはずだ。もしかすると生徒や先生の中に悪魔が紛れ込んでいるかもしれない」
「えっ? 部外者じゃなくてってことっ?」
「そういうこともあり得る」
風が真愛の髪を右へ左へとせわしなく動かす。それを手でかき上げて耳にはさんだ。
頭の中を知った顔が次々に浮かんでは消える。誰も悪魔だなんて思えなかった。
「信じられない……」
呆然とそう言い放つ。
「僕も今、信じられないものを見てる気分だよ」
真愛でもフィードでもない第三者の声がいきなり降ってきた。
「誰っ?」
大きく肩を震わせた真愛は慌てて立ち上がり、つい先ほど整えた髪を振り乱して声の主を探す。
「あっ」
上を見ると緑の葉の隙間に愛華薔薇学園の制服が見えた。
頭上ばかりを気にしていて足元への意識が散漫になり、意図せず木の根に足を乗せてしまう。靴底が根の上を滑り、バランスを崩して体が傾く。
「わっ、わわっ!」
「おっと」
ガサガサと葉の擦れる音をさせながら、人が降ってきた。その人が真愛の腕を掴んで引き寄せ、間一髪で転ぶのを防ぐ。
ごく間近に人の体温を感じて、真愛はおそるおそる視線を上げる。目に飛び込んできたのは色素の薄い、銀色をした髪。
「ね、ねねねねねねねね根岸くんっ!」
「やぁ、真愛」
「どうしてここに?」
「人に囲まれてばかりでは疲れるからね、隠れて休憩していたんだよ。玲音と幼馴染の君なら聞いてるでしょ? 王子って結構ハードなんだよ」
他の三王子である優や芹香には、玲音と真愛が幼馴染である事は伝わっている。真愛としても友人の友人として優と仲良くしているので、何度も会話をしたことがあった。
真愛の足がしっかり地を踏んでいることを確認した優は、そっと真愛との距離を取る。
(あ……)
距離ができたことで、逆に今までの近距離を意識してしまい顔に熱が集まった。それを気にしないように努めて、優に笑いかける。
「あはは……そ、そうだったんだ。邪魔しちゃってごめんね。じゃあね」
人が居たからぬいぐるみのふりをすることにしたのだろう、冠クマちゃんは芝に転がっていた。それを拾い、この場を後にしようとする――が。
「待って」
一秒でも早くこの場所からいなくなりたい真愛の気持ちを見通しているのか、掴まれた肩にはかなりの力が入っているのを感じる。
「何かな、根岸くん? こんな風に特定の女の子と居るとこ見られたら誤解されちゃうよ」
「そのぬいぐるみ、しゃべってたよね?」
(ダメか……)
あえてからかうような軽い口調で言ったのだが、優はそれに取り合ってくれなかった。返事を待つ優の視線はまっすぐに真愛の腕の中の冠クマちゃんを捉えている。
「根岸くん、ぬいぐるみはしゃべらないよ。しゃべるぬいぐるみなんていたら怖いでしょ?」
「常識というものは時代が移れば覆るものさ」
しびれを切らしたのか、優はついに冠クマちゃんへ手を伸ばした。
「あっ、ちょっ……」
身をよじって冠クマちゃんを守ろうとした真愛だったが、肩を掴まれていて思うように動けず、あっという間に冠クマちゃんを取り上げられてしまう。
「返してよ!」
「……ただのぬいぐるみじゃないと思うんだけどな」
目を釣り上げて訴える真愛を無視して、優は冠クマちゃんをいじくりまわす。
(早く取り戻さないと)
酷使される物にはなりたくないとフィードは言っていた。恐らくぬいぐるみの今も、痛覚を含め感覚を持っているのだろう。
「ねぇ、普通のぬいぐるみでしょ? もういいよね?」
「真愛、このぬいぐるみはオス? それともメス?」
「えっ? た、多分オス……いや、そうじゃなくてさ」
現在の中身であるフィードは男だし、冠クマちゃん自体も冠とベストのデザインからして男の子を想定して作られているに違いない。だから優の問いに対する答えは「オス」で合っているはずだ。
思わず答えていたが、どうしてそんなことを……? という疑問が残る。
「そう……オスなんだね」
ふいに優の無表情が崩れた。酷薄さを感じる淡い笑みが顔を出す。その瞬間、優に向かって腕を伸ばしていた真愛の背中を冷たいものが駆け抜けていった。
――氷雪王子。優しさとクールさから付いたと聞いていたが、別の理由もあったのではないかという予感がしてならない。
「あ、あのー、根岸くん……?」
恐怖心を押し殺して、冠クマちゃんを取り戻そうと優の顔を覗き込む。彼の視線は冠クマちゃんを捉えていて、真愛の方へは一瞬たりとも寄越さない。
「ねぇ根岸くん、もう…………ちょ、ちょっとぉ! 何してんのっ?」
眼球が零れ落ちんばかりに目を見開いた真愛は大きく開けた口から素っ頓狂な声を上げた。
目に見えて縮む優の顔と冠クマちゃんの距離。優が何をしようとしているのか直感的に予想できたが、信じられない。
真愛の予想が正しければ、優は冠クマちゃんへキスをするつもりだ!
「ま、ま、ま」
待ちなさいと言いたいのだけれど上手く舌が回らない。止めあぐねているうちに、どんどん近付いていく。
五センチ、四センチ、三センチ……。ついに見ていられなくなり、真愛はきつく目を閉じた。
「ッ――――!」
声と音の間の悲鳴が上がり、ハッと目を開いた真愛は状況を理解しようと優と冠クマちゃんへと視線をやる。
「あ……」
冠クマちゃんもといフィードが優の手の中でもぞもぞと身をよじっていた。必死になるフィードを、冷ややかな笑みを口元に浮かべた優が満足そうに眺めている。
――バレた。
その光景を受けて、真愛は肩を落とし額に手をやった。
校舎脇には正門付近のような舗装はなく、人が集まるような場所ではない。黒髪を揺らして周囲に目をやった後、スカートを押さえて木の根元に腰を下ろした。
「フィード、どう?」
小さめの紙袋から冠クマちゃんを手に取って外に出す。鞄に無理やり押し込むわけにもいかず、かといって抱えて歩くのにも抵抗があったので妥協案として紙袋が採用されたのだ。
短く刈られた芝の上に立ち腕を組んだフィードは瞳を閉じた。冠クマちゃんの瞳は黒いボタンでできていたはずなのだが、フィードが取り付いてからそれは本物の瞳に変化していた。
「……やはり、ここだな。数人の生徒に魔力の反応を感じる」
「そ、そんな……。私、この学校で動くぬいぐるみなんか見た事ないのに……」
「ぬいぐるみに限らない。最初に取りついた物が人形という可能性もあるからな。それに」
「そういえば! うちの学校の話じゃないんだけど、動く人体模型っていう七不思議があるって聞いた!」
「この学校の話をしてくれ! そして話を遮るな!」
柔らかい手でぺしぺしと真愛の膝を叩く。
真愛が口を閉じて静かになったのを確認して、咳払いを一つしたフィードは少し険しい顔をして続けた。
「別の世界に行くのに媒体を必要とするのは未成人だけだ。成人している悪魔なら人間界でも本体で行動できるし、見た目では分からないはずだ。もしかすると生徒や先生の中に悪魔が紛れ込んでいるかもしれない」
「えっ? 部外者じゃなくてってことっ?」
「そういうこともあり得る」
風が真愛の髪を右へ左へとせわしなく動かす。それを手でかき上げて耳にはさんだ。
頭の中を知った顔が次々に浮かんでは消える。誰も悪魔だなんて思えなかった。
「信じられない……」
呆然とそう言い放つ。
「僕も今、信じられないものを見てる気分だよ」
真愛でもフィードでもない第三者の声がいきなり降ってきた。
「誰っ?」
大きく肩を震わせた真愛は慌てて立ち上がり、つい先ほど整えた髪を振り乱して声の主を探す。
「あっ」
上を見ると緑の葉の隙間に愛華薔薇学園の制服が見えた。
頭上ばかりを気にしていて足元への意識が散漫になり、意図せず木の根に足を乗せてしまう。靴底が根の上を滑り、バランスを崩して体が傾く。
「わっ、わわっ!」
「おっと」
ガサガサと葉の擦れる音をさせながら、人が降ってきた。その人が真愛の腕を掴んで引き寄せ、間一髪で転ぶのを防ぐ。
ごく間近に人の体温を感じて、真愛はおそるおそる視線を上げる。目に飛び込んできたのは色素の薄い、銀色をした髪。
「ね、ねねねねねねねね根岸くんっ!」
「やぁ、真愛」
「どうしてここに?」
「人に囲まれてばかりでは疲れるからね、隠れて休憩していたんだよ。玲音と幼馴染の君なら聞いてるでしょ? 王子って結構ハードなんだよ」
他の三王子である優や芹香には、玲音と真愛が幼馴染である事は伝わっている。真愛としても友人の友人として優と仲良くしているので、何度も会話をしたことがあった。
真愛の足がしっかり地を踏んでいることを確認した優は、そっと真愛との距離を取る。
(あ……)
距離ができたことで、逆に今までの近距離を意識してしまい顔に熱が集まった。それを気にしないように努めて、優に笑いかける。
「あはは……そ、そうだったんだ。邪魔しちゃってごめんね。じゃあね」
人が居たからぬいぐるみのふりをすることにしたのだろう、冠クマちゃんは芝に転がっていた。それを拾い、この場を後にしようとする――が。
「待って」
一秒でも早くこの場所からいなくなりたい真愛の気持ちを見通しているのか、掴まれた肩にはかなりの力が入っているのを感じる。
「何かな、根岸くん? こんな風に特定の女の子と居るとこ見られたら誤解されちゃうよ」
「そのぬいぐるみ、しゃべってたよね?」
(ダメか……)
あえてからかうような軽い口調で言ったのだが、優はそれに取り合ってくれなかった。返事を待つ優の視線はまっすぐに真愛の腕の中の冠クマちゃんを捉えている。
「根岸くん、ぬいぐるみはしゃべらないよ。しゃべるぬいぐるみなんていたら怖いでしょ?」
「常識というものは時代が移れば覆るものさ」
しびれを切らしたのか、優はついに冠クマちゃんへ手を伸ばした。
「あっ、ちょっ……」
身をよじって冠クマちゃんを守ろうとした真愛だったが、肩を掴まれていて思うように動けず、あっという間に冠クマちゃんを取り上げられてしまう。
「返してよ!」
「……ただのぬいぐるみじゃないと思うんだけどな」
目を釣り上げて訴える真愛を無視して、優は冠クマちゃんをいじくりまわす。
(早く取り戻さないと)
酷使される物にはなりたくないとフィードは言っていた。恐らくぬいぐるみの今も、痛覚を含め感覚を持っているのだろう。
「ねぇ、普通のぬいぐるみでしょ? もういいよね?」
「真愛、このぬいぐるみはオス? それともメス?」
「えっ? た、多分オス……いや、そうじゃなくてさ」
現在の中身であるフィードは男だし、冠クマちゃん自体も冠とベストのデザインからして男の子を想定して作られているに違いない。だから優の問いに対する答えは「オス」で合っているはずだ。
思わず答えていたが、どうしてそんなことを……? という疑問が残る。
「そう……オスなんだね」
ふいに優の無表情が崩れた。酷薄さを感じる淡い笑みが顔を出す。その瞬間、優に向かって腕を伸ばしていた真愛の背中を冷たいものが駆け抜けていった。
――氷雪王子。優しさとクールさから付いたと聞いていたが、別の理由もあったのではないかという予感がしてならない。
「あ、あのー、根岸くん……?」
恐怖心を押し殺して、冠クマちゃんを取り戻そうと優の顔を覗き込む。彼の視線は冠クマちゃんを捉えていて、真愛の方へは一瞬たりとも寄越さない。
「ねぇ根岸くん、もう…………ちょ、ちょっとぉ! 何してんのっ?」
眼球が零れ落ちんばかりに目を見開いた真愛は大きく開けた口から素っ頓狂な声を上げた。
目に見えて縮む優の顔と冠クマちゃんの距離。優が何をしようとしているのか直感的に予想できたが、信じられない。
真愛の予想が正しければ、優は冠クマちゃんへキスをするつもりだ!
「ま、ま、ま」
待ちなさいと言いたいのだけれど上手く舌が回らない。止めあぐねているうちに、どんどん近付いていく。
五センチ、四センチ、三センチ……。ついに見ていられなくなり、真愛はきつく目を閉じた。
「ッ――――!」
声と音の間の悲鳴が上がり、ハッと目を開いた真愛は状況を理解しようと優と冠クマちゃんへと視線をやる。
「あ……」
冠クマちゃんもといフィードが優の手の中でもぞもぞと身をよじっていた。必死になるフィードを、冷ややかな笑みを口元に浮かべた優が満足そうに眺めている。
――バレた。
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