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第3章 プリンセスかぐや

12お買い物へ

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  働かざる者食うべからずというおばあちゃんの強いプレッシャーを感じながら、家事を全力でこなす傍ら、私は相変わらず、毎日シャノンから魔法の指導を受け、仕事終わりに一人になると練習に明け暮れていた。

 それまで、つまずくことなく来たのだが、復元魔法に入ってからはスランプだった。これは、対象物を壊れる寸前まで時を戻すイメージの魔法だった。だが、これに関しては、壊れてから長く時間が経過してしまったものに関しては、今のところは全くお手上げだった。

「あ~!!こりゃダメだぁ・・」

今日も玄関横から持ってきた壊れた時計を目の前にして、うんざりしていた。全く直る気配すらない。

この時計を投げつけて壊してしまいたくなるような衝動を私の理性がやっとのことで押さえている・・。

「はぁ・・」

大きなため息とともに、ベッドに横たわった時だった。部屋のドアがノックされ、リアムが私を呼ぶ声が聞こえた。

「リサ・・家の仕事は全部終わったのか?」

「うん!終わってるよ」

「そんなら、一緒に買い物に行くか?」

「行く、行く、行く、行く・・」

「返事は一回でいい・・」

「は~い!」

急いでドアを開けると、そこに苦笑しているリアムが立っていた。

「言っておくが、荷物持ちだ・・いいな?」

「アイアイサー」

と言って右手を顔の横に持っていき、敬礼のマネをした。

「なんだ、それ・・おまえ、本当に面白いな」

「これって、なんか、相手に対する敬意を表すやり方みたいだけど・・」

「ホォ~ホントかぁ・・?」

リアムは疑わしそうな目で私を見た。

「ほ~んとだって・・信用ないんだなぁ・・」

ちょっとがっかりしてリアムの顔を見上げた私の頭に、手をポンポンと軽く置いてから、

「まあ、そんなもんだ・・出かけるぞ」

そう言って、先に歩き始めたリアムの背中に向かって叫んだ。

「何にも持っていかなくていいの?」

「おまえ、一文無しだろ?」

「あ・・それは、そうだけど・・でも、ちょっと待って!」

 そう言うと、私はレイラが持たせてくれたカバンの中にあった可愛いポシェットと帽子を大急ぎで取り出して、リアムを追いかけた。お城を追い出されたときに、レイラが持たせてくれたカバンの中には、生活必需品が詰められていて、寝間着や下着等、本当に助かった。あの短時間で、その中に、可愛いポシェットと帽子が入れてあったのには本当に感動した。レイラもお城で元気にしているのかな?会いたいな・・道を歩きながら、そんなことを考えていると、リアムが言った。

「お前の服って、目立つよな・・」

「あ、制服ね。私これしか持ってないから・・」

「まあ、俺は気にしないけどな・・」

「ははは・・・そういってくれると思った・・」

 そう言いながらも、街の往来をする人々の大抵は、気が付けば、物珍しそうに私の服を見ていた。と言っても、私の方は、この異世界に知り合いなど一人もいないという気楽さからか、不思議と、いくら見られようと全く気にならなかった。ここに来るまでは、そんな人の目が、いつも気になって気になって、外を歩くということ自体に恐怖感を持ち、家に引きこもることの方が多かったのだから・・。自分でもその変化に驚くばかりだ。住むところが変われば、変われるものなのだな・・と思う。

「え?」

街路樹の周囲に金色の妖精が見える・・思わず立ち止まって見とれていると、正面から来た人に危うくぶつかりそうになり、とっさに身をかわした。

「おい!ぼーっとしてると、邪魔になるぞ!」
「は~い」

リアムに注意されて、はっとなる。リアムは私の遥か前方を歩いていた。

そうだ・・普通の人には妖精たちの姿は見えないんだった・・。今まで気が付かなかっただけで、花壇にも、人の周りも家の屋根にも・・世の中こんなにいっぱい妖精がいたんだなと感動する。だけど、いちいち気にしていたら、こっちが危ないね。そう言い聞かせ、妖精への注意をできるだけしないように、景色の一部として見る努力をすることにした。

「今日は本当にいいお天気だね」

そう言いながら、リアム目指して走り出した。


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