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第1章 こんなはずでは・・
3婚約の事情
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占い師ダニエラが城を訪問してから数日後、アーサー国王、クリスティーナ女王、アルベルト皇太子殿下がそろって食堂で久しぶりの夕食をとっていた。
それというのも、アルベルトはシャノンの事故以来、1年以上たっても、心に傷を抱えたまま、なかなか心を開こうとはせず、表面上は平静を装っていてが、賑やかな場に行くことはできるだけ避けていたからだ。そんな、アルベルトのことを気にしていた両親は、3人での夕食ができるようにと、フランクとサントにセッティングを命じていた。
また、ダニエラの予言のことが国王の頭から離れなくなってもいた。
アーサー国王は、夕食がすんだ頃を見計らって、アルベルトに告げた。
「アルベルト、お前も18歳だ。セントクリストファー王国では皇太子は18歳になると婚約をすることになっているのは知っているな」
アルベルトは、やはりこのことかと少し胸が痛んだ。
「はい、ご安心ください、そのうちにご紹介いたします」
そんな当てがあろうはずもなかった。親友の最愛の人、そして誰にも言えない・・僕にとっても最愛のシャノンがいつまでもアルベルトの心の中で生きていた。
「そうか、もう相手はいるということか?」
国王は少し期待感を持って言った。
「はい、きっとお気に召すと思います」
アルベルトの心の中では、相手はもう誰でもよかった。単なる形式でも陰謀を含んだ政略であっても、婚約披露の儀が滞りなく済めばそれでいいと思っていた。
「それは全く知らなかった。お前も隅におけないな・・アハハ」
「いえ、決してそのようなことでは・・・」
両親に嘘をついていることに対する罪悪感が胸を痛ませた。
「2年前の事故で友だちが亡くなり、お前がひどく落ち込んでいたので、心配していた・・」
「そうでしたか・・ご心配をかけて申し訳ありませんでした。もう、ご心配にはおよびません」
「そうか。それは安心した。私はクリスティーナと18歳3か月で婚約をした。セントクリストファー国立高等学院で出会い、私たちは同時に一瞬で、恋に落ちた・・」
「まあ・・国王陛下ったら・・そんなこと・・」
女王は陛下をたしなめるように言ったが、アルベルトの方には満面の笑顔を向けて言った。
「アルベルトが元気になってくれて、本当に嬉しいわ。早くそのお嬢さんを紹介して下さいね」
クリスティ―ナ女王陛下はフローラ王国の国王の3番目の娘だった。結果的には二つの国を結び付けた政治的に意味の大きい結婚であったが、彼らは純粋に恋に落ちて結婚したこの運命の出会いをとても大切にしていた。そんないきさつもあって、両親はアルベルトにもできれば、愛のない結婚をしてほしくないという思いがあったのだった。
調子のいい返事をしたものの、全くその当てがなかったアルベルトであった。しかし、学校では、アルベルトに関心を寄せる女子も多く、その気になればいつでもなんとかなるとも思っていた。
そのわずか一か月後のことだった。
アルベルトは運命の出会いをする。
何気なく時空の旅をしていたアルベルトは息が止まるかと思った。リサとの出会いはそれほどの衝撃だった。生きたシャノンがそこにいる・・これまで秘めていた思いがあふれ出ていた。シャノンではない・・冷静になれ・・と脳は告げていたが、アルベルトの本能は、彼女しかいない・・と告げた。
気が付けばテレウィンドウを使ってリサをここに連れてきてしまったのだった。
とっさに、アルベルトはリサが婚約者であると紹介した。リサのことを話すと、両親もことのほか喜んでくれた。彼女はサルーン王国からの留学生で、親戚に身を置いていたのだが事情ができてそこを出ることになったので、城で住まわせると説明をすると、ありがたいことに城を上げて歓迎をしてくれたのだった。
私とアルベルトの婚約になにがしかの暗雲がかかっているなどとは夢にも思わず、私は異世界で、お城の素敵な生活を存分にエンジョイしていた。
「リサ、父上から婚約披露の儀の日程のことを打診された。アイデンのこと等、城がバタバタして、話が進んでいなかったのだが、正式に進めようと思う」
「婚約披露の儀ですか?」
「そうだ、近いうちに行われることになる。それを経て、結婚の儀となる。まだ、結婚の儀は先のことではあるが、王室のしきたりに従って執り行われる。面倒なことではあるが、これも国を治める立場のものとしては、国民のためにこうしたしきたりを守り、しめしていくことにも大きな意味があるのだと思う」
アルベルトは、さっきまで私に見せていた甘い顔とは全く別人の、皇太子殿下の顔となっていた。ここがホントにすごいなと思う。そして、やっぱり、カッコいい!!こんな素敵な人が旦那様になるなんて・・私はもう幸せの絶頂だった。
それというのも、アルベルトはシャノンの事故以来、1年以上たっても、心に傷を抱えたまま、なかなか心を開こうとはせず、表面上は平静を装っていてが、賑やかな場に行くことはできるだけ避けていたからだ。そんな、アルベルトのことを気にしていた両親は、3人での夕食ができるようにと、フランクとサントにセッティングを命じていた。
また、ダニエラの予言のことが国王の頭から離れなくなってもいた。
アーサー国王は、夕食がすんだ頃を見計らって、アルベルトに告げた。
「アルベルト、お前も18歳だ。セントクリストファー王国では皇太子は18歳になると婚約をすることになっているのは知っているな」
アルベルトは、やはりこのことかと少し胸が痛んだ。
「はい、ご安心ください、そのうちにご紹介いたします」
そんな当てがあろうはずもなかった。親友の最愛の人、そして誰にも言えない・・僕にとっても最愛のシャノンがいつまでもアルベルトの心の中で生きていた。
「そうか、もう相手はいるということか?」
国王は少し期待感を持って言った。
「はい、きっとお気に召すと思います」
アルベルトの心の中では、相手はもう誰でもよかった。単なる形式でも陰謀を含んだ政略であっても、婚約披露の儀が滞りなく済めばそれでいいと思っていた。
「それは全く知らなかった。お前も隅におけないな・・アハハ」
「いえ、決してそのようなことでは・・・」
両親に嘘をついていることに対する罪悪感が胸を痛ませた。
「2年前の事故で友だちが亡くなり、お前がひどく落ち込んでいたので、心配していた・・」
「そうでしたか・・ご心配をかけて申し訳ありませんでした。もう、ご心配にはおよびません」
「そうか。それは安心した。私はクリスティーナと18歳3か月で婚約をした。セントクリストファー国立高等学院で出会い、私たちは同時に一瞬で、恋に落ちた・・」
「まあ・・国王陛下ったら・・そんなこと・・」
女王は陛下をたしなめるように言ったが、アルベルトの方には満面の笑顔を向けて言った。
「アルベルトが元気になってくれて、本当に嬉しいわ。早くそのお嬢さんを紹介して下さいね」
クリスティ―ナ女王陛下はフローラ王国の国王の3番目の娘だった。結果的には二つの国を結び付けた政治的に意味の大きい結婚であったが、彼らは純粋に恋に落ちて結婚したこの運命の出会いをとても大切にしていた。そんないきさつもあって、両親はアルベルトにもできれば、愛のない結婚をしてほしくないという思いがあったのだった。
調子のいい返事をしたものの、全くその当てがなかったアルベルトであった。しかし、学校では、アルベルトに関心を寄せる女子も多く、その気になればいつでもなんとかなるとも思っていた。
そのわずか一か月後のことだった。
アルベルトは運命の出会いをする。
何気なく時空の旅をしていたアルベルトは息が止まるかと思った。リサとの出会いはそれほどの衝撃だった。生きたシャノンがそこにいる・・これまで秘めていた思いがあふれ出ていた。シャノンではない・・冷静になれ・・と脳は告げていたが、アルベルトの本能は、彼女しかいない・・と告げた。
気が付けばテレウィンドウを使ってリサをここに連れてきてしまったのだった。
とっさに、アルベルトはリサが婚約者であると紹介した。リサのことを話すと、両親もことのほか喜んでくれた。彼女はサルーン王国からの留学生で、親戚に身を置いていたのだが事情ができてそこを出ることになったので、城で住まわせると説明をすると、ありがたいことに城を上げて歓迎をしてくれたのだった。
私とアルベルトの婚約になにがしかの暗雲がかかっているなどとは夢にも思わず、私は異世界で、お城の素敵な生活を存分にエンジョイしていた。
「リサ、父上から婚約披露の儀の日程のことを打診された。アイデンのこと等、城がバタバタして、話が進んでいなかったのだが、正式に進めようと思う」
「婚約披露の儀ですか?」
「そうだ、近いうちに行われることになる。それを経て、結婚の儀となる。まだ、結婚の儀は先のことではあるが、王室のしきたりに従って執り行われる。面倒なことではあるが、これも国を治める立場のものとしては、国民のためにこうしたしきたりを守り、しめしていくことにも大きな意味があるのだと思う」
アルベルトは、さっきまで私に見せていた甘い顔とは全く別人の、皇太子殿下の顔となっていた。ここがホントにすごいなと思う。そして、やっぱり、カッコいい!!こんな素敵な人が旦那様になるなんて・・私はもう幸せの絶頂だった。
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