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第1章 こんなはずでは・・
2占い師ダニエラ
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ちょうど、3か月前のことだった。城門の前に一人の老婆らしき女性が現れた。ゆったりとした黒いローブを身にまとっていて、年の割には身体が大きく、豊かな髪を大きくまとめて結わえているので、かなりの存在感がある。太っているせいか顔の皺もかなり少ない。存在感のあるその女は、あろうことか、アーサー国王にお目通り願いたいと言っていた。本来なら、すぐに追い払われているはずなのだが、女は大胆不敵な笑みを浮かべながら言った。
「アーサー国王にお取次ぎを。ダニエラが来たと・・」
その目はギラリと鋭く、その目で睨まれた門番たちは、たちまち背中にゾクリとしたものを感じ、追い返すことができなくなった。とりあえず、門番は門前に女を待たせたまま、慌てて国王の側近の侍従タイロンのところへ駆けつけた。
「身体の大きな妙な女が国王にお目通りを願いたいと言って、門前におります」
「そんな、怪しい女は早く追い払ってしまえ」
タイロンはすぐさま、面倒は御免だというように言った。
門番は、あの不気味な女の目を見たせいか、引くに引けず、タイロンに食い下がった。
「はぁ、そう思っていたのですが、国王にダニエラが来たと伝えてほしいと申しまして・・」
「ダニエラ?どこかで聞いたような気もするが・・」
門番から聞いた名前がどこか頭の奥底の海馬のあたりでもやもやとしているようだった。考えているようなそぶりのタイロンの様子を窺うようにしながら、門番は言った。
「いかがいたしましょうか」
「記憶にある名前のような気がする・・。そうだ、もしかしたら・・」
タイロンは、アルベルト皇太子殿下が生まれるときに国王が連れてきた占い師のことを思いだした。独特な風貌をしたとにかく大きい女だった。
「ちょっと待て。国王に確かめてくる」
そう言うと、タイロンは国王にそのことを告げに急ぎ、王室へと向かった。
国王はダニエラという名を聞くと、一瞬、驚いたように見えたが、
「わかった。ダニエラに会おう」
そう言うと、タイロンに女を連れてくるよう目で合図した。
「アーサー国王、ご無沙汰しております。お元気そうで何よりでございます」
ダニエラは、ゆっくりとアーサー王に頭を下げて挨拶をした。
「ダニエラ・・ひさしぶりだな。そなたも、ますます元気そうだ」
「おかげさまで。アルベルト皇太子殿下が無事に産まれ、立派にご活躍のこと、嬉しく思っております」
ダニエラはにやりと口角を上げた。
「その時は世話になったな」
「それは国王の選択が間違っていなかったということでございます。私はただの占い師でございますから」
「では、要件をお伝えします。王家の継承について不吉な暗雲が立ち込めております」
「暗雲とは?」
「今は暗雲としか申し上げられません・・しかし、暗雲を晴らす新しい力も現れましょう。くれぐれも見紛うことがないようなさいませ」
「新しい力・・それはどういうことか」
「それは、国王ご自身のご判断でございます。私はこの国の繁栄を心から願っております」
「分かった。それでは、褒美を・・」
タイロンはダニエラにずっしりと重そうな袋を手渡していた。ダニエラは当然のように袋を受け取り、カバンに入れた。
「では、セントクリストファー王国の繁栄をお祈りします」
そう言うと、ダニエラは国王の前で一礼し、ゆっくりと大きな体をゆすりながら、城内から姿を消した。
「タイロン、ダニエラの予言は信頼ができると思う。わざわざ彼女がここに足を運んだことには意味がある。私はダニエラの予言を信じる」
「は!」
「もちろん、このことは口外無用だ。絶対に」
「は!」
タイロンはこれからアルベルト皇太子の周りで、難儀なことが起こらねばよいが・・と心から願った。
「アーサー国王にお取次ぎを。ダニエラが来たと・・」
その目はギラリと鋭く、その目で睨まれた門番たちは、たちまち背中にゾクリとしたものを感じ、追い返すことができなくなった。とりあえず、門番は門前に女を待たせたまま、慌てて国王の側近の侍従タイロンのところへ駆けつけた。
「身体の大きな妙な女が国王にお目通りを願いたいと言って、門前におります」
「そんな、怪しい女は早く追い払ってしまえ」
タイロンはすぐさま、面倒は御免だというように言った。
門番は、あの不気味な女の目を見たせいか、引くに引けず、タイロンに食い下がった。
「はぁ、そう思っていたのですが、国王にダニエラが来たと伝えてほしいと申しまして・・」
「ダニエラ?どこかで聞いたような気もするが・・」
門番から聞いた名前がどこか頭の奥底の海馬のあたりでもやもやとしているようだった。考えているようなそぶりのタイロンの様子を窺うようにしながら、門番は言った。
「いかがいたしましょうか」
「記憶にある名前のような気がする・・。そうだ、もしかしたら・・」
タイロンは、アルベルト皇太子殿下が生まれるときに国王が連れてきた占い師のことを思いだした。独特な風貌をしたとにかく大きい女だった。
「ちょっと待て。国王に確かめてくる」
そう言うと、タイロンは国王にそのことを告げに急ぎ、王室へと向かった。
国王はダニエラという名を聞くと、一瞬、驚いたように見えたが、
「わかった。ダニエラに会おう」
そう言うと、タイロンに女を連れてくるよう目で合図した。
「アーサー国王、ご無沙汰しております。お元気そうで何よりでございます」
ダニエラは、ゆっくりとアーサー王に頭を下げて挨拶をした。
「ダニエラ・・ひさしぶりだな。そなたも、ますます元気そうだ」
「おかげさまで。アルベルト皇太子殿下が無事に産まれ、立派にご活躍のこと、嬉しく思っております」
ダニエラはにやりと口角を上げた。
「その時は世話になったな」
「それは国王の選択が間違っていなかったということでございます。私はただの占い師でございますから」
「では、要件をお伝えします。王家の継承について不吉な暗雲が立ち込めております」
「暗雲とは?」
「今は暗雲としか申し上げられません・・しかし、暗雲を晴らす新しい力も現れましょう。くれぐれも見紛うことがないようなさいませ」
「新しい力・・それはどういうことか」
「それは、国王ご自身のご判断でございます。私はこの国の繁栄を心から願っております」
「分かった。それでは、褒美を・・」
タイロンはダニエラにずっしりと重そうな袋を手渡していた。ダニエラは当然のように袋を受け取り、カバンに入れた。
「では、セントクリストファー王国の繁栄をお祈りします」
そう言うと、ダニエラは国王の前で一礼し、ゆっくりと大きな体をゆすりながら、城内から姿を消した。
「タイロン、ダニエラの予言は信頼ができると思う。わざわざ彼女がここに足を運んだことには意味がある。私はダニエラの予言を信じる」
「は!」
「もちろん、このことは口外無用だ。絶対に」
「は!」
タイロンはこれからアルベルト皇太子の周りで、難儀なことが起こらねばよいが・・と心から願った。
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