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娯楽を観る

  ベースボールの野球

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「あのさぁ」
「はい」
「野球あんじゃん」
「やきゅう?ベースボールの野球ですか?」
「そうそう・・・・・ベースボール以外の野球あんのかよ」
 ハハハハハッと笑い、
「野球拳とか」
と吉田が応える。
「なんだそれ、それにベースボールの野球って、英語で言っただけだからな」
「まぁそうなんですけど」

「で、そのベースボールの野球なんだけど」
「はい」
「元はゲームと同じで、子供の遊びじゃん」
「ああっはい、そうですね」
 佐々木が何を言いたいのか分かり、吉田は頷く。

「俺らぐらいの歳だと、もう子供が集まって遊びでやるみたいなのないけどさぁ」
「そうですね、少年野球とか部活とかしか無いですよね」
「そうそう・・・・・ところで少年野球って差別用語かな?少年少女野球って言わないと駄目なのかなぁ?」
「ハハハハッ、じゃあリトルリーグって言ってください」

「まぁとにかく、例えばサザエさんとかドラえもんみたいなアニメだと、子供がさぁ」
「はい」
「娯楽で、野球やってんじゃん」
「そうですね」
「つまり元々子供の娯楽を、大人の上手い人がやるのを観るのがプロ野球じゃん」
「まぁまぁ極論を言えばね」


「それで思うんだけどさぁ」
「はい」
「プロ野球が出来たのが、明治か大正か、戦前か分かんないんだけどさぁ」
「確か・・・・・・戦後すぐじゃなかったでしたっけ、それまでは大学野球が盛んでみたいな」
「まぁよく分かんないけど」
「はい」
「プロ野球が出来た時にね」
「はい」
「俺がその時代の人で、知り合いがさぁ、なんか今度、プロ野球っているのが出来るらしいよ、って教えてもらってさぁ」
「はいはい」
「それで俺が、何それ?って聞く訳じゃん」
「はい」
「そしたら相手がさぁ、いやなんでも、野球の上手い人が集まって野球をするのを、金を払って球場に観にいくらしいよ、って言われる訳じゃん」
「そうですね」
「そしたら俺は思う訳じゃん、野球ってあの、子供の遊びだろ」
「ハハハハハッ、そうですね」
「子供の遊びを、金払って観るの?馬鹿じゃないの」
「ハハハハハッまぁそうですけど」

「つまり俺が言いたいのは」
「はい」
「今のeスポーツを、俺たちは特殊なもののように感じるけど」
「はいはい」
「それって野球も同じだよねって話」
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