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二つのドラゴンボール

 続けてた理由

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「で、五年くらい経ってね」
「はい」
「鳥山先生が、そのアシスタントを呼ぶのね」
「はいはい」
「君もウチ長いよね、五年くらいいるよね、そろそろ独り立ちして自分の漫画描いたら、自分の描きたい漫画描いたらって言うのね」
「はい」
「そしたら、そのアシスタントが、答えるわけじゃん」
 佐々木が握り拳を作る。
「何言ってるんですか、先生と」
「はい、先生と」
「俺の描きたい漫画はドラゴンボールなんです」
 ハハハハハッと吉田が笑う。

「俺は世界一の漫画、イヤ宇宙一の漫画、ドラゴンボールを作るお手伝いをさせて頂いていると」
「いると、させて頂いていると」
「これが僕の夢なんです、理想なんですと」
 手を振りながら佐々木が続ける。
「先生、僕から夢を奪わないでください」
「ハハハハハッ何言ってんだ、この人」
「とにかく、そうアシスタントが言うわけじゃん」
「はい」
 笑いながら吉田が頷く。

「しかしさぁ、思うんだけどさぁ」
「はい」
「鳥山先生は辞めたいわけじゃん」
「はい、そうですね」
「自分が辞めたいモノをさぁ、宇宙一の漫画だと言われる鳥山先生の気持ち」
 ハハハハハッと吉田は大爆笑する。

「でも、それが鳥山先生が続けてた理由なんじゃないですかね」
「んん?」
「だから目の前で宇宙一の漫画ですって言われたから、じゃぁ頑張るかって描いてたんじゃないですかね」
「そうか・・・・・そうなのかね」
 佐々木は首を傾げた。
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