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自分たちのモノ感を売る

 一話、五百万円として

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「あのね」
「はいはい」
「仮にの話」
「仮にの話」
「ウソんこの話」
「ウソんこの話ね」

「三十分のアニメを一話作るのに、三百万かかるとしてね」
「三百万じゃ出来んでしょう」
「まぁまぁ仮にの話だから」
「はぁ、まぁ、はぁ」
「じゃぁ五百万円にしよう」
「五百万でも・・・・・」
「だからウソんこの話だから」
「分かりました、ウソんこの話で」
「ウソんこの話でねぇ」

「その五百万で作ったアニメを、ネットで流して」
「はいはい」
「で、それはただで誰でも見れるのね」
「はい」
 ポリポリと吉田は首を掻く。
「で一話を見て、続きが見たと思った人は、お金を払って下さいってなるのね」
「はいはい」
「それで五百万集まったらもう一話作ります、で集まらなかったら、そのアニメはそこで終わり、どんな中途半端でも、野球モノで九回の裏二死満塁、主人公のピッチャーが投げたところでも、集まらなかったらそこで終わり」
「そこで?」
「そこで」
 ハハハハッと吉田は笑う。
「まぁそこまで来たら、その後の展開二つに一つですけどね」
「まぁね」
 佐々木が頷く。

「まぁとにかく、お金が集まらなかったら終わり、お金が集まれば続く」
「それは・・・はい」
「続かなかったら、続きは見れないんだから、見たかったらお金を出す、これどうよ?」
「どうよって、無理ですよ」

「まず第一に、五百万でアニメ一話は作れないと思います」
「それはいいから」
「それはいいとして」
 ポリポリと吉田は頭を掻く。
「最初の一話の五百万、どうするんですか?」
「そ、それは・・・・・」
「最初の一話の五百万はどうするんですか?」
 強い口調で吉田は繰り返す。
「みんなでバイトして・・・・」
「大学のサークルじゃるまいし、あんたアニメ会社なんだと思ってるんだよ」
「まぁ、そうか」

「で次にね」
 ポリポリと吉田は腕を掻く。
「その先輩の方法だと、一作品だけって訳にいかないでしょう」
 うむむっ、と佐々木が唸る。
「二十作品くらい作って、一作品いくかどうかでしょう」
 うん、うん、うんうん、と佐々木は唸る。
「一本五百万で二十作品って、幾らですか?」
「・・・・・・一億」
 ハハハハハッと吉田は笑う。
「俺がアニメ会社の社長で一億あったら、人気漫画で確実に売れるのを一本、二十話作りますよ」
「そうか・・・・ダメか」
「ダメですね」
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