上 下
1 / 70
自分たちのモノ感を売る

 最も安い人気漫画の作り方

しおりを挟む
「あのさぁ・・・・・」
「はい」
「大した話じゃ無いんだけどさぁ」
 その佐々木史朗の言葉に、吉田郷太はクククッと笑い、
「先輩が大した話なんか、した事ないじゃないですか」
と応える。
 うるせい、と佐々木は口を尖らせた。

「それで?」
「昔さぁ、十年か十五年前・・・・」
 首を傾け、佐々木が少し上を向く。
「まだぶらぶらしていた時」
「ぶらぶらしてましたよねぇ・・・」
「いいだろ、今はしてないんだから」
「先輩」
 グイと吉田は顔を突き出す。
「働くのが普通」
「ああ、そうか」
 はははっと佐々木が笑う。

「それで?」
「十年か十五年前にさぁ、家に居て」
「はいはい」
「その・・・・テレビ観てたのね、暇だから」
「はい」
「そしたらアニメやっててね」
「はぁ」
「あっ、アニメやってる、って思って、観てたのね」
「珍しいですね」
 ほんの少し驚いた顔を吉田は向ける。
「アニメとか観ないじゃないですか」
「いや・・・・」
 ニヤリと佐々木は笑う。
「パチンコ行く金が無かったから」
「はははっ、最低だ」


「でね」
「はい」
「パチンコ行く金が無いから、暇でアニメ観てたのね」
「はいはい、人間の屑がアニメ観てたんですね」
「そうそう、人間の屑が・・・うるさいわ」
 吉田が振ると、佐々木が一応のノリツッコミを返す。

「で、そのアニメが男の子が二人で漫画家を目指す、っていうアニメだったのね」
「ああ、はいはい、ありましたねそういうの、て言うかあれもそんなに昔になりますか」
 耳を掻きながら、
「時が経つのは早いですなぁ」
と吉田は呟く。
「それでさぁ・・・・・・話知っている?」
「いや」
 吉田は眉を寄せた。
「絵は浮かぶんですけどねぇ・・・・ちゃんと読んだことないし、アニメも観たことないですねぇ」
「そうか」


「それでね」
「はい」
「そのアニメ見てたんだけど、それがその・・・まぁ・・・俺が観た回が一話目じゃなくてさぁ」
「はい」
「十話か二十話か三十話か分かんないけど、もうだいぶ進んでて、主人公はプロの漫画家になってたのね」
「はいはいはい」

「でね」
 佐々木は首を揉む。
「その漫画雑誌で一番の漫画家を目指そう・・・・みたいな話なのね」
「はい」
「その漫画雑誌が」
「はい」
「週刊少年ナニガシがね」
「何某がね」
 はははっ、と吉田は笑う。
「雑誌にアンケートハガキが付いてて」
 佐々木が指で四角を作る。
「それを読者が送って」
 スッと佐々木は手を伸ばす。
「一位からドベまで決めて」
 両手を広げる。
「一位が巻頭」
 右手を振る。
「ドベが巻末」
 左手を振る。
「ドベが続くと打ち切り」
 左手を振り続ける。
「みたいなシステムなのね」
「はい、そうですね、知ってます」
 少し笑いながら吉田が頷く。

「それでさぁ」
「はい」
「そのアニメで言ってたんだけど」
 今度は右手を振る。
「一位が大体二百票らしいのね」
「そうすか・・・・・えっ?」
 一瞬、流しそうになったが、吉田は軽く驚く。
「えっ?二百票、えっ?えっ?本当ですか?少なくないですか?」
「本当本当」
 佐々木がカクカクと首を振る。
「俺もそのシーンで、えっ?二百票って驚いたのね」
「えええっ、信じられん」


「でね」
「はい」
「漫画雑誌ってさぁ、大体二百円くらいじゃ」
「そうですね」
「買った事ないけど」
「ないんかい」
 軽くツッコミを入れる。
「でね」
「はい」
「一票二百円て事は・・・・」
「えっ?」
「二百円掛ける二百票でさぁ」
「先輩、先輩、何言ってるんですか」
「週四万円で、人気漫画が作れるって事だよね」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

色々な人のくすぐり体験談(小説化)

かふぇいん
大衆娯楽
色々な人から聞いたくすぐり体験談を元にした小説を書いていきます。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

6年生になっても

ryo
大衆娯楽
おもらしが治らない女の子が集団生活に苦戦するお話です。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る

マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。 思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。 だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。 「ああ、抱きたい・・・」

美しいお母さんだ…担任の教師が家庭訪問に来て私を見つめる…手を握られたその後に

マッキーの世界
大衆娯楽
小学校2年生になる息子の担任の教師が家庭訪問にくることになった。 「はい、では16日の午後13時ですね。了解しました」 電話を切った後、ドキドキする気持ちを静めるために、私は計算した。 息子の担任の教師は、俳優の吉○亮に激似。 そんな教師が

処理中です...