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  能登攻め

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 謙信は能登に攻め込み、畠山家の居城、七尾城を取り囲んだ。
 しかしそこで、北条氏政が上野に向かっていると報告を受ける。

 まったく・・・・と呟き、謙信は河田長親の浪人隊に後を任せ、越後に戻る。

 今ここでもし、武田勝頼が北信濃を攻めれば、万事休すだ。
 だが勝頼は動かない。
 海津城の高坂昌信は、不気味な沈黙を続けている。

 謙信が上野に兵を出そうとすると、氏政は小田原に戻る。
 それを見定めると、謙信は能登に向かう。
「北条が動いても、報告せぬでよい」
 留守を任せている直江景綱にそう命じる。
 勝頼が動かない以上、氏政も本気で攻めて来ない。ならば能登に集中すべきだ。


 再び能登に向かう。
 七尾城は堅城だし、織田の後詰めが来ると信じ、城兵の士気も高い。
 その上、謙信は城攻めが苦手。
 厄介なことだ。

 どうしたものかと、頭を抱えていると、遊佐盛光が、
「城内に我らと通じている者がおります」
 と告げる。
 よし、と頷き、隙を突いて内から城門を開けさせる。
 門が開けばこちらのもの。一挙に攻め込み城は落ちた。

 よかった、と謙信は安堵する。
 何故なら越前にいる織田の家老、柴田勝家が後詰めの為に兵を集めているという報告が入っていた。
 七尾城が落ちれば勝家も諦めるだろう。謙信はそう思っていた。

 しかしここで妙なことが起こる。
 勝家がそのまま加賀に進軍しているというのだ。
 どういう事だと、謙信は首を捻る。
 城が落ちたのだから、後詰めの意味はない。
 そもそもが畠山家のお家騒動であり、上杉と織田は直接関係ないのだ。
 それとも信長は、本気で謙信と事を構える気なのだろうか?
 
 むむむっ、と悩むが捨て置けない。
 幸いにも力攻めをしているないので、それほどの被害も出ていない。

 仕方ない。
「加賀に向かう」
 謙信は河田長親にそう命じる。
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