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帰参
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「ようわしの前に、顔を出せたな」
輝虎が言うと、ふん、と鼻を鳴らし胸を反って、
「拙者、我が身に恥じること、何一つございませぬ」
と北条高広が告げた。
人質の件、どうしても息子氏政が同意しないので、代わりに自分の末子を差し出すと北条氏康は言って来た。
そして代わりに、手土産として北条に寝返った、北条高広を差し出したのである。
裏切り者の高広を好きにして良いので、末子で勘弁してくれと言うことだ。
それで北条高広が越後に戻って来たのである。
「拙者は何度も城代のお役目、交代して頂きたいとお願い致しました」
高広はいつもの大声で言う。
「もし聞きいただけぬのであれば、小田原に降るとも申しあげました」
「だからといって本当に降るやつがあるか」
輝虎も怒鳴り返す。
「それは殿が嘘を吐いたからにございます」
「わしがいつ嘘を吐いた」
「そのうち代わりの者を送ると」
「だから代わりの者を探しておったのじゃ」
「いっこうに誰も来ぬではありませぬか」
「誰も行きたがらなかったのだ」
「拙者だって、行くありませなんだ」
顔を真っ赤にして高広が叫ぶ。
「なぜそうやって拙者にばかり、意地悪なされる」
輝虎は呆れる。
「五十過ぎた男が、意地悪とか言うな」
「いくつになろうと、意地悪は意地悪でござる」
「まぁまぁ、お二人とも」
高広の後ろに控えていた山吉豊守が、前に進み出て宥めに入る。
「こうして帰参されたのですから・・・・・」
「赦すと言うてはおらぬ」
輝虎は豊守の言葉を遮った。
えっ?と豊守は戸惑う。
「此奴が勝手に、帰って来ただけじゃ」
「なんという言い様・・・・」
輝虎の言葉に、高広が吠える。
「またそうやって、意地悪なさる」
「意地悪ではない」
輝虎は言い返す。
「お前を赦せば、相模守の息子ではなく、弟を受け入れねばならなくなる」
半分は事実だが、半分は意地悪だ。
北条と結ぶにしろ結ばないにしろ、高広は赦さねばならぬ。
「とりあえず、三郎どのに会ってみてはいかがでしょうか?」
豊守の言葉に、輝虎は眉を寄せた。
「なぜ会わねばならぬ?」
「会えば殿のお気持ちも、変わるやもしれませぬ」
何を言っておるのじゃ、こいつ?
輝虎は首を捻る。
氏康の末子三郎は、氏康の末子だから価値がないのだ。
三郎がどれほど有能でも、関係ない。
「追い返す奴に会ってどうする?」
「まぁ、とりあえず・・・・・・」
豊守が微妙な笑みを浮かべる。
その横で、高広が不敵に微笑む。
輝虎が言うと、ふん、と鼻を鳴らし胸を反って、
「拙者、我が身に恥じること、何一つございませぬ」
と北条高広が告げた。
人質の件、どうしても息子氏政が同意しないので、代わりに自分の末子を差し出すと北条氏康は言って来た。
そして代わりに、手土産として北条に寝返った、北条高広を差し出したのである。
裏切り者の高広を好きにして良いので、末子で勘弁してくれと言うことだ。
それで北条高広が越後に戻って来たのである。
「拙者は何度も城代のお役目、交代して頂きたいとお願い致しました」
高広はいつもの大声で言う。
「もし聞きいただけぬのであれば、小田原に降るとも申しあげました」
「だからといって本当に降るやつがあるか」
輝虎も怒鳴り返す。
「それは殿が嘘を吐いたからにございます」
「わしがいつ嘘を吐いた」
「そのうち代わりの者を送ると」
「だから代わりの者を探しておったのじゃ」
「いっこうに誰も来ぬではありませぬか」
「誰も行きたがらなかったのだ」
「拙者だって、行くありませなんだ」
顔を真っ赤にして高広が叫ぶ。
「なぜそうやって拙者にばかり、意地悪なされる」
輝虎は呆れる。
「五十過ぎた男が、意地悪とか言うな」
「いくつになろうと、意地悪は意地悪でござる」
「まぁまぁ、お二人とも」
高広の後ろに控えていた山吉豊守が、前に進み出て宥めに入る。
「こうして帰参されたのですから・・・・・」
「赦すと言うてはおらぬ」
輝虎は豊守の言葉を遮った。
えっ?と豊守は戸惑う。
「此奴が勝手に、帰って来ただけじゃ」
「なんという言い様・・・・」
輝虎の言葉に、高広が吠える。
「またそうやって、意地悪なさる」
「意地悪ではない」
輝虎は言い返す。
「お前を赦せば、相模守の息子ではなく、弟を受け入れねばならなくなる」
半分は事実だが、半分は意地悪だ。
北条と結ぶにしろ結ばないにしろ、高広は赦さねばならぬ。
「とりあえず、三郎どのに会ってみてはいかがでしょうか?」
豊守の言葉に、輝虎は眉を寄せた。
「なぜ会わねばならぬ?」
「会えば殿のお気持ちも、変わるやもしれませぬ」
何を言っておるのじゃ、こいつ?
輝虎は首を捻る。
氏康の末子三郎は、氏康の末子だから価値がないのだ。
三郎がどれほど有能でも、関係ない。
「追い返す奴に会ってどうする?」
「まぁ、とりあえず・・・・・・」
豊守が微妙な笑みを浮かべる。
その横で、高広が不敵に微笑む。
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